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『Makerムーブメント宣言』 [仕事の小ネタ]

Makerムーブメント宣言 ―草の根からイノベーションを生む9つのルール (Make: Japan Books)

Makerムーブメント宣言 ―草の根からイノベーションを生む9つのルール (Make: Japan Books)

  • 作者: Mark Hatch
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2014/07/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
本書は、レーザーカッター、CNCミリングマシン、3Dプリンターなどの工作機械や、CADソフトウェアなどを備えた会員制工房(メイカースペース)として知られる「TechShop」のCEOによる書籍です。まったく製造業に関わりのなかった人々が、持って生まれた創造性と“民主化された"工具、無理なく自由にできる時間と資金を活用して、アイデアを形にし、ハードウェアスタートアップとして起業したり、余暇を活かしたビジネスを立ち上がるなどして、それぞれの望みに合った成功を手に入れる様子を紹介します。また、クラウドファウンディングや大企業とMakerの関わりなど、Makerムーブメントを支える環境についても解説し、この分野における米国の現状を理解するために役立ちます。

この本、近所の市立図書館で借りていたのだが、2週間で次の予約が入り、どうしても返却しなければいけなくなった。本来なら貸出期間の延長手続を取り、4週間かけてじっくり読みたかったのだがそういうわけにもいかず、仕事の方が忙しくてじっくり読んでいる時間もないまま、とにかく飛ばし読みを強いられた。

本書は実は二度目の挑戦だった。最初に読んだ時は、何が書いてあるのかさっぱりわからず、返却期限が到来してしまったので挫折して返却した。二度目となった今回は、前回に比べれば読みやすさは感じたけれど、「ものづくりの復権」だの「第三次産業革命」だのと喧伝されるメイカーズ・ムーブメントの本なのに、作られた「もの」に関する口絵がまったくない。書かれた文章だけで理解しろというのはなかなか困難で、あまり読者にやさしい本だとは言えない。その点で、日本の情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の小林茂先生の書かれた解説は写真も添えられていてわかりやすい。

解説がわかりやすく感じるもう1つの理由は、本書は米国の文脈で書かれているのに対し、解説は日本の文脈で書かれているからだと思う。米国のテックショップは、ものづくりで起業しようと考えているような人が結構集まって来ているような印象で、テックショップができたことでわざわざその近所に遠方から引っ越してくるような人までいるらしい。そういう一攫千金狙いの起業家が集まってくることで、コラボやイノベーションの機会も生まれ、テックショップを中心とした産業集積も生まれてくるのかもしれない。そこで必要とされるのは、プロトタイプが出来上がったとしてそれを量産化したり営業したりするのに必要な資金で、そういうのに資金提供してくれるエンジェル投資家やベンチャーキャピタルが育ってないといけない。

日本の場合はどうだろうか。クラウドファンディングは随分と盛んになったように思えるけど、そういうのに資金を出してくれるような出し手の規模は決して大きくないような気がする。それに、そもそも日本でテックショップやファブラボといった市民向け工房を利用している人って、自分にとってのオンリーワンのグッズの製作のようなカスタマイズにデジタル工作機械を使うことが多く、なかなかそれをもとに起業というところにはつながっていないのではないかという気がする。

いみじくも巻末解説で小林先生がこう書かれている。
 日本においてメイカームーブメントというと、ホビーとしてものをつくることを楽しんでいる人々のことを指し、メーカーにおいてプロフェッショナルがものをつくることとはまったく別の活動だと認識されている場合も多い。実際に、東京や大垣、山口で開催されたメイカーフェアとミニメイカーフェアにおいても、多くはホビーとして自分(たちで)ものをつくることを楽しむ人々である。(p.258)

私自身も2012年に岐阜県大垣市にデジタル工作機械を備えた市民工房「f.Labo」を開設し、何度か方針を転換しながら現在も継続している。(中略)
 f.Laboの役割は情報産業と地場産業を掛け合わせ、新しい産業を生み出すことだった。そのためには、0から1を生み出す工房が必要だと考えた。1年目は、手探りで準備を行い、デジタル工作機械を備えた市民工房として運営した。まず最初に、比較的簡単に扱えるレーザー加工機の導入ワークショップを用意し、それを受講すれば自由に利用できるフリータイムを用意した。
 だが、話題性もあって導入ワークショップの受講者は順調に増えるものの、フリータイムを利用する人々はごくわずかだった。このギャップをどうするかについては、スタッフと一緒に調査し、ディスカッションした。導入ワークショップを受け、言われた通りにデータをつくったり、機械を操作したりすることは、器用な人であればすぐにできる。しかし、言われたことができる、という状態と、柔軟に発想し、自由に使いこなせる状態との間には大きなハードルがあることに気がついた。
 そこで、いわば跳び箱の踏み切り版のように、このハードルを飛び越えられるような仕組みとしてのワークショップをデザインすることにした。結果として、最初の1年間の間に、大小あわせて23種類ものワークショップをデザインした。(pp.260-261)
なにせ僕の地元のお話でもあるのでちょっと話が逸れてしまったけれども詳述させてもらった。これは僕自身が日本国内で製作されたものを見ていてずっと思っていたことなので。

従って、なまじ日本での趣味の世界の話に慣れ親しんでいたところに、米国の、どちらかというと中小企業振興的なアプローチで書かれた本で、数々のものづくり起業家のサクセスストーリーを聞かされてもピンと来ないというのが正直なところである。自分も含めての反省として、日本人はものを作る人と使う人の分業化が高度に進み過ぎていて、身の回りで起きる様々な故障修理のニーズも、自分自身で半田ごてやテスターを使って直してしまうというよりも、業者を呼んで修理してもらうとか、壊れたものを修理に持っていくとか、あるいは壊れたら新しいのに取り替えるという発想が身についてしまっている。ここは米国とは大きく違うところで、いくら分業が進んでいるからといって、日常生活の中で頻繁に起きる破損や故障等の修復・修理は、自分たちでやってしまうということが多い。DIYの文化は、実は日本よりも米国の方がずっと進んでいるように思う。

そういう文化を背景として書かれたものが、一回読んだだけではなかなかピンと来ないのは仕方のないところだ。米国のメイカーズムーブメントについて知りたいと思う人には包括的に書かれたいい本だとは思う。

とはいえ、テックショップもファブラボもその工房としての規模感に違いはあるものの、基本思想は共通している。著者が言う「メイカームーブメント宣言」とは、次の要素から構成されている。

 ①MAKE(作る):実体のある物を作って自分を表現しよう。
 ②SHARE(発表する):自分の作品は人に見せ、作るための知識を人に教えよう。
 ③GIVE(贈る):自分で作ったものを人に贈ろう。
 ④LEARN(学ぶ):作るためには、新しい技術、素材、工程について学ぼう。
 ⑤TOOL UP(工具を揃える):自分で作るためには、適切な工具を自分で揃えるか、
   それが使える場所を近くに確保しよう。
 ⑥PLAY(遊ぶ):遊び心を持って作ろう。
 ⑦PARTICIPATE(参加する):メイカームーブメントに参加して、作ることの楽しさに
   目覚めようとしている人たちとつながろう。
 ⑧SUPPORT(支える):運動を支えるため、精神的、知的、財政的、政治的、教育的
   サポートの制度を作ろう。
 ⑨CHANGE(変える):メイカーとしての道を歩むことで、自分に訪れる変化を受け入れよう


繰り返しになるけれども日本では趣味の世界のお話になっているものづくりの分権化だが、これが途上国に行ったらどうなるだろうかというのには興味がある。途上国の街角や農村での生活といったら、いろいろな不便があってそれを少しでも良くできるような改善のタネはそこらじゅうに転がっているし、実際に道具を作ってそれを解決・軽減するのに成功したような草の根の発明家も結構いる。自由に使える工作機械が身近なところにあったら、もっといろいろな工具やら機械やらが発明されるかもしれないし、そうした発明の方が、先進国から持ち込んだ技術よりも現地での適正性が高くて、持続性に優れているかもしれない。

こういうところにデジタル工作機械の工房を試験的に作ってみたら何が起きるだろうか――そんな実験を試みる人がいたら多少でも資金拠出をして応援してあげたいと思ってしまう。

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