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『少年剣道基本げいこ』 [趣味]

少年剣道基本げいこ―道場で習うけいこ・技術のすべてがわかる! (ジュニアスポーツ)

少年剣道基本げいこ―道場で習うけいこ・技術のすべてがわかる! (ジュニアスポーツ)

  • 作者: 榎本松雄
  • 出版社/メーカー: 大泉書店
  • 発売日: 2009/01
  • メディア: 単行本

海外駐在から帰国して間もなく3年3ヵ月になろうとしている。今の部署は赴任してきてからすぐに自分の身には余ると気づき、早々に異動希望を出した。僕の上司はそうしたミスマッチに気付いておられたと思うが、誰の思惑かは知らないがここまで異動なしで来てしまった。

今から2年前の人事面接で「あと1年ぐらいで…」と聞かされたので、僕は去年の今頃からソワソワしはじめていた。懸案の仕事は今年3月までにある程度片づけるように心掛けて、その後は月単位でワークプランを組んでそれを達成するよう努力し、毎月1日には声がかからないかとワクワクしながら会社に向かったが、毎度期待は裏切られ続け、今年は3月どころか、それからさらに半年もオーバーし、今日に至っている。

お陰で、僕は今年度初頭から道場の師範から打診されていた市の剣道連盟の役員の仕事を、「いつまた転勤かもわからないから」という理由で断りつづけてきた。だが、どうやら本当にそろそろ異動の時期が近いと先日上司から聞かされ、行き先も近場らしいので、師範には、少なくともあと2、3年は東京勤務が間違いないので、剣連の仕事でもなんでもお手伝いしますと伝えた。但し、平日の稽古は今ほどは出られないかもしれないと申し上げたところ、師範からは、「それだったら土曜日夕方の子どもの稽古の指導を手伝ってくれないかと言われた。

長々と述べてきたが、それがこの本を読もうと思った経緯に繋がっている。

一方、僕とは逆に、長年子どもたちの指導をして下さっていた七段の先生が、勤め先の関係でうちの道場を離れることになってしまったという事情もある。今まで僕はわが次男も参加している道場での子どもの稽古を最初から最後まで見学したことがないため、➀子どもに対して、どういうポイントをどのように説明したらいいか、②子どもが飽きないように、練習のパターンにどのようなバリエーションを付けたらよいか、という2つの点がよくわからない。

そういうのを解説してくれている本が我が家に1冊あったらいいと思い、書店で購入したのがこの本である。

著者は東京・練馬の「東松舘」という道場の副館長である。度々全国制覇を為し遂げるなど、東松舘は東京都の少年剣道をリードする最強道場である。インターハイの東京都予選で好成績を収めている高校剣士には、東松舘出身者がかなり多いと聞く。

ただ、東松舘出身だからといって、皆が皆東松舘で剣道をはじめたというわけではないらしい。他の道場で剣道をはじめ、そこで良績をあげた少年剣士が、さらなるレベルアップを目指してその門を叩いてくるのだという。実力のある少年剣士が住み慣れた環境を飛び出してより高レベルでの競争を繰り広げる環境に身を晒すのは本人にとってはいいことだと思うが、元の道場の関係者から見れば、せっかく育てた剣士がそうして飛び出していってしまうのは、複雑な心境であろうと想像する。

逆に、有望な剣士を受け入れる東松館の側からすれば、ある程度は完成している子をさらに高いレベルに引き上げてあげるための稽古にある程度は専念できるメリットもあるだろう。

そうした意味では、基本稽古よりもある程度の力を持った子どもをさらに強く育てていくような稽古のバリエーションについて、この本ではもっと解説してほしかった。単に基本打ちの基礎の基礎を解説するだけでなく、攻めて中心を取って、そして有効打突を得るにはどうしたらいいのか、もっと言及してほしかったという気がする。勿論、基本打ちの解説の中にも、普通の解説に付加価値を付けるようなキラッとした一節があったりもするのだけれど。

そういうことがわかった上で、この本はお金を払って購入した。

袴や道着のたたみ方や、剣道具のしまい方、手拭の頭へのの巻き方などは、少年剣道の解説書でも意外と詳述されておらず、わかったようなわからないような状態の中で、子どもたちは稽古している。子どもも入門して2年3年と経過するうちに、今さら先生にも聞けない、周囲のやり方を見ながら自分なりのやり方で適当に片づけておくというケースが多くなる。そのために、例えば袴の帯をどう纏めておくのかよくわからなかったりする。そうした、大人になって「今さら訊けない」幾つかの疑問について、本書はカラー口絵入りでかなり丁寧に解説されている。そのことが、本書を購入する決め手となった。大人の僕にも十分参考になった。

勿論、我が家で子どもが読むというのが本来の使い方なのであろうから、本書は居間に置いて、うちの次男でも時々は目を通せるようにはしておきたい。


ところで―――――。

今年7月25日付で全日本剣道連盟から出ている通達「剣道試合・審判関係について」で、関係者に周知徹底を求めている項目の1つに、「正しい剣道用語の使用について」というのがある。次のような用例が挙げられている。
「試合場」←✕「コート」
「「名札」←✕「ゼッケン」、「垂れネーム」
「中結い」←✕「中〆」
「剣道着」←✕「稽古着」
「剣道具」←✕「防具」
ついでに言うと、試合で背中に付ける紅白の「タスキ」も、正しくは「目印」というんだとか。試合運営上の話はともかく、ここでの最大の衝撃は、全日本剣道連盟が「防具」という言葉の使用を否定していることだ。いろいろな剣道の解説書が世に出ているが、そのほとんどが「防具」という言葉を当たり前のように使ってきた。本日紹介した本にしたって同様だ。それを今さら否定するなんて、子どもたちにどう説明したらいいんだと途方に暮れてしまう。

逆に言えば、出版社が「防具」という言葉を当たり前のように使っているのだから、何の前触れもなく、過去にこの言葉の使用が我が国の剣道界の中でその是非をちょっとでも議論されていた形跡もない中で、いきなりの用例厳格化をされたら、たまったもんじゃない。損害賠償を請求されたらどうするんだろうか。

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