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『コンパクトシティ政策』 [仕事の小ネタ]

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先週、仕事で富山市に行ってまいりました。富山市で有名なLRT(ライトレール・トランジット)にも乗り、富山城やまちなか見学もしましたが、勿論ちゃんと仕事もしましたよ。LRTは軌道を走っている路面電車(トラム)も種類が多く、中には車体全体で子供映画の広告をしているのもあって、見ていても楽しくなる。「撮り鉄」も結構いて、LRTはまちの人々の足になっているだけではなく、貴重な富山の観光資源にもなっているんだと実感しました。

まあ、出張で訪れる土地について、あらかじめ予習しておくのは当たり前のことで、1ヵ月ぐらい前から少しずつ読みはじめていた本があるので、ちょいとご紹介しましょう。

Compact City Policies: A Comparative Assessment (Japanese Version)

Compact City Policies: A Comparative Assessment (Japanese Version)

  • 作者: Oecd
  • 出版社/メーカー: OECD
  • 発売日: 2013/02/19
  • メディア: ペーパーバック

この本はOECD(経済協力開発機構)が環境負荷の少ない持続可能な都市政策とはどのようなものかを検討した調査研究レポートである。出張で訪れる富山市がケーススタディに選ばれているので読んでみることにした。「コンパクトシティ」の概念の変遷過程について知り、都市の持続可能性の計測指標の例を知れたところなどは勉強になる。僕は2006年に我が街の社会教育会館主催の少子高齢化勉強会の中で、地元のA大学の都市政策がご専門の先生から「コンパクトシティ」について初めて聞かされた。お年寄りは移動(モビリティ)に支障がある。郊外に転々と居住していると公共サービスへのアクセスや普段の買い物等に使う公共交通へのアクセスも大変だ。郊外の居住者のニーズに全てきめ細かく対応していたら、財政負担はバカにならない。だから、高齢者サービスを効率的に提供するには、受益者をできるだけ集めてコンパクトなエリアで行政サービスを提供することが大事なのだと聞いた。

コンパクトシティは今日的な意味ではこうした高齢者対策とつなげられることが多いが、概念自体は結構古くて、欧州で見られる、居住エリアと自然環境保全エリアを分離した都市の形成のことを言っていたらしい。居住や経済活動はコンパクトな市街地の中で完結させ、その周辺に田園が広がるというイメージ。でも今は居住空間が郊外にどんどん広がっていて、逆に都市の様々なサービスを効率的に供給するという観点から、郊外の住民を都市に集める政策をコンパクトシティ化と言われている。

でも、都市に人を集めれば、混雑もする。自動車で動き回られると渋滞も悪化するし、アイドリング時間が長くもなるので、気候変動にも悪影響を及ぼす。そこで、市街地で車移動をしなくてもいいようにと、ある程度狭いエリアをカバーする公共交通システムの導入もということで、LRTが脚光を浴びるのである。日本的に言えば、路面電車だ。コンパクトシティ政策は、こうした公共交通システムとつなげて語られることが多いのもそのためだろう。

言ってみれば、コンパクトシティ政策は、高齢者対策であるだけでなく、気候変動対策でもあるわけです。

ただ、本書を読んでいると、個々の都市のコンパクトシティ化はわかるけれど、できる自治体とできない自治体がある気はする。おそらくこの報告書ではあまねくすべての都市がコンパクトシティ化を目指すべきだと想定しているようだが、日本の場合は他都市との若年人口の奪い合いになるし、周辺の他の自治体からの居住誘引にもなるので、東京など大都市や周辺自治体との関係性の整理、政策調整等も必要になる筈なのだが、残念ながらそういうのには言及がない。

僕が初めてコンパクトシティについて知ったとき、それを自分の故郷に当てはめるなら、B町の高齢者がC市に集住するということだろう。B町にも市街地はあるが、僕の実家はその市街地から最も離れたエリアにあり、むしろ境を接しているC市の方が集住には向いている。少し前に日本政府が進めていた市町村合併にはそういうのを克服させる意図があったのではないかと思う。でも、肝心なことが欠けている。うちの親をはじめとして、様々な公共サービスがなかなか届かなくても、年寄りは住み慣れたコミュニティに住み続けたいのだ。それを、居住誘導と称してサービス重点区域の選別を進めるのは、そこから外れた地域の人々の切り捨てになってしまいかねない。だから、僕はコンパクトシティ化はそうは言っても難しいと思ってきた。そういうことについてもこの報告書にはあまり書かれていない。

Compact City Policies: A Comparative Assessment (Oecd Green Growth Studies)

Compact City Policies: A Comparative Assessment (Oecd Green Growth Studies)

  • 作者: Oecd Publishing
  • 出版社/メーカー: Organization for Economic
  • 発売日: 2012/05
  • メディア: ペーパーバック

日本語版の記述内容を英語でどう言っているのかを確認したいと思い、英文のオリジナル版も所々読んでみることにした。引用されている文献も、実際の執筆者も日本人が多くて(しかも国交省系)、交通インフラ整備にかなり肩入れした内容のレポートになっている気がする。

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