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『銀翼のイカロス』 [池井戸潤]

銀翼のイカロス

銀翼のイカロス

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2014/08/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
半沢直樹シリーズ第4弾、今度の相手は巨大権力!  新たな敵にも倍返し! !
頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、500 億円もの債権放棄を求める再生タスクフォースと激突する。政治家との対立、立ちはだかる宿敵、行内の派閥争い――プライドを賭け戦う半沢に勝ち目はあるのか?
先週、バンコクに出張する際、なんとなく読みたくなり、Kindle版を成田空港で注文。空港で出発までの待ち時間に読み始め、滞在先での空き時間を使って2日間で読了した。以前海外出張した際に読んだ本を紹介する際にも一度言及したことがあるが、電子書籍の最大のメリットは、読みたいと思った時にすぐに購入して読み始められることだ。しかも、何冊購入しても基本Kindle1台に収まってしまうので、自宅の蔵書が積み上がってスペースを取ることがない。デメリットとしては、気軽に購入できるが財布を握っている我が家の大蔵大臣のあずかり知らぬところで購入しているので後で大目玉を食らうことが多々あること、加えて、電子書籍化されているのは圧倒的に小説が多く、もうちょっと専門書も電子書籍化してくれれば、普段の通勤でもKindleを携行するんだけど、今のところは出張に携行してオフタイムに小説を読む程度にしか使うことができていないというのも、デメリットとはいえる。

さて、多くの半沢直樹ファンが待ちに待った第4弾『銀翼のイカロス』が今月発売となった。半沢クンも人事異動を重ねるたびに重い仕事を任されるようになりつつあり、大阪西支店時代は5億円の債権回収だったのが、本店営業第二部次長で伊勢島ホテル再建では100億円になり、東京セントラル証券出向を経て営業第二部次長に復帰したと思ったら、今度は500億円の債権放棄ときた。この間に経過した時間は振り返ってみるとそんなに長くない。証券子会社出向はせいぜい数カ月だった筈なので、伊勢島ホテル再建から帝国航空再建までの期間もかなり短かった筈である。そう考えると、半沢の成長カーブは相当急激に上昇した筈だし、中野渡頭取は意外と短命だったのかもという気がする。

メガバンクが舞台だからこうした大企業の経営再建の話やそれに政治家が絡んでくる話があっても当然で、銀行員をやってればそういう話と関わる機会もある人はあると思う。ただ、これだけ短期間に同じ行員に試練が集中するというのも可哀想だなと、元銀行員としては同情したくもなります。

著者が執筆開始した頃には民主党政権のメッキがあらかた剥がれ落ちた後だったので、こういうストーリーはさもありなんだと思う。何しろその前の自民党政権時代の取組みを全否定するところから始まっているから、たとえ優れた取組みであっても、中身の精査もしないではなから無視し、しかも官僚主導を否定して政治主導と言う割に、外部の「有識者」というのでタスクチームを作り、そこで作業をさせることが多かった。全部がデタラメとは言えないけれども、結構乱暴なやり方が横行していたという印象が強い。

『民王』を読んだあたりから、池井戸さんは政界を描くのがあまり得意ではないという印象があり、今回半沢が対決した人々の登場する舞台もややリアリティを欠いているところが感じられたが、大事なのはカタルシスで、読んでて痛快な気持ちになれればそれでいいのではないかと思う。だから、堺雅人さんが蓮舫をやり込める光景をイメージし、ほくそ笑みながら読んでしまった。

今回は、いつも以上に渡真利や近藤と飲んでいるシーンが多かった気がする。そして、今回は近藤がさりげなく半沢をフォローしてたりするシーンもあった。こういう三人組の強固な紐帯が、半沢を大いに助けていると思う。

加えて良かったのは、内藤部長が部長なりの働きを示していること。今までは部長を差し置いて半沢次長が前面に出て取締役会で演説をぶったり、金融庁検査で説明を強いられたりするようなことが多く、部長は何やってんだと首を傾げるところがあった。今回も金融庁ヒアリングへの対応は次長としての半沢が案件担当として応じざるを得なかったと思うが、重要な組織決定を行なう場である取締役会での説明は、内藤部長がちゃんとやった。それでこそ営業第二部長。次長の言動をハラハラしながら見守るのが優秀なバンカーと言うわけではない。

さて、不祥事の責任を取って遂に辞任を表明した中野渡頭取だが、後継は誰でしょうかね。大和田、紀本と次期頭取の椅子を狙えた常務が次々と失脚する中、今回の作品の中からは次期頭取の候補が誰かが見いだせなかった。数年後にシリーズ第5弾を考えるなら、内藤頭取というのも十分あり得るとは思うが。(その時は、「部長・半沢直樹」になっているだろうか。)

それにしても、花さんはどこへ行ってしまったのだろうか。『ロスジェネ~』の時にも感じたが、オフタイムに同僚と酒を飲んでいるシーンはあっても、自宅に戻って妻や家族と語らうシーンが吹っ飛んでしまっている。テレビドラマ化するとしたら、この辺りのシーンを追加しておかないと、リアリティに欠けるドラマに終わってしまうことを危惧する。

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コメント 2

うしこ

Kindle 版が出ているのですか。買おうかなあ・・・。
私も旅行の時には Kindle を重宝しますが、読んだ後人に貸せないのが惜しいと思っています。
by うしこ (2014-08-14 06:05) 

KW

この後の続きとして、私としては
半沢は、役員になる前に、支店長として
以前いた、大阪支店支店長となるべきだと
思います。そこで中小企業の経営再建のために、
バンカーとして底辺からの努力を見せてほしい。
このまま本店での話ばかりでは、展開が限られると思います。

by KW (2014-09-23 11:16) 

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