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『銀の匙』 [読書日記]

銀の匙 (岩波文庫)

銀の匙 (岩波文庫)

  • 作者: 中 勘助
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/05/17
  • メディア: 文庫
内容紹介
なかなか開かなかった茶箪笥の抽匣(ひきだし)からみつけた銀の匙.伯母さんの無限の愛情に包まれて過ごした日々.少年時代の思い出を中勘助(1885-1965)が自伝風に綴ったこの作品には,子ども自身の感情世界が,子どもが感じ体験したままに素直に描き出されている.漱石が未曾有の秀作として絶賛した名作.改版.(解説=和辻哲郎)
この本、うちの小五の次男が連休前に図書館で借りてきた。同名のアニメの原作だと勝手に思い込んでいたらしい。借りる前にページをめくるか、裏表紙にあるリード文に目を通していればそんな勘違いは回避できた筈だが、それもせずに借出し手続きを取ってしまった次男はけっこういい加減だ。

結局、期待した中身と違っていたことがわかった途端、この本は居間に放置されるようになった。さすがにいたたまれなくなって、僕はせいぜい200頁程度の文庫本ならそんなに苦も無く読めるだろうと判断し、連休明けぐらいから読み始めた。

この作者の筆力、すごいと思う。読むだけでも作者の目の前の光景が相当詳細にイメージできる。おまけに当時の風俗習慣や、家財道具などが沢山登場するから、脚注をチェックしていくこと自体にもそれなりに民俗学的な価値もありそうだ。灘中学校の有名な国語の先生が教材に使っていたというので有名になった作品だが、単に文章の良さだけではなく、本来の国語教育の中で期待されている筈の、作品を読むことで新たな学びを得るというのにはうってつけの教材となっていると思う。

但し、全体を貫く骨太のストーリーのようなものは見つけづらいので要注意。小学校高学年の頃、著者は近所に住む同級生の女の子のことが気になるが、最後はお別れとなる。そっけないように聞こえる挨拶とともに、あっという間にいなくなる、そんな時に感じる一抹の寂しさとか、淡々とした回想の文章の中からも伝わってきそうだ。子供の感性をうまく描いているとの評価は、このあたりの文章の描き方からも来ているのだろう。でも、回想録であるからか、とかく日々のエピソードが淡々と描かれているだけで終わっている感じがする。

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