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『ウルトラマラソンのすすめ』 [読書日記]

ウルトラマラソンのすすめ: 100キロを走るための極意 (平凡社新書)

ウルトラマラソンのすすめ: 100キロを走るための極意 (平凡社新書)

  • 作者: 坂本 雄次
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2014/09/12
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
フルマラソンを超えた距離を走る過酷なレース「ウルトラマラソン」が、いま静かなブームになっている。ランナーたちは何を求めて100km、200kmと走るのか?その知られざる魅力を、著者の実体験をもとに紹介!100キロを走れば、人生が変わる!ウルトラの歴史、ハウツー、超長距離を走る極意が満載!!

9月最後の週末、土曜朝起きた時に風邪のひきはじめのような状態だったが、そこから体調は徐々に悪化し、微熱と下痢に悩まされ、日曜夜は頭痛がひどくなって何もする気力がわかず、ふとんに横になって体を休めるしかなくなってしまった。翌朝の頭痛も我慢できないほどで、元々月曜日は遅めの夏休みを消化するつもりで休暇申請を出してあったが、元々やろうとしていた予定はキャンセルし、午前中に脳外科で診てもらい、脳に異常がないことを確認すると、午後はまた吐き気がひどくてただ寝込むしかなかった。翌火曜日からは出勤はしたものの、頭痛は完全には治らず、ふらつく頭でなんとか1週間を乗り切ったという感じ。

こうして、9月最終週は体調を崩したことにより、月間のジョギング走行距離は125kmで足止めを食らい、結局目標としていた150kmには到達できなかった。天候が悪かった日もあったので、ランニング中断はこれで10日にも及ぶ。おかげでたまっていた足の疲れは相当取れたので、そろそろ再開したいという気持ちが強くなってきている。

体調が芳しくなくてとても走れる状態ではなかったこの1週間、息抜きで何か読もうかと考え、書店で物色して手に取ったのが坂本雄次さんの近著。

坂本さんといえば、日本テレビが毎年8月最終週末に行っている「24時間テレビ」の恒例企画である「24時間マラソン」で、挑戦するタレントのサポートに付き、本番に向けたタレントの練習メニュー作成、練習管理から、本番の伴走、エイドステーションでの栄養補給やマッサージ等のロジスティックス全般の請け負い、24時間テレビのフィナーレに合わせてタレントをゴールさせるようペース配分を計算するなど、イベントのマネジメント全体を手がけている超長距離マラソンのプロだ。1990年代前半、僕が独身で市民マラソンをコンスタントに走っていた時期、既に坂本雄次の名は市民ランナーの間では非常に有名だった。間寛平のギリシャ・スパルタスロン挑戦をサポートした人として。


そんな坂本さんがなぜ「ウルトラ」の世界に足を踏み入れることになったのか、その経緯について語り、「ウルトラ」に向けた練習法やレース本番でのセルフマネジメント等について語ったのが本書である。フルマラソンやハーフマラソンと違い、ウルトラマラソンはそんなにペースを上げて走らないので、中高年には向いている、女性ランナーにとっても、気になる体型維持にはもってこいだということで、皆さん「ウルトラ」挑戦を目指しましょうというのが本書のシンプルなメッセージだ。

でも、そうすすめられても「ウルトラ」を走るには勇気が必要そうだ。

そんなに練習に時間を割けない。坂本さんは本書において、100kmを14時間で走るというウルトラマラソン大会の標準的制限時間設定を基準として、1kmを7分30秒ぐらいで走れればいいとペースについてはハードルが低いことを強調されているが、問題はこれを長時間続けることであり、6~8時間続けて走る練習を普段から取り入れておくことが必要だとも述べておられる。週末にそんなことをやってたら家族の不興を買うことは必至。パートナーも同じ趣味を共有してくれて一緒に走ってくれるというのならともかく、パートナーを置き去りにして1人走りに行くなんてことはとてもできない。その部分のハードルについては、残念ながら坂本さんは語っておられない。

また、普段の練習におけるペース設定が、坂本さん的には「スロー」だと思っているレベルが、僕らにとっては速すぎるということもある。よく、「ゆっくり走ればフルマラソンで3時間切れる」という逆説的な殺し文句を使われる人が多いが、じゃあ「ゆっくり」ってどれくらいの速さだよって聞くと、それ自体が僕らにとっては速すぎるペースだったりするし、逆に足の故障を労わりながら本当にゆっくり走っていたとして、それでも本番でサブスリーを達成できるようなランナーは、元々サブスリーで走れる素質があったのだと思わざるを得ないのである。「キロ4分ペース」というのは、スピードランナーにとってはゆっくりペースなのかもしれないが、よほど頑張っても4分30秒がぎりぎりの僕にとっては、全力疾走に近いハイペースなのである。

僕は独身だった一時期、月間200kmを走り、ウルトラマラソンにも何度か出たことがあり、そして完走もしている。今となってはいい思い出だが、あの練習を20年後の今できるかと問われたらとても自信ない。それくらいの覚悟が要る。

話が若干逸れるが、先日、来年2月の東京マラソンの抽選結果が公表された。僕が情報交換をしているランナーの多くが「落選」した一方、「え?この人もランナーだったの?」という人までもが応募していたという事実に戸惑いも覚えた。フルですら走るとなったらそれなりの覚悟が必要で、そのための練習を積まなければいけないと思っている僕にとって、普段走っていないけど制限時間が8時間なら「完走」できそうだからなどというい軽い気持ちで応募する人の気持ちは理解できない。昔ホノルルマラソンを8時間以上かけて「完走」したというのを売りにして、いかにも私は市民ランナーの代表よって面をしてテレビや雑誌に登場していた女性タレントがいたが、42.195kmを全部歩いたとしても8時間少々でゴール可能であり、「ランナー」じゃなく「ウォーカー」だろ、とツッコミを入れたくなってしまった。普段走ってないけど抽選で受かってしまったという人、走りたくても走らせてもらえない人の分も背負って、ちゃんと練習して2月に臨んで下さい。

坂本さんの普段の練習ペースは僕には早すぎで、自分は普通の人だと強調されてても僕には空しく響くが、ストレッチをこまめに入れろというのは、たとえフルマラソンでも、ハーフマラソンであっても有効かと思う。この部分に関しては、参考になった。僕はランニングは剣道を長く続けるため、若い人のスピードとスタミナについていくだめの足腰強化の一環と捉えているので、長時間かけて長い距離を走るという目標設定はあえてせず、ある程度の筋力は維持したいと思っている。だから、走るのは10kmまでを中心とし、年に1回か2回、ハーフマラソンや青梅マラソン30kmあたりに挑戦するという中期目標を定め、コンスタントの月間100km程度を走りつづけられたらと思っている。

最後になるが、本書については、ランニング素人の芸人を短期間で日テレ24時間マラソンを走らせるまでに持っていくノウハウをもうちょっと書いて欲しかった。本書によれば、間寛平はウルトラランナーの素質がすごいということだが、欽ちゃんや徳光さん、森三中の大島など、普段絶対に走ったりしたことがなさそうな人を数カ月でウルトラランナーに仕立て上げるにはそれなりのノウハウが求められるのではないかと思う。そのあたりを開陳していただければ、勢いで東京マラソンに応募して、当選してしまったビギナーにとっても参考になるところはあるのではないかと思う。

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