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『仮面社畜のススメ』 [読書日記]

仮面社畜のススメ (一般書)

仮面社畜のススメ (一般書)

  • 作者: 小玉 歩
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2013/12/12
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
「利用される人」と「利用する人」の違いは能力ではない!「環境」マインド・「裏ワザ」マインド・「資源」マインド、3つのマインドで人生の主導権を取り戻せ!

あまりこの時期に読むべき本ではないと思ったが、半年以上前に市立図書館で予約しておいたら、今月になってようやく順番が回ってきて、気が進まないけれど読んだ。その気になれば1日で読める内容。大企業勤務から独立して起業するような創業者が、自分が企業勤めしていた頃にはどんなに有能だったかを、名刺代わりにアピールするような内容だ。

アマゾンに書かれていた著者のプロフィールはこうなっている。「大学卒業後、一部上場企業に普通に就職しながら、副業でネットビジネスに目覚める。副業ではじめたビジネスがどんどん大きくなり、サラリーマンをやりながら年収が1億円を突破。ちょうどその頃、会社に副業がばれてクビに。そのときの話を本にした『クビでも年収1億円』(角川フォレスタ)は、10万部を突破し、シリーズ合計15万部。さらに、2作目『3年間で7億稼いだ僕がメールを返さない理由』(幻冬舎)も35000部を突破。現在、間違いなく、ネットビジネス界でもっとも力を持っている1人」なのだそうだ。1981年生まれだから、現在33歳?何歳の時に一部上場企業をクビになったのかは知らないが、優秀だったのでしょう。その能力を全て会社に注いでいたら、若くして相当なキャリアアップになっただろうに、自身の営業実績とは別に副業に力を注いで儲け過ぎてしまったのだとか。

凄い人じゃないですか。でも、すごく若い人でもある。

僕らがぐうの音も出ないぐらいの大儲けをしている人だから仕方ないが、これはかなり個人的な成功談になっている。これを読んだからといって、「社畜」が「仮面社畜」には変身できそうにない。著者自身の体験談だから、広く一般化はできないだろう。

多分、こんな本を読む若い人は、単なる社畜の自分がどうやったら「仮面社畜」になれるのかを知りたいのだろうと思う。単なる社畜と仮面社畜の行動パターンのどこがどう違うのかについて、項目立てて書かれているが、ここに書かれている仮面社畜の行動を全て真似したからといって、著者のような大儲けができる人間にはなれない。人間の能力というのは、勉強すればするだけすぐに身に付く技術知識だけでなく、ビジネスチャンスを逃さない嗅覚や、マーケットリサーチの分析能力、人を動かして成果につなげていく経営力など、簡単には身に付かないセンスのようなものもあるし、そういう能力を発揮させてくれる制度環境のようなものもある。これらが整っていくには時間もかかる。

著者が優れていたのは、単に技術知識を得るために努力をしただけでなく、容易に身に付かないビジネスセンスを元々有していたことが大きかったのだろう。だから、そういうセンスが特段優れているわけでもない僕らのような凡人が、著者の体験談をそのままなぞったからといって、すぐに著者のような人間になれる保証など全くないのである。

だから、ある程度やる気があって、センスもある若手ビジネスマンであれば、その気にさせてくれるかもしれない本である。でも、そうやって優れた実績をあげているビジネスマンであれば、こんな本に頼らずとも各々が独自の方法論を既に持っているのではないかとも思うが。

いずれにしても、もう疲れて、先の見える既に社畜になってしまった50代のオジサンにはあまり参考にはならない。自分が歩んできたキャリアを振り返って白黒つける目的には読んでみてもいいかもしれないが、読んで気分の良い内容ではない。

それに、若手社員がこういう個人プレー中心の一匹狼みたいな人ばかりになったら会社もつらい。ちゃんと会社の業績に貢献した営業実績のある人の言っていることだから否定しづらいし、本書の各論で言われていることについては自分も実践している項目もあるにはあるが、チームワークの強化よりも個人の能力の強化を強調されている本書の内容は、ネットワークの力を信じてそれをどう高められるかを追求している僕にとっては強烈な違和感がある。会社にはいろいろな制度インフラが整っていて、それなりのサポートもあるから、個々の社員も営業実績をあげられるのではないかな。

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