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『持続可能な開発のための教育ESD入門』 [仕事の小ネタ]

持続可能な開発のための教育 ESD入門 (持続可能な社会のための環境教育シリーズ)

持続可能な開発のための教育 ESD入門 (持続可能な社会のための環境教育シリーズ)

  • 作者: 佐藤真久・阿部治・朝岡幸彦
  • 出版社/メーカー: 筑波書房
  • 発売日: 2012/08
  • メディア: 単行本

ようやく読了した。10月には読み始めたのに、途中人に貸したりしていて、しかもその人から本が返ってきた時には別の仕事で手いっぱいになっていたため、すぐに読み込み再開できなかったのである。だから、「ようやく」のところに特に力を込めたいところだ。ESDについては、11月にご紹介した『アジア・太平洋地域のESDの新展開』の中でもご紹介しているので、詳しくはそちらをご覧いただきたい。

本書は、この「ESD」という概念が形成されてきた経緯から、ユネスコの場を通じて国連「ESDの10年」が2004年からスタートし、その取組状況の評価指標の策定から、実際に行われた中間評価の結果に至るまで、わかりやすく整理して書かれたものだ。400ページ以上ある大部の『アジア・太平洋地域のESDの新展開』とは異なり、比較的ページ数も抑え気味だし、そもそもESDとはいつ誰がどのように関わって概念形成が進んだのか、それが国際社会でどのように受け止められ、どのように推進され、現状はどうなっているのか、手っ取り早く知りたいという人には、こちらの本の方がコンパクトでよい。

この手の本でお決まりの各国の取組事例は、先進国間でも先進国と途上国の間でも相当に異なるので、興味のあるインドの章のみ読んだ。国の発展段階の違いによって、環境や社会の持続可能性を重視する国もあれば、いまだに貧困やそれによって様々な機会、権利を取り上げられている人々の状況改善が最優先される国もあるわけで、それだけに国際社会全体で共同歩調がとりにくいところもあるのかもしれない。各国の取組事情にはバラつき感が否めないというだけでなく、特定国の取組状況が紹介されている章ですら、本当にその国のことを網羅的に述べているのかどうか今一つよくわからないというモヤモヤ感がどうしても残ってしまう。

「持続可能な開発」といっても、その言葉を聞いてどう定義するかは国によって異なる。あるいは、定義は共有されていても、その実践という段に至っては国によって状況も優先課題も方法論も異なるということなのだろう。

同じ「持続可能な開発」を上位目標に掲げていても、ESD、ESDと叫んでいる人々と、低炭素技術の研究開発と実用化に取り組んでいる人々とでは、同床異夢に近い形で言うことが異なる。僕にとってESDは持続可能な開発を実現するための人材育成全般を指すものなので、低炭素技術の研究開発に従事できる人材を正規教育を通じて育成していくことだって、水道の維持管理の人材育成だって、持続可能な開発に向けた取組だといえる。しかし、実際のところESDは教育関係者が中心となって概念形成されているから、評価指標も正規教育において持続可能な開発が意識付けされているかどうかというところが問題で、教育色が非常に強い。

僕の理解がまだまだ足りない面はあるが、本書を読んでいて、ESDが「持続可能な開発」を明らかに上位の達成目標にしているのに、「持続可能な開発」の実現状況を上位目標を評価する指標に定めていない点が気になった。

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