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『実践Fabプロジェクトノート』 [読書日記]

実践Fabプロジェクトノート  3Dプリンターやレーザー加工機を使ったデジタルファブリケーションのアイデア40

実践Fabプロジェクトノート 3Dプリンターやレーザー加工機を使ったデジタルファブリケーションのアイデア40

  • 作者: Fabの本制作委員会
  • 出版社/メーカー: グラフィック社
  • 発売日: 2013/08/06
  • メディア: 単行本
出版社からのコメント
話題の3Dプリンターやレーザー加工機で製作された実例を写真で紹介する初めての本。
3Dプリンターやレーザー加工機を使ってものづくりがしたい人に向けた初の入門書です。

この本を読んでいて、つくづく、本というのは旬の時期というのがあるものだと痛感させられた。

3Dプリンタをはじめとしたデジタル工作機械を用いた市民工房であるファブラボ(FabLab)で、いったいこれまでどのようなものが実際に制作されてきたのか、その作品群を製作プロセスの写真解説付きで紹介したのがこの1冊である。発刊は今から約1年前。多分、第10回世界ファブラボ会議(FAB10)が横浜で開催されるのに合わせて、ホスト役を務めたファブラボ・ジャパン・ネットワークが、これまでの国内でのファブラボ運動の成果を紹介する本を作ったということなのだろうと想像する。その時点で、国内のファブラボがどこにあるのか、各々のファブラボの違いがどこなのかもわかり、意外と身近なところにファブラボがあったのだというのに気付かされた。渋谷にあるのは知っていたけれど、まさか僕の実家にほど近い、岐阜県大垣市にもあったというのは知らなかった。

「旬がある」と述べた理由は、発刊から1年が経過し、既に国内のファブラボの数はさらに増えているからである。自分が知る限り、さらに横浜・関内にオープンしているし、関西にもできた。また、世界ファブラボ会議は、第11回会議(FAB11)が今年7月にバルセロナで開催されているし、それ以前に、今年5月、第1回アジア・ファブラボ会議(FAN1)がフィリピンのボホールで開催されている。JICAの協力もあって、ボホール大学にフィリピン初のファブラボが設置されたのを受けたもので、1人の青年海外協力隊員の奔走で実現したFAN1は、今年のグッドデザイン賞(公共向けの取り組み・社会貢献活動部門)の受賞が先頃決まった(下記URL参照)。
http://www.jica.go.jp/topics/news/2014/20141002_01.html

世の中、ものすごいスピードで物事が動いているというのを痛感させられる。本も、タイミングを逃すと、追加で情報収集をしないとその1冊だけ読むだけでは不十分という状態に陥ることもあり得る。

その間に起きた出来事としてちょっと大きいのは、高校2年生で将来工学部志望の我が家の長男がファブラボに興味を抱いたことが挙げられる。とはいっても未だ実際にファブラボ渋谷にすら行ったことがないわけで、本格的に行動開始するのは受験がひと段落してからになりそうな気配も感じる。こういう話は僕らオヤジ世代が頑張ってもキャッチアップには限界もあるので、次世代の若者たちに期待するところが大きい。ガンプラいじりから、次の段階にステップアップしていって欲しい。この本は、うちの長男にとっても有用だ。居間の目につくところに置きっ放しにしておこう。

第二に、先々週富山で開かれた「高齢社会におけるレジリエントな都市づくり」という国際会議の中で、横浜市から来られていた方が、大都市では高齢者の単身世帯の増加と居住者の感じる「孤独」が問題だと指摘し、横浜市が取り組んでいる単身世帯のお年寄りを外に出やすくする仕掛けづくりの概念図の中に、なんと「ファブラボ」を載せておられ、ちょっと驚いたというのがある。考えてみれば横浜はFAB10を誘致したわけだし、それに合わせてファブラボ関内ができたりしている。ファブラボの運動はもっと市民主導のもので、横浜市が政策的に主導するようなものではないと思うが、少なくとも行政側がそうした運動を認知し、そこでものづくりのスキルを持ったお年寄りが若い市民と交流するような場になり得ると期待しているのだというのを知った。

こうしたものづくり復興の動き――「メイカーズ・ムーブメント」については、最近別の本も出ているので、機会があればまた読んでブログでもご紹介してみたいと思う。

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《こんな工作機械がファブラボには設置されているのです》

但し、こういうのって、1つ作品を作って目的達成した後がどうなのかが少し疑問でもある。市民が各々の生活の中で何らかの不便を感じていて、それを改善するための何らかの家具や器具をファブラボで作ったり、オンリーワンのパーソナル感の強いものを作ってみたりするのは、それに取り組んでいる間は盛り上がるけれど、それが出来上がっていったん目的達成してしまうと、「次」ということがすぐには考えられないだろう。そういう意味では、ファブラボを地域の人々に広く認知してもらって、底辺を拡大することに今は重点が置かれているのかもしれないが、一方で持続的に製作プロセスに関わっていこうというリピーターがどれくらいいるのだろうか。

勿論、そういう場に集まって仲間とワイワイガヤガヤやることが楽しいという人もいるだろう。でも、そういう人が固定化して内輪で盛り上がっているようなところに、ニューカマーは入っていきづらかったりもするかもしれない。その意味では、ニューカマーの心理的な敷居を取り除けるようなファシリテーション能力が、ファブラボを運営するスタッフには求められるのかもしれない。

本書を読みながら、そんなことを少しだけ考えた。

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