『世界一の馬をつくる』 [読書日記]
28日(土)夜、ドバイで行われた競馬の祭典ドバイWCでは、ドバイシーマクラシックに昨年の日本ダービー優勝馬ワンアンドオンリーも出走しましたが、残念ながら最後の叩き合いで敗れ、3着に終わったと報じられている。残念。
本日ご紹介する1冊は、まさにこのワンアンドオンリーのオーナー、前田幸治さんの著書である。
内容(「BOOK」データベースより)
2013年キズナ、2014年ワンアンドオンリーでダービー連覇!素人がゼロから始めた牧場が、なぜこれほど強いのか。稀代のホースマンが初めて明かす、馬づくりと人生論のすべて!
一昨年、キズナがダービー優勝した時、武豊騎手も含めたチームの絆の勝利だとかなり騒がれたのを覚えておられる方も多いと思う。ちょうどこの週末は皐月賞トライアルの毎日杯が開催され、テレビ中継を見ていたら、2年前のキズナの毎日杯圧勝劇を再生してくれていた。相当強い馬で、皐月賞には結局間に合わなかったけれども、その後ダービーでも強い勝ち方をし、秋は凱旋門賞にも挑戦した名馬だ。
なぜチーム・キズナと騒がれたのか、本書を読んだらその意味がよくわかったような気がする。キズナのダービー制覇は、前田氏がサラブレッドのオーナーになった1983年、北海道新冠町に牧場を開いた84年から、実に30年が経過してのダービー初制覇だったのである。馬づくりは人づくりからということで、人材育成にも力を入れ、欧米から一流の専門家を招聘して、スタッフにも馬づくりを学ばせている。そうして作り上げたノースヒルズ牧場、大山ヒルズ牧場からの初めてのダービー馬輩出ということで、騒がれたのである。本書は、そこに至るまでのノースヒルズの取組が描かれている。そういえば、1998年にファレノプシスが桜花賞を制して、前田オーナーと同牧場に初のG1勝利をもたらした時も、同じような騒がれ方をしていたような気がする。そこからダービー優勝に至るまでさらに10年以上を要しているのだから、ノースヒルズ関係者の方々のご苦労がしのばれる。
ただ、僕が競馬に詳しくないからだと思うが、社台グループとノースヒルズの違いについてはイマイチよく理解できなかった。毎年ノースヒルズで種付けしている新馬の頭数が50頭程度と言う中での勝ち上がり馬の頭数の多さを前田氏は強調されているが、僕らからするとこういうビジネスができる人はもともと「持っている」人で、勿論そこからの企業努力はあったとは思うが、初期条件が僕ら庶民とは違いすぎて、取っつきにくい世界のようにも見えるのである。どれくらい投資してどれくら回収できているのか、採算がよくわからないから、ああそうなのという程度しか感じないのだ。
でも、世界一の馬をつくるために、世界一の牧場と人材育成をしてこられたオーナーだ。生産馬によるダービー連覇は実現し、国内的には1つの大きな目標は達成したところだと思うが、世界一を目指すなら、そこから先の海外挑戦も、積極的にやっていってもらいたいものだと思う。ワンアンドオンリーもドバイでは3着だったけれど、今後は英国キングジョージや仏凱旋門賞挑戦が日程に入っているということだから、引き続き要注目だ。
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