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寸評:最近読んだ本(2015年2月前半) [仕事の小ネタ]


今週は水曜日(18日朝)に三陸沖でちょっと大きな地震があり、小規模ながら津波も観測されて、また震災かと不安になった。先週仕事で仙台に行く機会があり、現地の方と牛タン料理を堪能したところでもあった。仙台の街は3月に予定されている第三回国連世界防災会議の準備が急ピッチで進められている様子が窺えたが、そうした準備も今回の地震でどうなっちゃうんだろうかと一瞬心配したりもした。幸い、大きな損害の報道もなかったが、余震はしばらく続くらしく、引き続き注意が必要だ。

そんな折も折、わけあって自然災害に関する本を読んだ。本日はそのご紹介を先ずして、合わせて国際社会の取組みということで外務省出身の方の国際舞台でのご経験についてまとめられた本も紹介してみたい。

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大災害に立ち向かう世界と日本

大災害に立ち向かう世界と日本

  • 作者: 「大災害と国際協力」研究会
  • 出版社/メーカー: 佐伯印刷
  • 発売日: 2013/03/11
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
東日本大震災では国際的な援助を受けたにも関わらず、日本ではその仕組みや諸問題に関してあまり知られていない。本書では、国際協力実務に携わってきた専門家・研究者が、さまざまな視点から災害と国際協力について解説。凶暴化する一方の自然災害に立ち向かうための第一歩。

この本はかなりよく書けていると思う。災害発生時に展開される国際的な緊急人道支援から、復旧・復興時の協力に至るまで、どのようなアクターがいて、どのような原則に基づいて動いているのか、協力に関する国際枠組みにはどのようなものがあるのか、国際協力に携わる者が踏まえておかない技術ノウハウの水準、日本がどう貢献してきたのか、今何が課題なのか、読み進めるにつれて理解が深まっていくような構成になっている。

災害が発生した時に問われるのは、先ずは自分の身は自分が守るという能力(自助)、隣り近所のことは隣人同士で助け合って発災直後の人命救助や被害拡大の抑止にあたるという能力(共助)、そして自助や共助だけではいかんともしがたい高度な人命救助活動やライフライン復旧、復興計画を策定して適切に予算配分を行って長期的な取組みを進める政府等公的機関の能力(公助)、各々の能力が備わっているかどうかである。そして、平時であっても怠りなく家庭、地域、政府のそれぞれのレベルで防災準備に努め、被災時のことも考えた資金、施設、制度等の面での蓄えを普段から作っておくことが必要ということがよくわかる。災害発生時の対応の主体はあくまでも被災国自身にあること、インフラや制度の復旧にあたっては、被災前の水準に復帰させるのではなく、それまで以上の強靭性を持った質の高いものを構築する必要がある点(Build-back Better)等を本書では学んだ。

しかもコンパクトにまとまっている。このテーマで勉強したいと思ったら、本書を一冊通読すればおおよその勘所は全てつかめると思う。仙台の国連世界防災会議と同時期に仙台市内で開催される様々な災害関連イベントに参加される方々には、予習のために本書を読むことをお薦めする。

惜しむらくはあまり名の知れていない出版社の扱いで、書店店頭ではなかなか手に入らないのが難点。アマゾンでの購入がおススメである。

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国際社会で働く:国連の現場から見える世界

国際社会で働く:国連の現場から見える世界

  • 作者: 嘉治 美佐子
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2014/09/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
長年、国際機関で働く著者の視点で、国際政治の現場における外交官たちのかけひきや共闘、独特の慣わしやルール、国際社会で働くための心得などを紹介し、そこが実際にどんな世界かを描く。また、国連の人道支援活動の実践をたどり、基本的な理念や制度をわかりやすく伝える。 これから「国際社会」を担う人たちに贈る1冊。

実はこの本もちょっと防災に関連している。著者は東京大学経済学部卒業後、外務省に入省。 EU日本政府代表部一等書記官、駐ベトナム大使館参事官、国連難民高等弁務官特別顧問、国連日本政府代表部公使、東京大学大学院総合文化研究科教授などを歴任して、ちょうど本書が発刊された頃からジュネーブの国連日本政府代表部大使に就任され、仙台での世界防災会議の席上発表される合意文書の交渉の最前線に立っておられるのである。残念ながら本書の中では防災への言及はあまりないけれど、災害発生後の緊急人道支援に関しては紹介されている。

外交や国際協力の場で将来働きたいと思っているような学生向けに書かれた本だと思う。無味乾燥な国連システムの制度解説ではなく、実際にそこに身を置いた経験者として、そこで繰り返される各国代表間の駆け引きや、物事がどうやって決まっていくのか、システムの中で誰がどう機能しているのか、日本政府の代表はそこで何をしているのか等が描かれている。それはそこに関わる人々のシステマチックな連動などでは必ずしもなく、各国の利害関係や個々の交渉人の貸し借り(あの時は我が国に支持してくれたから今回は我が国が相手国支持にまわるとか)、もっといえば人間的に好きか嫌いかといった感情等が入り交じった中で、交渉決裂ギリギリまで妥協点を探ろうとベストを尽くす人々の人間ドラマの集積なのだと感じた。

読んでいてとても面白い1冊で、これからの日本と世界を担う若い人には一読することをお薦めする。僕のようなオジサンにとっては、著者のキャリアはキラキラ過ぎて羨ましさを飛び越して、畏敬の念を抱くにとどまる。こういうキャリアをこれから指向できるような若い人が読むべきだ。

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