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『村上海賊の娘』(下巻) [読書日記]

村上海賊の娘 下巻

村上海賊の娘 下巻

  • 作者: 和田 竜
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/10/22
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
織田方の猛攻を雑賀衆の火縄が止め、門徒の勢いを京より急襲した信長が粉砕する。毛利・村上の水軍もついに難波海へ。村上海賊は毛利も知らぬ禁じ手と秘術を携えていた…。信長vs.本願寺、瀬戸内と難波の海賊ども…。ケタちがいの陸海の戦い!木津川合戦に基づく一大巨篇。

今年8月に上巻について感想を述べた際、「これが本屋大賞受賞作品だとはなかなか信じられない」などと不遜なコメントをした。その時点でコミセン図書室では下巻をすぐに借りることができず、その後も常に誰かが借りている状態で、なかなか下巻を読む機会に恵まれなかったが、このまま越年かと思った矢先、ようやく図書室の書架で下巻を発見した。真っ先に「確保」した。

ようやく読了、便秘が解消されたような爽快感だ。間が開きすぎたので前半のストーリーをかなり忘れてしまっていたのがつらかったが、後半になってきて誰と誰が戦うのか、それに雑賀衆がどう絡むのかがはっきりしてきたおかげで、海戦シーンも楽しく読み進めることができた。ようやく、タイトル通りに村上海賊の娘・景が主役に躍り出た感がある。そして、この村上海賊が主力をなす毛利軍が第一次木津川合戦で戦う織田軍の主力は、泉州海賊の首領・眞鍋七五三兵衛。基本、この2人を軸に据えた描き方が徹底されている。僕らは木津川合戦の結果は既に知っているが、毛利方、織田方双方にストーリーの軸になる人物を配置したことにより、合戦自体の描き方がよりダイナミックになっている感じではある。

この作家、史料を相当に読み込んだ上で作品を書いている。しかも、1つの文献の記述だけに過度に依存せず、他の文献でダブルチェック、トリプルチェックをかけている点には好感が持てる。ただ、それ以上に驚きなのは、そうした文献が今も閲覧できるという点にある。動機が何だったのかはわからないが、戦国時代であってもこうした出来事を日記や回想録のような形で記録に残しているという点、日本は世界に誇ってもいいと思う。

面白かったかと聞かれれば、面白かったことは間違いない。ただ、海戦のダイナミックな光景を文章にするのはとても難しいのだということも痛感させられた。文章を読むだけではいったい何が起きているのかがイメージできないシーンが度々あり、結局のところその局地戦では誰が誰に勝ったのかを大雑把に確認するにとどめてそのまま読み進めるようにした。その点ではなんだか最初からドラマか映画にでもするような感覚で書かれているような感じだった。『のぼうの城』の例を引くまでもなく、この作家は最初からそういうことを想定して作品を描いていると思われるふしがある。ただ、せめて行間を空けるか何かして、シーンの切替をやって欲しかった。

結局のところ、これが本屋大賞受賞に値するかと言われると、上下巻を読み切ってみてもよくわからない。面白かったことは間違いないけれど。

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