『百瀬、こっちを向いて。』 [読書日記]
内容(「BOOK」データベースより)またまた柄にもなく、高校生活が舞台となる恋愛小説を読んだ。しかも再読。単行本の時に一度読んでいて、今回は文庫版を読んだ。仕事が忙しすぎる現実を逃避し、一時なりとも仕事のことを忘れるための小説だ。
「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは―。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった…!」恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。
同じ高校生活を扱っていても、朝井リョウ君の作品で度々感じられた刺々しさなどなく、僕らの高校生活の記憶ととてもよくフィットしたという印象がある。朝井リョウ君の作品も、中田永一さんの作品も、いずれも我が家の中高生たちに読んで欲しいとは思っているが、無難なのはどちらかといったら、中田作品の方だろう。これならうちの子供たちにも読んでほしい。こうれからこういう生活に突入できる彼らが羨ましいと思う。
長めの短編が4作品収録されている。「百瀬、こっちを向いて。」の他に、「なみうちぎわ」、「キャベツ畑に彼の声」、「小梅が通る」―――どの作品も良かったけど、やっぱり「なみうちぎわ」と「小梅が通る」だろうか。どの作品でも、主人公の背中をそっと押してくれたり、慰めてくれたりするバイプレーヤーがおり、いい味を出している。読後感は極めていい。
「キャベツ畑~」は、中田さんが実は乙一さんだということがわかってから読み直してみると、なるほどそういうことかと思える作品であった。
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