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『路地の教室』 [読書日記]

路地の教室―― 部落差別を考える (ちくまプリマー新書)

路地の教室―― 部落差別を考える (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 上原 善広
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2014/01/07
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
「路地(同和地区、被差別部落)って何?」「住所による差別なんて今もあるの?」「知らなければ差別はなくなる?」「同和教育、同和利権とは?」全国千か所以上の路地を歩いた著者が全ての疑問に答えます。差別について、他者について、イチから考えてみよう。

最近の出来事で、「差別」を多少なりとも意識させられることといったら、東京都議会会議場でのセクハラやじが思い浮かぶかもしれない。これは差別というか女性蔑視ともいえるもので、ヤジが飛んだ時に即座に毅然とした態度を取らなかった議長も自民党でうちの町の選出である。今まで強固な支持基盤の上にあぐらをかいていてほとんど選挙運動らしいことも普段やらずに当選だけしていた人だが、さすがに今回の話では有権者の投票行動に影響が出てくるだろう。(まあ、うちは元々この人にはあまり票を入れてこなかったんだけど。)

本日ご紹介する本は、少し前に新聞の日曜書評欄で紹介されていたもので、先に読んだ人のコメントでも、「わかりやすい」と好評だったものだ。関西では「部落」のことを「路地」というらしい。何となく人口稠密な都市部をイメージする言葉で、辛うじて関西圏に片足を突っ込んでいる僕の故郷は市街地というのが少なかったので、「部落」という言葉の方が使われていた気がする。

先に読まれた方々の評価にたがわず、部落差別の問題を非常にわかりやすくまとめて解説していると思う。このところ忙しくて読了してからブログで感想をアップするまで相当タイムラグがあるため、書かれていた内容を詳述して皆さんとこの場で共有することは難しい。それでも、部落・路地がどのような経緯で形成されていったのか、歴史的側面から説明されており、勉強になったし、部落解放運動も、中央の政党の色がそのままついた複数の団体が存在し、一枚岩でもないというのは少し意外でもあった。興味ある方は是非読んでみて下さい。

解放運動ではよく「被差別部落のことを理解していない」などと言いますが、これは先ほどもいったように土台、無理な話です。男女の例でも説明しましたが、全て理解しようというのは所詮無理なことです。もし可能だとしたら、路地の者が一般地区のことを理解しようと努めてこそ成り立つと思います。(中略)理解することは不可能であっても、理解しようと足掻くことが大切なのです。(p.192)

差別する側とされる側のいずれの視点にも立ち、その上で現実的に目指すべき着地点が何なのかも明示している。いずれにとっても受け入れやすい論点だと思う。

部落差別の問題を矮小化して差別一般の話としてここで論じてはいけないのかもしれないが、それでもどのような差別であっても、する側される側それぞれが完全に分かり合うことができなくても、理解しようと心がけていくことは重要なのではないかと思う。差別が当たり前のようになってしまい、相手のことを理解しようとすらしないという状況が、差別の状況を長引かせてしまうのではないだろうか。ジェンダーの問題にしても、カーストの問題にしても、そういう当たり前のことに疑問の目を向けないところに根の深さがあるような気がする。

とはいうものの、世代交代が進んで昔の軋轢が忘れ去られていけば、こういうのはなくなっていかないかなとも思ったりする。

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