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『ねえ、委員長』 [読書日記]

ねえ、委員長

ねえ、委員長

  • 作者: 市川 拓司
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/03/09
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
いじめられっこだけど歌が上手い祐希、長距離走の得意な陸上部のわたし(『Your song』)。黒板にすら、素敵な絵を描ける彼女、浮かないように自分に嘘をつく転入生のぼく(『泥棒の娘』)。品行方正・成績優秀な学級委員長のわたし、小説を書き始めた落ちこぼれの鹿山くん(『ねえ、委員長』)。初めてぼくが、本気で恋をした君へ。書けなかったラブレターのかわりに贈るもの。『いま、会いにゆきます』、『そのときは彼によろしく』恋愛小説家・市川拓司の最高傑作。

前回ご紹介した平山瑞穂著『あの日の僕らにさようなら』に引き続き、柄にもなく高校生の恋愛を取り上げた作品に手を出した。残業が深夜に及び、睡眠時間が3時間未満というのを2週間近く続けて、体も頭も極度に疲れている時は、良質の恋愛小説は格好のドーパミン誘発剤になりえる。これだけ体力と知力とそして気力とを振り絞っても、出てきた成果品に対しては誰からかは必ず不満が出るというのがわかっていて、それを1人で被っている状態なので、気分転換が必要だし、サクサク読めて、かつちょっぴり感動を味わえる小説を読むのがいい。まあ、単なる「現実逃避」とも言うわけだが(笑)。

初市川作品である。そして、今まで読んだ恋愛小説の中でも1、2を争うほどの質の高い作品だとも思う。高校生がこんなにボキャブラリーが多くて落ち着いた大人の会話ができるとはとても思えないが、まあこれから高校生活を迎えるような中学生や現役高校生のロールモデルとしてはいい登場人物が揃っているのだろう。元々、そういう読者層を想定して書かれているのではないかと思える。少なくとも30代以上の読者を想定しているとは思えない。

3つの作品とも、高校時代の出会いと別れが、卒業から数年経過した一方の当事者の回想として描かれている。そして、20代半ばを迎えた今、まさにその相手と再会し、その関係が未来に続いていきそうな終わり方で締めくくられている。だから読後感もいいのだが、何しろ回想している当事者がまだ20代半ばなので、オヤジの読書としてはかなり違和感を持たれてしまうだろう。

こういう作品、そしてふとした出会いが長い人生の展開の起点となり得るという可能性を知っておくだけでも随分違うと思う。だから、既に高2の長男、これから高校に進む娘あたりは読んでて損はなさそう、重要な局面で一歩踏み込めるか踏み込めないかで、それが人生の大きな分かれ道になることだってあるだろう。(などと、中3時代にここぞというところで「送っていく」のひと言が言えなかった自分が、我が子に言えた義理ではないが…。)

タグ:市川拓司
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