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『舟を編む』 [読書日記]

舟を編む

舟を編む

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/09/17
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
玄武書房に勤める馬締光也。営業部では変人として持て余されていたが、人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく―。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか―。

最後の記事を予約付きで4日(月)に掲載した後、バンコクに出張していました。最近の出張の際のお決まりのパターンは、オフタイムに読めそうな小説を携行すること。今回も持っていくことにした本があった。三浦しをんの『神去なあなあ夜話』であるが、ついでに『舟を編む』も図書館で借りた。その上で、ページ数的に早く読み終われそうな『舟を編む』は出張出発前の先週末から読み始め、自宅を出るまでに読み切れなかったので、結局行きのフライトの機内にまで持ち込むことになってしまった。

繰り返しになるが本書を先に読もうと思ったのは、ページ数的にはすぐに読み終われるだろうと考えたからだ。結局いろいろやることがあって読書に十分時間が取れず、中途半端にページ数を残し、1冊まるごと機内持ち込みとなった。確かにページ数はさほどではないが、本書がカバーしている年月の長さは実は15年近くに及ぶ。冒頭お馬締クンが辞書編集室に配属になってから同僚の西岡君が編集室から異動になるまでの数カ月と、後半実際に辞書の編集作業が始まって出来上がるまでの2年ぐらいの間に、10年近い空白期間が存在する。この空白の期間中に起きたことについては後半にしっかり語られている。

こうして見ると、辞書をゼロから作ることの大変さを感じさせずにはおかない。収録される言葉の採集とその解説文の妥当性の検証、使用する紙の質や表紙の装丁等、ここまでこだわっているのだというのを知ると、普段何気なく使っている辞書に愛しさすら覚える。これは電子辞書では真似できない。

僕は残念ながら映画化された方は見ていないが、用例採集カードがどのように書かれ、どのように保管されているのか、カードを選別して見出し語を決めるのがどのような基準で行なわれるのか、その見出し語の解説(語釈)は誰がどのように書くのか、その妥当性・十分性を誰がどう判断するのか、映画のHPを見たらイメージを作るのに役に立つかもしれない。これだけ多くの人が関わる辞書作りの膨大な作業を文章だけで理解することは、ちょっと難しいかも。

その一方で、馬締クンと結ばれる香具矢さんですが、宮崎あおいさんが演じていたというのを後から知ると、そこに関してだけはちょっと文章から抱くイメージとは違うなという気もした。(好みの問題もあるんだろうけど。)

これだけの年月を200ページ少々の分量に落とし込んでいるのだから展開に無駄もなく、余計な記述は少ない。変にラブストーリーを深掘りせず、軽いタッチで済ませているところもいい。三浦しをんさんの作品の中でも傑作中の傑作だと思う。
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