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『播磨灘物語』 [司馬遼太郎]

最近はなかなか頻繁にブログの更新ができないが、紹介したい本の読了のペースを考えたら、もう少し更新も頻繁に行なうべきなのかもしれない。そんなジレンマを解消する妙案は、シリーズの本を全巻読み切り、その上でまとめてブログで紹介することだ。

先月、渡邊大門著『黒田官兵衛 作られた軍師像』を読んでブログでご紹介したが、この本の中で黒田官兵衛を扱った歴史小説として有用な作品として、鷲尾雨工著『黒田官兵衛』と司馬遼太郎著『播磨灘物語』が紹介されていた。既に鷲尾作品は読んでいたので、次に黒田官兵衛ものを取り上げるなら早晩司馬遼太郎作品に挑戦せざるを得ないだろうと思っていた。NHK大河ドラマでも今月は三木城攻防戦や荒木村重謀反・官兵衛幽閉といった、播磨国を巡る波乱の歴史のクライマックスにあと少しというところまで来ているので、一刻も早く全巻読み切らねばと心に決め、月初から着実に読み込んでいった。

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新装版 播磨灘物語(1) (講談社文庫)

新装版 播磨灘物語(1) (講談社文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/01/16
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
黒田官兵衛。戦国時代末期の異才。牢人の子に生まれながらも、22歳にして播州・小寺藩の一番家老になる。だが、「この程度の小天地であくせくして自分は生涯をおわるのか」という倦怠があった。欲のうすい官兵衛だが、「広い世界へ出て、才略ひとつで天下いじりがしてみたい」という気持ちは強かった。
NHK大河ドラマを楽しむための、最大の読み物にようやく着手した。官兵衛の祖父・重隆の代から遡っての記述は、読者の理解をすごく助ける。第1巻は信長への謁見の仲介を頼むため、摂津の荒木村重と初めて会うところまで。大河のキャストを知っているので、場面場面での状況をイメージしつつ読み進めた。大河との違いは、本書では官兵衛が意外と早い時期にキリスト教に改宗していること、そして、信長謁見が北近江平定後と大河と比べて意外と遅い時期だったということか。ドラマの方は相当フィクションが入っているというのを本書で確認できそう。

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新装版 播磨灘物語(2) (講談社文庫)

新装版 播磨灘物語(2) (講談社文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/01/16
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
官兵衛は信長に新時代が出現しつつあるというまぶしさを感じていた。「だからこそ織田家をえらんだ」のだ。信長に拝謁した官兵衛は、「播州のことは秀吉に相談せよ」と言われ秀吉に会う。秀吉は官兵衛の才を認め、官兵衛も「この男のために何かせねばなるまい」と感じた。ふたりの濃密な関係が始まった。
ちょうど今のNHK大河ドラマがこの第2巻の半ば以降の時期を扱っているので、とりわけ興味深い読み物だった。小寺政職の優柔不断ぶり、宇喜多直家の妖怪ぶり、片岡鶴太郎と陣内孝則がよく演じているのが本書を読んでよくわかった。秀吉の信長に対する気の配りよう、武家の出でない秀吉・官兵衛コンビの播磨における制約など、表層的に大河だけを見ているだけではなかなかわからない事情がつかめる。そして福島正則や小西行長、母里太兵衛等が話の端々に登場してくるのがこの時期。いよいよ荒木村重謀反に突入するところで第2巻終了。(余談だが、NHK大河ドラマはまさにここまで描いて4月分放映を終了したところだ。)

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新装版 播磨灘物語(3) (講談社文庫)

新装版 播磨灘物語(3) (講談社文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/01/16
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
官兵衛を信長に取りついでくれた荒木村重が信長に謀反を起こし毛利についた。翻意させるべく伊丹を訪れた官兵衛は囚われてしまう。信長は官兵衛も裏切ったと錯覚し、子の松寿丸を殺せと命じた。竹中半兵衛の策で救われるが、官兵衛が牢を出た時は、半兵衛、既に病死。牢を出てからの官兵衛は身も心も変る。
荒木村重謀反から三木城攻防戦の決着、播磨国平定までが描かれる。石山本願寺、西播磨・上月城攻防戦、三木城、そして伊丹有岡城と、近畿・中国地方における毛利方の信長包囲網が機能して、播磨の秀吉軍も窮地に陥る。そんな中で、官兵衛自身も、主家である御着城主・小寺識隆とその取り巻き連中の悪知恵により、荒木村重説得のために有岡城に向かうことになり、そのまま幽閉される事態に。官兵衛が荒木に寝返ったと疑った信長は、小寺家の人質として預かっていた官兵衛の嫡子・松寿丸(後の黒田長政)を殺すよう竹中半兵衛に命じるが、半兵衛の機転により、松寿丸は半兵衛の下で匿われることに。やがて、荒木が頼みとした高山右近、中川清秀らは織田側に加担して形成は逆転。やがて有岡城は陥落し、官兵衛は1年以上にわたる幽閉生活のために膝が伸ばせなくなり、頭髪も抜けて、壮絶な風貌となる。それでも秀吉の信は変わらず、三木城陥落で、播磨全土が織田方により平定されるに至る。戦線が備前に移行してゆき、官兵衛も小寺家から離れることになる。

それにしても情けないのは荒木村重と小寺識隆である。荒木は妻子や家臣を置き去りにして有岡城を脱出してしまい、人質となった妻子は見殺しにされてしまうし、小寺に至っては家臣も含めて御着城から出奔してし、行方がわからなくなってしまう。この作品では、ここで初めて官兵衛は黒田姓を名乗ることになっている。

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新装版 播磨灘物語(4) (講談社文庫)

新装版 播磨灘物語(4) (講談社文庫)

  • 作者: 司馬 遼太郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/01/16
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
信長が殺された。秀吉は「主の仇」光秀を山城山崎で討ち、その2年後には、豊臣政権を確立した。官兵衛は自分の天下構想を秀吉という素材によって、たとえ一部でも描きえたことに満足だっただろう。この戦国の異才が秀吉に隠居を許され、髪をおろし入道し「如水」と号したのは、48歳のときであった。
備中高松城攻めから中国大返し、天王山合戦あたりが中心で、このあたりになってくると徐々に官兵衛が主人公じゃなくなっていく。播磨一国の平定から戦線が拡がり、その過程で秀吉にとっての官兵衛の有用度も微妙に変化してきたのがよくわかる。特に、天王山の決戦で明智光秀を撃破し、秀吉が信長の後継者として世に認知されるに至ってからは、秀吉の関心事は九州や東国の平定と国家運営へと移っていき、播磨を含めた中国地方の平定に官兵衛が果たしたのと同等の役割がその後の官兵衛に期待されるわけでもなくなってきたのだ。

また、そうした地域特殊的な秀吉と官兵衛の関係から、官兵衛が徳川家康との交流が殆どなかったのも致し方ないし、秀吉以外の織田家臣団の面々とも、殆ど面識がなかったらしい。自ずと秀吉の天下統一以降の後日談については、かなりの駆け足でしか描かれておらず、黒田官兵衛の領国経営についてもっと知りたければ、別の本を当たるしかない。

司馬遼太郎作品を本格的に読んだのは初めてだったが。その情報量と考察の豊かさには感銘を受けた。今のところは黒田官兵衛に特化していろいろ読み込んでいるところであるが、そのうち他の司馬作品にも挑戦してみたいと思った。


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