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『吉野朝太平記』(2) [読書日記]

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吉野朝太平記〈第2巻〉 (時代小説文庫)

  • 作者: 鷲尾 雨工
  • 出版社/メーカー: 富士見書房
  • 発売日: 1990/12
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
高師直が引き寄せようとするのを敷妙は身をくねらせて拒んだ。四条畷の激戦で楠正行、正時兄弟の首を討ち取った師直は大和から吉野へと兵を進めていた。吉野朝廷が穴生へ御動座しているとも知らずに。もぬけの空の吉野山の炎があがった。東条城で正儀は敵陣の意表をつく策略をめぐらせていた。謎の町人唐土屋、楠八忍衆の変幻極りない活躍がいよいよ面白い第2巻。直木賞受賞作。
ちょうど平成25年度上期の直木賞受賞作が桜木紫乃『ホテルローヤル』に決まったと発表された直後であるが、第2回(昭和10年下期)の受賞作が『吉野朝太平記』なわけです。単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品ということであるが、復刻文庫版ですら五分冊になっているこの超長編、よく半期の受賞作品に選ばれたなと思う。大衆文芸作品ということは確かに間違いないが。

四条畷合戦で楠木正行・正時兄弟が壮絶な戦死を遂げたところで終わった第1巻に続き、第2巻はいよいよ楠木三兄弟の三男・正儀が河内楠木党の当主として登場する。戦場での戦上手だった父・正成とも違い、虎夜叉・正儀は忍びの者や色仕掛けも用いて、もっと壮大な謀略を張りめぐらす。

第2巻は、四条畷合戦での勝利に驕った高師直をはじめとした高一族が滅ぼされるまでが描かれている。先ず、第1巻では足利直冬の情婦として直冬を操った美女・敷妙が、正儀の指示で、わざと高師直邸の前で体調を崩したふりをして、邸内に拉致されるところから始まる。師直は、第1巻では吉野南朝方に仕える弁内侍の誘拐を企てるが、楠木正行によってその企てが失敗に終わり、その腹いせもあって河内を攻めた。四条畷の勝利で楠木打倒は果たしたが、弁内侍を得ることは叶わず、その情欲の矛先を噂の美女・敷妙に移したのだった。敷妙はここで師直をその知性をもって虜にし、師直の吉野総攻撃の時期を少しでも遅らせようと画策。南朝はその間に吉野を退去し、賀名生(あのう)に無事移ることができた。

吉野がもぬけの殻になっていたことを知り、激怒した師直は、吉野山を火の海に陥れる。さらに賀名生攻撃に備えて軍勢を待機させるが、北朝方に包囲されていた筈の河内・東条城から密かに掘られた隧道を抜けて突如現れた楠木正儀の軍勢の夜襲を受けて総崩れとなり、賀名生攻撃の軍勢立て直しがにわかには困難な状況に陥った。

これで賀名生はひとまず安泰。正儀の次の策は、敷妙を通じて師直と足利直冬の対立を煽ることだった。この対立は師直と直冬の義父・副将軍足利直義との対立としてエスカレート。一時情勢不利に立たされて出家まで迫られた直義は、密かに南朝方と通じ、南朝に降伏する代わりとして尊氏討伐の綸旨を南朝から受けることになった。九州・中国から東上を目指す足利直冬軍、越前・越後から京攻撃を目指す桃井・上杉軍、直冬軍を迎え撃つために西に向かった尊氏と高兄弟の軍勢は負け戦を重ね、京を守っていた足利義詮の守備軍は東からの攻撃に晒されて都を放棄して尊氏に合流する。この間、兄・尊氏と弟・直義との間で密かに和平協議が諮られ、高兄弟が出家することで合意するが、復讐に燃える上杉の軍勢はこれに納得せず、高一族を滅ぼす。

これらの動きは、まるで正儀の掌の上で踊らされるが如くで、正儀は各武将の動きを読み、先手先手を打つ。南朝に降りた足利直義が、正儀の首を手土産に北朝に寝返るつもりであることも予め予想し、次々と裏をかいて直義を苛立たせる。この辺は、第3巻で師直なき後の北朝方のライバルが足利直義であることを予感させる。

この混乱の最中、絶世の美女・敷妙は河内の正儀の下に帰還を果たす。正儀は南朝方の中宮と北畠親房の薦めもあって伊賀局という正室を迎えている。伊賀局も美人は美人だが相当大柄で男勝りの怪力を持つ侍女として描かれている。まあこの対比もなかなか面白い。いつの世も、モテる奴は羨ましい。

そんなあらすじの第2巻です。それではまた、第3巻の紹介をお待ち下さい。

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