『FABに何が可能か』 [仕事の小ネタ]
FABに何が可能か 「つくりながら生きる」21世紀の野生の思考
- 編著者: 田中浩也他
- 出版社/メーカー: フィルムアート社
- 発売日: 2013/08/26
- メディア: 単行本
1ヵ月ほど前、『実践Fabプロジェクトノート』についてこのブログでもご紹介させていただいたが、この本が出たのと同じ時期に、別の出版社から同じくファブラボ(FabLab)を題材にした別の本が出ていたので、これも読んでみることにした。編著者には同じ慶應大学の田中先生をはじめ、このテーマ関連の本を読めばよく名前が出てくるような人々が名を連ねている。
『実践Fabプロジェクトノート』が日本国内のファブラボでどのようなものが作られているのか、事例を紹介するのが目的で編集された本だったのに対し、『FABに何が可能か』は、そういうのに関わる人々が何を考えておられるのか、その背景にある思想について忌憚なく述べた論考集になっている。各々が同じような事例を取り上げながら、それを別の切り口から見ている。同じものでも、人により見え方が違うというのがわかって面白いといえば面白い。
でも、ファブラボに関わっておられる人って、こういうことをいつも考えておられるのだろうか。そうだとしたら、ファブラボに興味を抱いてその世界に入ってみようとしてこの本を最初に読んだ人にとって、ファブラボは結構敷居が高く感じられるのではないか。門外漢の僕等からしたら、メイカーズムーブメントとファブラボの違いなんてどうでもいいことなんですが。
だから、かなりの飛ばし読みをした。途上国の貧困削減とか、日本国内でもそうだが、社会問題の解決にファブラボができることについてももっと論じて欲しかった。3Dプリンタで使用する素材にペットボトルとかが使えるようになったら、リサイクルが地域どころか家庭内でももっと進められるようになる、そんなワクワク感も感じないではないのだが、現時点では、時計だとかスリッパだとか、日常生活に欠かせないものにちょっとしたデザインを施してカスタマイズするようなイメージの作品が多いようで、そういう工作機械に慣れ親しんだ人々の娯楽のような性格が強いように感じる。
こういう、みんなでワイワイガヤガヤやるような場が、地域に1ヵ所でもあれば、単身世帯が多くてなかなか一人暮らしの人が外への一歩を踏み出せるようなきっかけにもなるような気がする。そこで、世代を超えて若者からお年寄りまでが交流できたりするような可能性を秘めているように思える。日本の大都市で今後進行する超高齢化は、単身世帯の増加とかなり関連が強く、「孤独」の問題にどう取り組むのかは今後の都市問題では大きなテーマとなってくるだろう。そいう中で、こうしたデジタル工房が果たせる役割も、日本の場合は考え得るのではないだろうか。
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