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『気候カジノ』 [仕事の小ネタ]

気候カジノ

気候カジノ

  • 作者: ウィリアム・ノードハウス
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2015/03/20
  • メディア: 単行本
内容紹介
さらなる経済成長と地球温暖化対策は両立できる―――。
地球温暖化が今日大きな注目を集めていることは間違いない。と同時に、それが果たして真実であり重要な問題なのか、人間社会にとってどのような意味をもっているのかについて、人々の意見が分かれていることも、やはり事実だ。
対立する主張のはざまで、温暖化問題に関心を寄せる人々は、一体どのような結論を下せばよいのか。仮に「地球温暖化は真実である」が答えだとしたら、それはどのくらい重大なことなのか。下がることのない失業率、膨らみ続ける公的債務、数々の紛争、核拡散など、世界が抱えるあらゆる問題の中で、地球温暖化は私たちにとってどのくらい重要な地位を占めるのだろうか。 一言で言えば、地球温暖化は人類と自然界にとって大きな脅威だ。本書では、「私たちは気候カジノに足を踏み入れつつある」という比喩を使う。この表現を通じて著者が主張するのは、経済成長が気候システムと地球システムに意図せぬ危険な変化をもたらしているということ、そして経済成長と温暖化問題の対策は両立できるということだ。 私たちは気候のサイコロを投げている。その結果は数々の「サプライズ」を引き起こし、場合によっては深刻な事態を招く恐れもある。だが、気候カジノには足を踏み入れたばかりだ。今なら向きを変え、そこから出ることができる。
本書は、米国経済学の権威、ウィリアム・ノードハウス・イェール大学教授が、地球温暖化問題を取り巻く問題、そして今日までの軌道を修正するために必要な取り組みを、経済学のことなど何も知らない人でも理解できるようにわかりやすく、ロジカルに解説した。

前回、海外で行われる会議で司会を務めるにあたってどうやって仕切るかを考え、『ビジネスミーティングの英語表現』というような普段なら多分読んだりしないであろう本に手を出した話はご紹介したが、実はこの会議に出るための行きのフライトの機中で藁をもすがる思いで急いで読んだ本がもう1冊ある。それが本日ご紹介の1冊だ。

会議を仕切るための英語力というのと車輪の両輪になるのはその中身の理解であるが、僕自身はその会議で話し合われるテーマの1つである「気候変動」についてはまったくの門外漢であるので、会議で登壇者が話す英語が理解できたとしても、話される中身がちゃんとわからなくちゃ司会もできないし、質疑応答になって会場から挙がった質問やコメントへの回答を、適当なパネリストに割り振るのも難しい。そこで、付け焼刃ででも多少予備知識を得ておこうと考えて、最近出たばかりのこんな分厚い本を土壇場になって購入し、機内持ち込みの荷物の中に紛れ込ませたのだ。

飛ばし読みでもいい部分は相当あると思うが、地球温暖化の何が問題か、どこにその影響が表れるかをまとめて考えてみるにはいい本だと思う。表紙のオビにデカデカと「さらなる経済成長と地球温暖化の防止は両立できる」とある。結局これが著者の最も言いたかったメッセージなのだと思うが、それはこれから2030年までの15年間を規定する「持続可能な開発」の枠組みの中での、成長と環境、そして社会の両立にもつながる、重要なメッセージだと思う。

日本はまだだけど、ドイツでは2002年には既に「持続可能な開発に向けた国家戦略」を打ち出していて、国内政策と国際協力を含めた対外政策の一貫した政策を進めている。その中で、特に国内政策においては、エネルギー政策と環境政策と経済成長政策は鼎立可能という立場での政策体系を整理して推進しているのである。

通読してそれでおしまいというタイプの本でもなさそうで、座右に置いて必要な時に必要な章を読み直してみるというのが合っているかもしれない。僕も今回は限られた時間の中で、今必要と思われる部分だけを拾いながら読んだ。

で、会議でそれが役に立ったかと言うと、僕は気候変動国際パネル(IPCC)の第5次評価報告書の第2作業部会の報告書を一部読んだことがあり、特に今回の会議ではその第12章の話が中心だったけどそのまさに12章だけはちゃんと読んでいたので、それだけでも十分な予備知識にはなっていた気がする。そもそも今回の会議ではこの第12章の執筆に関わられた方々が登壇されている。勿論、IPCCの報告書は科学者が主に書いているもので、経済学者の視点から書かれた本書とは視点がそもそも違う。だから、会議では同じく向こう15年間を視野に入れて「持続可能な開発」の実現に向けて何をどうすべきという議論はしていたものの、このIPCC報告書第12章に関わった学者の視点からは、ローカルレベルの気候変動適応策の話が中心となり、多分本書の著者が成長との両立可能と言っている場合の、気候変動緩和策の方の話が必ずしも十分光が当たっていなかったような気もした。


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