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『キレイゴトぬきの農業論』 [読書日記]

キレイゴトぬきの農業論 (新潮新書)

キレイゴトぬきの農業論 (新潮新書)

  • 作者: 久松 達央
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/09/14
  • メディア: 新書
内容紹介
誤解1「有機農法なら安全で美味しい」、誤解2「農家は清貧な弱者である」、誤解3「農業にはガッツが必要だ」――日本の農業に関する議論は、誤解に基づいた神話に満ちている。脱サラで就農した著者は、年間50品目の有機野菜を栽培。セオリーを超えた独自のゲリラ戦略で全国にファンを獲得している。キレイゴトもタブーも一切無し。新参者が畑で徹底的に考え抜いたからこそ書くことが出来た、目からウロコの知的農業論。
長年読書ブログを続けてきて、しかもその本の多くを図書館での貸出に依存していると、思ったように読書が楽しめないことも時々ある。通常市立図書館なんかだと貸出期間は2週間で、プラス2週間の延長オプション付きだ。しかし、話題性の高い本の場合、後ろにも順番待ちの利用者が控えているため、この2週間の延長が認められない。2週間の間に無理してなんとか読んでしまわないといけないが、読むのに精いっぱいで、いつもなら行なうような振り返りの機会すら作れず、慌ただしく返却を済ませるということが起きる。

そもそもどうしてそんなに読めないかというと、残業や夜のお付き合いが続いてなかなか読む機会を作れないからである。本書にしても、超多忙の時期に読み始めたのが祟り、たかが200頁前後の新書であるにも関わらず、読了するのに5日もかかってしまい、あまりいい時期の読書にならなかったのが残念だ。

内容面に触れることもなく前置きが長い書きぶりになってしまったがいよいよ本題。これは発刊当初新聞書評欄で取り上げられていた本だ。著者は繊維メーカーの営業職から脱サラして、茨城の実家で祖父が農業従事してきた土地を利用して、野菜栽培を中心とした農業をはじめて首都圏のレストランや会員向けに野菜の直販を行って好評を博しているという農家である。そういうバックグランドを知らずに書評だけ読み、僕はそのタイトルから、農家の立場からTPPについての賛否を描かれているのだろうと予想して本書を読み始めた。

でも、その内容は僕が思っていたのとはかなり違っていた。一農家の立場から日本の農業部門において言われている通説に対して批判を試みている。農業ががっちり参入障壁で覆われている過保護状況にあるという指摘には納得。著者自身の取組みに対して賛同する読者はきっと多いに違いない。

著者本人には考えもあって有機栽培を選択しているが、有機栽培へのこだわりがさほど強いとは思えない。むしろ、おいしい野菜を作るためには、野菜本来の姿で強く育つことが必要だと考え、そのためにはその野菜の旬の季節にだけ収穫できるようにして、しかも注文を受けてから収穫して、収穫から食卓に上るまでのタイムラグを極力縮減する努力をされている農家だ。有機栽培だからといって、旬の季節でもない野菜を作ってもおいしくならないと考えていて、有機万能論を取らない農家ではある。

旬の時期の収穫にこだわるから、その畑は単一作物の栽培ではなく、常時様々な野菜が栽培されているらしい。茨城ということだから大消費地に近いという利点はあると思うが、そこで僕らが通常イメージするのは例えば練馬といえば「ダイコン」というように、単一作物の大量生産・出荷であるが、どうも久松農園はそういうイメージではないらしい。
★久松農園公式HPのURLはこちらです。⇒http://hisamatsufarm.com/

それで特定の利用者の心をつかんで、おいしい野菜を提供しつつ、なんとか採算ベースに乗る農業をされている。脱サラして農業の世界に入って今のビジネスモデルを確立するまでのご苦労についても、本書の中で語っておられるが、これを読むと、農業って保護されすぎなんではないかとやはり思えてくる。

いちいち首肯させられる明言が本書には多く含まれており、本当はもっとちゃんとブログで紹介したいぐらいなのだが、図書館に返却してしまってから記憶に頼ってブログ記事を書いている状態なのでご勘弁下さい。ホント、後味のいい読書の仕方ではなかった。そのうちにもう一度ゆっくりと読んでみたいと思う。



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