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『野菊の墓』 [読書日記]

野菊の墓 (新潮文庫)

野菊の墓 (新潮文庫)

  • 作者: 伊藤 左千夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1955/10/27
  • メディア: 文庫
内容紹介
政夫と民子は仲の良いいとこ同士だが、政夫が十五、民子が十七の頃には、互いの心に清純な恋が芽生えていた。しかし民子が年上であるために、ふたりの思いは遂げられず、政夫は町の中学へ、民子は強いられ嫁いでいく。数年後、帰省した政夫は、愛しい人が自分の写真と手紙を胸に死んでいったと知る。野菊繁る墓前にくずおれる政夫……。涙なしには読めない「野菊の墓」、ほか三作を収録。
何なんでしょうかこのセレクション!いきなりの純文学だ!

僕が小学校から高校までを過ごした12年の間に、本当なら読んでおいた方が良かった作品というのが幾つかある。学校推薦で早めに大学合格をいただいた後、担任の先生だったか、現代国語の先生だったか、親だったかは定かではないが、大学に行ってしまうとどうしても読む機会がないであろう文学作品を、今のうちに沢山読んでおくよう言われ、僕はドストエフスキー『罪と罰』だの、吉川英治『宮本武蔵』だの、いろいろ読んだが、わずか3ヵ月ばかりの間では読める本の点数は限られていた。そして、案の定、大学入学以降、社会人になって今日に至るまで、そうした作品を読む機会は極めて少なかった。

今、僕は朝4時台でジョギングないしウォーキングを行なうのが日課になっている。ポケットラジオでTBSラジオを聴きながらのジョギング/ウォーキングで、平日であれば4時から5時までの時間帯はTBSのベテラン局アナが日替わりパーソナリティを務める『ラジオ・パープル』という番組を聴くことができる。さすがにベテラン揃いで、落ち着いたトークと1970年代の懐かしの歌謡曲が聴ける、僕的にはお勧めの番組だ。

その中で、金曜朝の担当は浦口直樹アナ。1980年代のTBSテレビの人気番組『ザ・ベストテン』で追っかけマンを務めていた方で、特に芸能界ネタの多い番組内容になっているが、僕が密かな楽しみにしているのは、4時台後半に浦口アナが10分程度で紹介する、日本と世界の名作である。

僕がこの番組を聴くようになったのは5月下旬からだが、これまでの林芙美子『浮雲』、ヴェルヌ『十五少年漂流記』、H.G.ウェルズ『透明人間』、コレット『青い麦』等が紹介されている。これらの作品をご確認いただくとおわかりになるかと思うが、ちょいとばかし淫靡な、あるいは甘ずっぱいエピソードが含まれた作品が多いのが特徴的だ。考えてみれば、中学生や高校生であっても頬を赤らめて、妄想を膨らませないと読めない、堂々と他人に「読んでいる」とは言えない作品もあり、僕が高校時代に戻っても、改めて読んでいたかどうかは怪しい。

そんなわけで、『ラジオ・パープル』のフォローとして、第一弾で『野菊の墓』を読むことにした。

断わっておくが、『野菊の墓』は「ムフフ」系の作品ではない。僕らが高校生の頃に、あの松田聖子の主演で映画化もされている。(その前には、山口百恵主演で1977年にテレビドラマ化もされている。)そういう意味では、僕の中学高校時代、『野菊の墓』はわりと自分から近いところにあったと言える。それでも読んでなかったので、今回は落し物を拾うような感覚でセレクトしたのである。

あらすじは冒頭の内容紹介の通りで、結局は実らぬ恋に終わってしまう。松戸から家を出て東京の学校に進学する政夫は、市川からお手伝いに来ていた民子には、里帰りするたびに会えるだろうという軽い気持ちで東京に出るが、その間に民子は断れない縁談を受けることになり、結果二度と会えないことになってしまう。次のチャンスがあるに違いないと思っていると、そんなものは二度と訪れない。今を大事にしないと後できっと後悔する。そんなことを読みながら感じました。僕自身にとっても、これは中学・高校時代の苦い教訓です。

先週木曜日から昨日まで、僕は子供2人を連れて里帰りをしていた。里帰り期間中も朝は4時に起床し、4時台でジョギングを開始し、昔僕が通った小学校や中学校、そして、友人や気になっていた子の家の前を走ってみたりした。更地になっていたり、新しい家が建っていたところもあったが、昔と同じ建物が残っていたところもあった。

中1の時、クラスで気になっていた子がいた。仮にY子としておこう。そのY子の友人が僕に気があり、Y子はその子と僕をくっつけようといろいろ画策をして、2対2で隣りの大きな町まで遊びに出かけたこともあった。でも、僕自身はむしろそのY子の方が気になる存在だった。仲は良かったので、何かの機会にY子の家に上がり込んで、部屋にまで入ったこともある。女子の部屋に上がり込んだのは、中学、高校の6年間を通じてもこの1回しかない。そんなY子の自宅も、昔と変わらぬ姿で残っていた。

そこまでのことをしておきながら、僕は自分の気持ちを伝えられなかった。「Sanchaiクン、誰のこと好きなん」と直接聞かれたこともある。それなのに、僕は「おまえや」と言えず、隣のクラスの別の子の名前を口に出してしまった。しかも間が悪いことに、その隣のクラスの別の子というのが、Y子のご近所だった。Y子はまたご丁寧に僕とその子の間を取り持とうと変な行動を取り始め、恥ずかしくなった僕は「いい加減、やめてくれ」と言って、お陰でY子との関係は急速に冷えていった。中2になって、クラス替えで別々のクラスになって以降、中学を卒業するまで、僕がY子と言葉を交わしたことは一度もない。今思い返してみても、Y子はかなり高い確率で僕のことが好きだったのではないかと言える。僕自身が最後の決めゼリフが言えなかったのが、二度と会えない結果に繋がっている。そういう経験、中学高校時代は何度かしている。そして、その苦い経験を克服すべく、大学時代は思い切って気持ちを伝える行為に出たりしたこともあるが、見事に玉砕したこともありました(苦笑)。

あの頃は、若かったなぁ、擦れてなかったなぁ。
本書を読みながら、青臭かった昔の自分が妙に懐かしく感じられた。

*TBSラジオ『ラジオ・パープル』のブログはこちら。
 http://www.tbsradio.jp/rp/
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