『時をかけるゆとり』 [朝井リョウ]
内容紹介
戦後最年少直木賞作家の初エッセイ集
就活生の群像『何者』で戦後最年少の直木賞受賞者となった著者。この初エッセイ集では、天与の観察眼を駆使し、上京の日々、バイト、夏休み、就活そして社会人生活について綴る。「ゆとり世代」が「ゆとり世代」を見た、切なさとおかしみが炸裂する23編。『学生時代にやらなくてもいい20のこと』改題。”圧倒的に無意味な読書体験”があなたを待っている!?
のっけから別件になってしまうが、このブログ更新記事を書いている数時間前、ニッポン放送『オールナイトニッポン・ゼロ』(午前3時~5時)で、朝井リョウ君が同じく小説家の加藤千恵さんとともにパーソナリティを務める第1回の放送がされていたらしい。事前に気が付いていれば無理してでも起きて聴いていたのだが、なにしろ昨夜は22時過ぎまで残業して、帰宅したのが午前零時を回っていたし、今週はずっと睡眠不足が続いたので、3時まではとても持たなかった。朝、スマホを見ていたらやたら検索ワードで「朝井リョウ」が上位に来ていたので、何だろうと思って調べたところが、オールナイトニッポンのことに気づいたという次第。なんだか評判が良かったらしい。パーソナリティ2人のトークが予想以上に良かったということで。来週――は海外出張中で聴けないけど、再来週からは聴きたいと思う。
さて本題。その朝井リョウ君の最新刊『時をかけるゆとり』、図書館の順番待ちがようやく終わり、借りて読むことができた。朝井君の初エッセイ集で、以前彼が単行本で出した『学生時代にやらなくてもいい20のこと』を改題して文庫化したものである。元々この『学生時代に~』も発刊当初は面白いと評判だった本なので、文庫化されたのを読むのは楽しみだった。
作家の書いたエッセイというのははずれも結構多いと思うので、あまり積極的には読んでこなかったのだが、さすがは単行本が面白いと評価された通りで、実際に読んでみてこれは確かに面白いと思った。彼の作品を読むといつも感心するのは、その豊かな表現力だ。同じものや出来事を見ていても、それをひと言で言ってしまったら身もふたもないくらいにそっけない単語にしかならないものが、彼の手にかかると様々な形容句がくっつき、いろいろな思いがこめられた事物として踊りはじめる。原稿用紙でエッセイ用にあてがわれた文字数を確保するのに文章を膨らませる一種のテクニックなのかもしれないが、これだけ豊かな表現ができる作家は少ない。作家中の作家だと思う。小説だけじゃなく、エッセイでもその良さが存分に出ている。
また、本書を読んで嬉しかったのは、彼が作家デビューしてから自分の母校を訪ねるエピソードが出てくる。この頃の校舎は僕が高校生活を送っていた頃とはまったく別の姿に今はなっているので、朝井君が構内のどこをどう歩いたのかは正確にはわからないが、そこで描かれた母校の在校生の様子をみると、なんだかいとおしさを感じた。それに、高校生を描いた彼の作品では、母校の校舎を連想させるシーンがよく出て来るし。
本書には、朝井君が小学生時代、あの町でどのように過ごしていたのかも描かれている。その頃から既に人に読ませることを想定して作文を書いて国語の先生から注目されていた話とかは我が家の愚息にそんなに簡単には真似させることはできないだろうが、せめて小学生時代から毎日1ページ分の日記をつけるという行為ぐらいは、高校生になった今からでも遅くはないので、うちの上の2人にはなんとか励行してくれないかと思う。
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