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『アメリカに潰された政治家たち』 [仕事の小ネタ]

最近、ブログ更新してなくてすみません。先週末、最後の更新を行なってから、昨日まで、起きている時間はほとんど仕事に追われていたような感じで、ブログ更新はおろか、新たに本を読むこともなかなかできずにいたのです。月曜から金曜までは、朝8時出勤、退社は早くても23時という生活が続きました。これほど徹底して大半の時間を職場で過ごしたのは久し振りです。しかも、金曜日に24時近くまで残業しても作業を終えられなかったので、翌土曜日も出勤しました。18時まで作業して、取りあえず今週1週間没頭していた作業に目途をつけ、ようやく職場を後にしたのでした。

そんなわけで、今週は読み終われた本は1冊しかなく、休日ですらブログ更新もやっている余裕がなかったわけです。今日(日曜日)は仕事のことは一切忘れて休養に充てておりますが、さすがにブログで長い記事は書いていられないので、先月読んでまだご紹介していない本を今後手短に2冊紹介していきます。いずれも、今週僕が職場で取り組んでいた仕事と多少関係があります。

アメリカに潰された政治家たち

アメリカに潰された政治家たち

  • 作者: 孫崎 享
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2012/09/24
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
岸信介、田中角栄、小沢一郎―日本の自主自立を目指した政治家たちは、なぜ、どのようにして潰されたのか。戦後政治史“最大のタブー”に挑み、この国の「かつてない危機」を明らかにする。
1冊目は外務省OBが書かれた本。立場としては対米自主派支持で、1960年の日米安保条約の改定直後の岸信介首相の辞任以来、対米自主派の政治家が度々失脚させられてきた歴史を描いている。彼らは、「在日米軍の削減」と「対中関係の改善」という2つの課題に取り組み、それが米国の逆鱗に触れて、CIAその他まで動員した罠にはまって失脚し、その度に対米追随路線の政治家に首をすげ替えられてきたと主張する。

こうして嵌められた対米自主派の政治家としては、鳩山一郎、石橋湛山、重光葵、芦田均、岸信介、佐藤栄作、田中角栄、竹下登、梶山静六、橋本龍太郎、小沢一郎、鳩山由紀夫らが挙げられている。逆に、対米追随路線の政治家としては、小泉純一郎、菅直人、野田佳彦らがいる。この本が書かれたのは民主党の野田政権の頃だったので、当時問題になっていたTPP参加や原発再稼働、オスプレイ配備受入れ等での菅・野田政権の姿勢も、ここに至るまでの50余年を振り返ってみれば当たり前のように思える。著者は鳩山由紀夫首相の当初言っていた「普天間基地県外移設」は悪い政策ではなかったが、対米追随派の政治家や官僚の協力が得られず、頓挫してしまったのだと述べている。

よくある米国陰謀説に近い本のように思えるが、まあ読んているとそうかもと思えたりもする。例えば、2012年8月に米戦略国際問題研究所(CSIS)から公表された「第3次アーミテージ・レポート」、先月僕も読んでみたけれど、確かに日米同盟の深化の必要性を謳っているけれど、そこには、日本はTPP交渉参加を早く正式表明すべきだと書かれ、原発についてはその増設が必要な新興国に積極的に貢献すべきだし、原発の国内再稼働も拡大していく必要があると書かれている。同盟深化の必要性を謳いつつ、書かれていることの多くは日本に対する要求であるように読めるのである。

そういう目で見ていくと、今の安倍晋三首相のされていることもまあアーミテージ・レポートに書かれた線で進んでいるようにも見える。昨年12月に政府は「国家安全保障戦略」を閣議決定し、公表したが、そこでも日米同盟はアジア太平洋地域の安定と繁栄の礎だと書かれている。TPPも、原発輸出も、原発再稼働も、集団的自衛権問題も、普天間基地辺野古移設も、皆アーミテージ・レポートに書かれた日米同盟のあり方に沿ったものといえる。

ただ、不思議なのは、安倍首相の祖父である岸信介元首相は、本書によれば対米自主派であり、そうすると孫のやっていることは祖父とは真逆だということになるのだ。勿論、岸首相は一見すると対米追従派のようにも見えるし、それが日米安保条約改定の際に日本の立場を強めようと動いたことで米国の逆鱗に触れたのだと著者は言う。安倍政権の志向していることのほとんどは確かに対米追従的であることは間違いないが、すべてがすべてそうかというとそうでもない部分もある。

それは靖国神社参拝問題と対中関係の悪化である。安倍首相は昨年末に靖国神社に参拝して、米国国務省に「disappointed」とまで言わせているし、そのことも含めて対中関係は著しく悪化させてしまった。後ほど紹介するアーミテージ元米国務次官補の著書の中では、日米中の参加国の関係は日米の一辺を短くした二等辺三角形が望ましいようなことが書かれてあったが、今の日中間の距離は異常に離れてしまっており、バランスが著しく崩れてしまっている。このことは必ずしも米国が望むものではないのではないかという気がする。逆に、安倍首相とオバマ大統領の日米首脳会談もなかなか実現せず、日米間の距離も必ずしも近いとはいえない。なんとなく、米国が考えている日米同盟の姿からすると、今の日米関係は望ましいものともいえない部分があるような気がする。

安倍首相は衆参両院で与党が安定多数を占める中で、長期政権となることが間違いないと見られているが、そんな首相がどのような形で退陣するのか、退陣する時の経緯などを見ていたら、本書で言われていることの説得力がもっと増すのかもしれない。
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