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『つながり』 [仕事の小ネタ]

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

  • 作者: ニコラス・A・クリスタキス、ジェームズ・H・ファウラー
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/07/22
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
肥満も性感染症も笑いもすべて伝染する!?ハーヴァード大学医学部・教養学部教授とカリフォルニア大学の政治学者が提示する、クラウド時代の社会的ネットワークの姿。
いろいろ本を読んでいて、この本は含蓄に富んでいるので手元に置いておきたい、そのためには図書館から借りてくるのではダメで、中古でもいいので1冊購入したい、そう思うことはよくある。手元に置いて、読みながらマーカーで線を引きまくる。そんな使い方ができたらいい。でも、その本が比較的最近発刊され、まだ中古本が市場に出回っていない場合はかなり躊躇する。ましてやそれが新刊価格で3000円もするような高価な本である場合、買わない意志が買いたい欲望を抑え込んで身動きがなかなかとれなくなる―――そんな心の葛藤を、この本を巡っては繰り返しているところだ。

「肥満が伝染する」と聞かされると、たいていの人は首を傾げるだろう。肥満は感染症じゃないからうつらない。でも、よくよく考えてみて欲しい。デブの兄貴がいたら、その兄弟も同じような体型をしているというのは、テレビのバラエティ番組ではよく見られる傾向だし、デブの友人にはデブが多いというシチュエーションも多い。女性芸人の森三中なんて、3人ともポッチャリ系だ。「肥満が伝染する」と言われると違和感があるが、「類は友を呼ぶ」と言われると、僕らは何の違和感もなくそうした考えを受け入れるだろう。ここから得られる含意は、父親がメタボだと家族もメタボになる可能性が高いということかもしれない。最近ウエストがパツパツになってきた妻を痩せさせたいなら、先ず自分自身が率先して痩せなければいけないということかも…。

同じ理屈でいけば、「バカは伝染する」、或いは「勉強する努力家は伝染する」とも言えるかもしれない。子供たちに勉強をもっとさせたいなら自分自身がもっと勉強すべきだということであり、子供たちに本を読ませたいなら親が本を読まないといけないということだ。そして、子供たちの中に勉強のなまける子を作らない努力も求められる。長子が勉強をしっかりする努力家になってくれれば、弟妹もよく勉強するようになるということだ。

一見荒唐無稽に聞こえるような「伝染」を巡る言説も、言われてみればそうかもしれないと思わされるものが中にはある。本書はそうした事例を幾つか紹介している。膨大な数の実験に基づいて書かれた先行研究をしっかり読み込み、独自の研究の成果も加えて、今どこまでがわかっていて、どこからが未解明なのかをはっきりさせている。

「肥満」と同様、感情の伝染、特に幸福感や孤独感というのも伝染するのだと著者は述べる。

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1.「幸福」の伝染(pp.74-75)
感情の伝染が起こるには、直接の交流がとても重要であるらしい。私たちはこの点に鑑み、社会的な交際相手の幸福が人の感情に及ぼす影響は、相手との距離によって左右されるという仮説を立ててみた。(中略)私たちの発見によれば、1.6km以内に暮らす友人が幸福になると、あなたが幸福になる可能性は25%増す。対照的に、1.6kmより離れて暮らす友人の幸福には何の影響もない。同じように、同居している配偶者の一方が幸福になると、もう一方が幸福になる可能性も高まる。

ところが、同居していない配偶者(離ればなれになっているため)は、おたがいに何の影響も及ぼさない。1.6km以内に暮らす兄弟姉妹が幸福なら、あなたが幸福になる可能性は14%高まるが、もっと遠くに暮らしている場合は大して影響しない。隣に住む人が幸福だとあなたの幸福のチャンスも増すが、少し離れて住んでいる人だと(たとえ同じ街区だとしても)あまり関係ない。

こうした全ての発見が示しているのは、お互いの感情から影響を受け合う人たちの近接性が重要だということである。隣の住人が及ぼす影響力を考えると、深い個人的つきあいに劣らず、顔をあわせての交流が幸福の広がりを左右することがわかる。

従って幸福は、個人の経験や選択の結果にすぎないものではなく、人の集団の特性でもある。個人の幸福の変化は、社会的つながりを通じてさざ波のように広がり、幸福な個人と不幸な個人の群れを動かす。

2.「孤独」の伝染(pp.80-81)
孤独は三次の隔たりまで広がる。ある人の孤独は友人の孤独から影響を受けているだけではない。友人の友人、友人の友人の友人からも影響があるのだ。ネットワーク全体を検討してみると、直接つながっている人(一次の隔たりがある人)が孤独であれば、あなたは約52%余計に孤独を感じるらしいことがわかる。二次の隔たりがある人の影響は25%、三次の隔たりがある人の場合は約15%である。四次の隔たりになると影響は消える。

私たちは社会的ネットワークのへりで起こる奇妙なパターンも観察した。ネットワークの周縁部にいる人は友人が少ない。そのため孤独なのだが、一方で残っている数少ない絆を断ち切ってしまう傾向も持つ。だが、そうする前に自分と同じ孤独感を友人に伝染させることがある。すると、そこから新たなサイクルが始まってしまうのだ。こうした強化効果が意味するのは、社会的な組織は、セーターの袖口の毛糸がほどけるように端からほつれてしまいかねないということである。社会に広がる孤独感との戦いに心を砕いているなら、社会的ネットワークの周縁部にいる人を積極的にターゲットとし、彼らのネットワークの修復を手助けすべきである。こうした人たちを助けることによって、孤独に対する防護壁を築き上げれば、ネットワーク全体を崩壊から守れるのだ。

3.婚活への示唆(pp.94-96)
相性のいい人が100万人いるとしても、世界全体で考えれば6000人に1人にすぎない。行き当たりばったりに相手を選んでいたら、ものすごい数のデートをこなしつづけなければならない。このやり方ではぴったりの相手に出会うことは絶対にないというのが、がっかりするほど野暮な結論である。(中略)だが、社会的ネットワークの驚くべき力は、似た者同士を引き合わせ、運命のパートナーを同じ部屋に招き寄せる。社会的ネットワークがより大きく、より広くなるほど、パートナーにとっては選択肢が増え、友人や友人の友人を介してふさわしいパートナーに関する情報の流れが加速し、パートナー探しはいっそう容易に(より効率的に、より正確に)なる。こうして、社会的ネットワークは最終的に「より良い」パートナーや配偶者を送り届けてくれるのだ。

そもそもパートナーの選択は、ネットワークの絆を生み出すのと同じ社会の力によって制約されているのだ。誰と友人になるか、どこの学校へ通うか、どこで働くかといったあらゆる選択が、一定の社会的ネットワークに占める自分の位置に大きく左右される。人々がどこに目を向けようと、ネットワークは似た人たちを結びつけるように機能する。夫婦は似ていることが多いという事実が、人はパートナーに偶然出会い、選ぶのだという考え方の誤りをはっきり証明しているのである。

4.メタボ克服への示唆(pp.164-165)
ある実験では、被験者が次の三種類の減量介入プログラムの1つに無作為に参加することになった。1人で減量に取り組む、4人1組のチームに加わる、4人1組のチームを自分たちで結成してそのメンバーになる、の3つである。すると、グループのメンバーとしてプログラムに参加した場合のほうが、体重は33%余計に減り、減った体重を維持できる期間も長かった。

他の実験でも、健康現象が人から人へ伝わる様子が確認されている。(中略)最も重要なのは、治療を受けていない配偶者が治療を受けている配偶者の接触行動を真似ることだった。

私たちは頭の中でつながっている著名人より直接結びついている人に影響されやすい。ネットワーク・サイエンスは、影響力のある人を見つけるための良い方法を与えてくれる。つまり、ネットワークの中心に位置するハブを見きわめればいいのだ。これをうまく実行するには、まずネットワークの全体図を描かなければならない。たとえば、高校や職場で喫煙を減らそうとしているとしよう。従来であれば、全員に禁煙のメッセージを伝えたり、特に危険が高そうなグループに働きかけたりといった方法がとられた筈だ。後者の場合、こうした人たちはとりわけ不健康だったり、既に喫煙者だとわかっていたりするので特定できる。だが、新たなやり方では、社会的ネットワークのハブを見つけ出し(この人たちは不健康でも喫煙者でもない場合がある)、そこを狙って禁煙のメッセージを伝えることになる。

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本当の感染症の場合は、誰と誰がどのように繋がっているのか、その社会的ネットワークを描いて、そこから感染源の特定や、今後の感染拡大リスクの予測を行ったりすることは既に行われているが、アイデアや情報の効果的効率的な伝達にも、この社会的ネットワークの考え方が使えるというのが新鮮だった。

ブータンの人々が幸福だと言っているのは、その社会的ネットワークのハブになっているような人が幸福感を感じているのが人と人との繋がりを通じて伝播していった結果なのかもしれないし、ネットワークの中で孤独を感じているような人への積極的な働きかけが必要だというポイントは、ネットワークの維持発展を願っているような立場の人にとっては、どこにどう働きかけていくのかを考えていく上で、重要な示唆を与えてくれているように思った。

そして、何よりも、自分がどうやって今の妻と出会ったか、親交を深めて交際するに至ったのかを振り返ってみるいいきっかけにもなった。僕らの場合は共通の趣味があったわけではないが、同じ会社で、同じ年度の社会人採用入社で、その上部署は違ったけれども仕事上の接点があったというところから始まっている。巷では婚活パーティーなどいろいろイベントも行われるが、元々何もつながりのなかったところにいきなりつながりを作るというアプローチは結構しんどいんじゃないかなと思ったりする。趣味でもスポーツでも社会活動でも何でもいいので、先ずは居心地のいい既存のネットワークから一歩足を踏み出して社会との新たなつながりを作っていく取組みからはじめていく、その延長線上で、自分に合ったパートナーは見つかるのかなという気がする。

7月9日は僕達の18回目の結婚記念日であった。この本自体は少し前に読了していたけれど、結婚記念日を機に紹介してみることにした。
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