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『2030年の世界経済』 [仕事の小ネタ]

2030年の世界経済―新興国と先進国 共同リーダーシップの時代

2030年の世界経済―新興国と先進国 共同リーダーシップの時代

  • 作者: イワン・ツェリッシェフ
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2014/07/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
国際的なエコノミストがユニークな視点からグローバル経済の現状と2030年までのシナリオをわかりやすく解説する。本書で焦点が当てられているのは、これまで世界経済をリードしていた先進国と新しいリーダーとして台頭しつつある新興国との経済力のバランス・シフトである。主要な新興国としてはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)に加え、インドネシア、メキシコ、トルコとタイを含むE-9(エマージング-9)を取り上げ、2030年までに起こる経済力のシフトは今、想像をこえるほど大きなものとなる。筆者は各国についての目を引く事実とデータを取り上げなら、その兆しを明らかにする。
 ・新興国の名目GDPは先進国の倍に伸びる。
 ・中国経済はアメリカの1.4倍、日本の4-6倍の規模となる。
 ・インドとブラジルも日本などを上回る。
しかし、新興国の台頭を先進国の衰退と考えることは間違いである。世界経済の新しいストーリーが始まっているのだ。逆に、世界規模のコスト・価格の単一化や新興国における先進国製の需要の急増により、欧・米・日は国内経済を再活性化させる大きなチャンスを得る。日本の企業、政府、地方自治体、そして日本人が新しい世界経済が開くビッグ・チャンスを利用するために何をなすべきかについての大切な提言もなされる。

仕事柄、向こう15年間の世界と日本の姿に関する予測には非常に強い関心があり、それを考えるのに役に立ちそうな本はできる限り読むようにしている。先週は青山の国連大学でジェフリー・サックス教授(コロンビア大学)の基調講演を聞く機会があったが、世界的にも著名な経済学者であるサックス教授は、来年(2015年)は今後の地球の未来を占う国際会議が集中して開かれる、人類の存亡を賭けた極めて重要な年になると強調されていた。

第1には、2030年までの15年間の持続可能な開発に向けたグローバルな達成目標に合意する国連サミット(9月開催)、第2には、そのグローバルな持続可能な開発目標の達成に必要な資金をどう調達するか、負担するかを話し合う開発資金国際会議(7月開催)、そして第3に、それ以上に重要なのは、気候変動枠組条約締約国が京都議定書計画期間終了以降の気候変動対策の枠組に合意する第21回締約国会議(COP21)である。とりわけ、COP21は重要で、教授は限られた講演時間の中では紹介をかなり端折られたけれども、9月中旬に教授が議長を務めるUNSDSN(持続可能な開発に向けたソリューション検討のための有識者ネットワーク)が発表したレポート「低炭素化深化への道筋(Pathway to Deep Decarbonization)』の中で、地球の気温が2℃上昇すると、地球は自身を冷却する機能が不全に陥り、坂を転げ落ちるように温度上昇が続いていくと警鐘を鳴らしている。そのため、経済社会の低炭素化を進める上では、日本の企業等が開発した省エネ技術や環境技術を世界に普及していくことが大事だとして、教授は日本に期待される役割は大きいと述べておられた。

さて、いきなり脱線した始まった今回の書籍紹介であるが、2030年に向けてもう1つ確実に言えることがある。それは、新興国やそれ以外の途上国がさらに発展を遂げ、先進国を凌駕するほどの経済規模に達することで、そのために新興国や途上国の発言権は今後ますます高まり、「北」と「南」で二分する世界観は完全に意味を失うということだ。特に、新興9カ国が先進7カ国をどれくらい超えるのか、それは先進国にとっては衰退を示すのものなのか或いは新たな成長の機会と捉えるべきものなのか、先進国の経済低迷は新興国の今後の成長の足かせになってしまうものなのか、それとも新興国は自力ででも成長率を維持できるのか、新興国には課題はないのか―――そんな様々な疑問が浮かんでくるが、それらについての今後15年間の変化を予測したのが本書である。

中には、単に新興9か国の現状(マクロ経済、国内情勢の安定性、産業競争力、ビジネス環境等)を比較しただけで今後の展望には必ずしも応えていない章もあるが、経済について予測されていることについては、まあ確かに起こり得るだろうなと思うような内容が多い。特に象徴的なのは、第4章「新しい世界経済の兆候」で、この章の各節のタイトルだけ列挙しておくだけで、本書が何を予測しているのかだいたい想像してもらえるだろう。

1.グローバル価格とグローバル賃金が形成している
2.先進国と新興国との生産コストの格差が消える
3.工業生産は先進国に回帰する
4.「本物効果」により先進国から新興国への輸出が伸びる
5.新興大国の企業は非価格競争力を高める
6.新興大国のコモディティ企業は有力なグローバルプレーヤーになる
7.E9・G7の経済連携によるシナジー効果が大きくなる
(1)先進国からの投資は新興大国経済の高度化を促す
(2)新興大国からの投資は先進国の経済を活性化させる
(3)企業人材の「国際化」が進む
(4)「ウィン・ウィン・ゲーム」のチャンスが出る

2030年までに新興9カ国が先進7カ国をいろいろな面で追い抜くが、結局それは先進国側にとってもチャンスだし、勿論、先進国側でそのチャンスを捉えていっそうの経済発展につなげられるなら、それが新興国の発展にもつながるとしているのである。日本の慢性的なデフレも、著者によれば、グローバル規模における価格単一化への動きが生み出したものだという。こうした環境下で先進国のグローバル企業が取り得る戦略としては、①国内ビジネスと海外ビジネスを同時に拡大する(市場規模をある程度大きく想定できる)、②生産を市場に近づけ、新興大国向けのものを同新興大国で、母国をはじめ先進大国向けのものを先進国で作ること、③市場の拡大ペースが速い新興大国における生産・販売のシェアを高めること、等が考えられるとする。

このように、経済に関する予測は本書では手厚い。しかし、環境や社会問題への言及が殆どない点では物足りなさも感じる。この記事の冒頭で紹介した気候変動について、本書では2030年に向けた気候変動の経済社会への影響に対してはほとんど言及がないし、人口高齢化の影響についても同様だ。ただ、ほぼ唯一といっていいと思うが、挿入されているコラムの中で「新興大国は先進国と違う消費モデルを見つけなければならない」とは述べている。
 E9は、先進国の大量消費パターンをそのまま取り入れることを避け、もっと自然環境に優しい消費コンセプトを見つけなければならない。世界経済のリバランシング論は、中国などにおける個人消費の拡大ペースの加速を前提としている。しかし、持続可能な成長に配慮して、加速をあまりプッシュしない方が賢明である。
 たとえば、中国の都市部の家庭が排出する二酸化炭素の平均は、現在では欧米平均の約1/3になっているといわれる。農村の家庭はさらに少ない。仮に中国の家庭が米欧型消費の真似をして排出量を米欧のレベルまで増やすと、中国自体はもちろん世界全体の自然環境が耐えがたい打撃を受ける
 特に、中国などにおいて自家用車の普及率が欧米のそれに近づけば、それは「エコの悲劇」をもたらすこととなる。仮にハイブリッド車や電気自動車(EV)が増えたとしても、問題は解決されない。したがって、時間が経てば経つほど中国などが自家用車の利用を厳しく規制せざるを得なくなる状況が生まれてくる。そうした場合、交通手段としては、自家用車より大型電気バスなどの利用を促進する動きが強まっていく。たとえば、ちかいうちにすべての市内バス路線で電気バスのみが利用される見込みである。こういった動きは将来、中国出身の新しい消費モデルの形成につながる可能性がある。(pp.180-181)
この点については、最近読んだ別の本でも同様の主張が展開されていたので、その本の紹介記事の中で改めて振り返ってみたい。

ただ、こういうグルーピングにしてしまった結果として、本書では韓国の扱いは微妙だし、G7には入っていないけれど先進国であるには違いない他のOECD加盟国についてはどうかなという気がしてしまう。こうしたグルーピングにしたことで、欧州のギリシャやスペイン、ポルトガル、アイルランド等、下手したら新興国とは逆に衰退経路を辿ってしまいそうな国についての言及は全くなされていない。

また、著者がロシア人だからある程度は仕方ないが、今後高齢化人口減少が進むロシアを新興国に入れて描くのには僕は少し抵抗もある。ロシアに関しては記述がやたらと手厚いが、ウクライナ問題が起こった後に出された本の割にはロシアを当たり前のように世界経済の一員として描いているのはどうかとも思う。

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