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『不連続の日本経済』 [読書日記]

不連続の日本経済

不連続の日本経済

  • 作者: 若林 栄四
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2012/12/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
相場の“時期と水準”をピンポイントで的中させ続けてきたゴッドハンド・若林栄四が、独自の黄金分割理論と、歴史観に裏付けられた相場大局観に基づき、低迷を続けてきた日本経済の大転換を予測。大転換の先にある2013年からの黄金の投資戦略。
このブログでは今までに書いたことがないが、僕は今から20年以上前に某民間銀行に勤めていた頃、ディーリングルームで外国為替のディーリングをやっていたことがある。成績があまり良くなかったので、あまり胸を張って書けない経歴なのですが。

当時、「マッドドッグ」若林がセミナーで何か喋ると相場が動くことが実際によくあった。僕のような下っ端のディーラーがセミナーに行かせてもらうことは一度しかなかったが、先輩ディーラーが出かけていった後の相場が突如乱高下し、「どうも若林氏が何か言ったらしい」とわかるということが何度かあった。

その頃は既に東京銀行を離れられていたそうなので、セミナーで「口先介入」してもそれでご本人が儲けていたわけではないが、東銀で華々しく活躍されていた頃であっても基本はデイトレードではなく、ある程度中長期の相場の方向性を予測し、ドルのロング(買い)かショート(売り)のポジションを積み上げてじっと待たれていたようだ。

それから20年も経過すると、昔よりも相場のトレンドがいっそうはっきりとつかめてくるから、こういう本が書けるようになるのだろう。政権交代があってから、円高ドル安のトレンドが逆転して中長期では円安ドル高方向を目指す相場の展開になってきたと思ったし、ちょうど若林氏がこの本を出した頃、ご本人がテレビ東京の「ワールド・ビジネス・サテライト」に出演されて、その相場観を語っておられたのを見て、久し振りにマッドドッグの相場観を学んでみたくなって、本書を購入することにした。

今回はちょっとまとめるのが面倒くさいので、引用中心で本書をご紹介していきたい。

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株式相場からくる最大のデフレ波はすでに2009年で終わっている(p.23)

360円の固定レートが崩れた後は、何度かの短期間のドル戻り高局面を除き、基本的にはドル安・円高という流れが続いてきた。
 そして1971年8月から40年半たった2012年2月、ドル・園相場は76円の2番底をつけた後、3月には84円まで戻り高を演じ、ドル安・円高という流れの終焉を印象づけた。
 この2012年2月に日柄は1998年8月のドル戻り高ピーク147円62銭からの13年6カ月(162カ月目)でもあった。
 さらに2012年2月は直近のドル高値である2007年6月の124円14銭から19四半期目である。先ほど、ひたすら相場が走った場合、19週、19カ月、19四半期、19年で走りきると申し上げたが、まさに124円から76円に向けてひたすら走り続けた19四半期であった。
 ありとあらゆる黄金分割の日柄が詰め込まれた2012年2月が円高の終わりでなくて何なのか。
 以上の分析からみて、すでに円高は終焉しているというのが筆者の見方である。(中略)
 しかし、為替レートは相場なのである。経済の変数ではない。(pp.29-34)

 インフレ時代はカネの価値の下落に対する防衛手段として投資することが大事である。この投資は長期的には必ず報われる。
 一方、デフレ時代は何もしないことが大事である。何もしないことが最大の美徳である。しかしこれは資本主義の退廃であり、放置すれば重大な結果を招来することになる。(p.57)

日本の株式市場はこうしたグローバル化の悪影響からどのようにして脱出できるのだろうか。
 まず大事なこととして、投資家が買うから上がるのではなく、相場が上がるから投資家が買うのだ、というポイントを理解していただきたい。
 したがって、デフレ経済に呻吟している株を誰が買うのか、という評論家的な発想で考えるのは間違いで、誰が買わなくても日柄がくれば株は上がり始め、株が上がり始めれば投資家が買い始めるのである。(p.92)

 そういう前提で話をすると、2015年という年は、1965年からの50年の日柄を踏んだ年であり、相場が加速度的に上昇する起点となるタイミングである。
 相場は誰が買うのでもなく、突如としてはっきり上昇に転じるのである。(中略)
 外国人投資家だけではなく日本の機関投資家も同じプロの投資家であるから、いままではROEなどを経営者の成績の指標にしてきたが、相場が上がり始めたら、すべてを放擲して株を買わざるを得ないのである。理屈は後回しである。
 それで相場がさらに一段と上昇してくると、今度はアマチュア個人投資家の登場である。
 そうなってくるとROEなんてものは吹っ飛んでしまう。とにかくブルマーケットに入っているわけであから、その相場に乗ることが大事である。(pp.94-95)

来るべきリフレへの道筋も、すべてのリフレ波が一斉にやってくるのではなく、駅伝風にタスキを渡しながらリフレが進行する構図が考えられる。
 筆者の考えではリフレの第1走者は円安である。
 ドル・円為替相場は360円の固定相場から、75円台の円高まですでに価格的にも走りきっているうえに40年半の日柄も踏んでいる。
 2011年10月に75円台で円の天井をみた相場は、最初のダッシュで2015年の春に向けておそらく120~130円に向けての大幅円安になるだろうとみている。
 なぜ円安になるのかといえば、「円高が終わったから」というのがいちばん簡単にして要を得た答えである。相場は行き着くところまで行ってしまえば勝手に反転し逆方向に走るものなのである。(p.101)

 相場的にいうと、「日柄待ちをしている」とでもいえようか。すでに大きな日柄は到来し、ドル底打ちは済んでいるが、もうひとつ大きな、いってみればゲーム・チェンジャーが必要なようにみえる。
 そのゲーム・チェンジャーはおそらく米国でインフレ懸念が出てくることではないかと考えている。つまり米国金利の上昇である。
 では米国金利はいつから、緩和態勢からインフレ懸念態勢に変わるのか。
 大局でそれをとらえようとすると、2013年後半ではないか。
 大恐慌の株最安値40ドルは1932年7月に記録されている。日本の2003年に当たる、恐慌の最悪期である。そのポイントからの81年目(162年の半分)が2013年7月である。ITバブル頂点はNYダウで2000年1月、SP500で2000年3月となっており、そのポイントからの162カ月目(13年半)は2013年7~9月となっている。(中略)
 ということは2013年後半からドルがバーティカルに上昇する局面に入る。
 バーティカルな相場の発射台は85円あたりだろうと考えられる。(中略)
 さて2013年後半に発射されたロケットはいつどこまで上昇するか。
 長期的な見通しでは2015年190円とみているが、短期的には2015年第1四半期までの上昇ではないかと考えている。(中略)85円が発射台だとすると黄金分割のペンタゴンを使った横重要値36円を加えて2015年1~3月で121円あたりが目標値となりそうである。(pp.163-165)

 いまから20数年前、黄金分割と正五角形(ペンタゴン)を使った相場分析の手法に巡り合った。
 以来、その研究を重ねてきた結果、相場の原理は黄金分割しかないということを確信するに至った。相場とは価格だけではなく、日柄がそれ以上に重要である。最近では、天底を打つ日柄、あるいは相場が加速する日柄など、「相場の構造」というものが、ついに徐々に見えつつある。(p.184)

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正直なところ、狐につままれたような気持ちである。「相場は生き物」とよく言われていて、何か国際情勢を動かす出来事が起こった時、常識的に考えれば「有事のドル買い」で円安ドル高に行くだろうと瞬時に判断してドルを買ったところ、逆にドルの手仕舞い売りを浴びせられ、一気に円高ドル安方向に相場が動いたという経験を僕自身がしたことがある。その出来事がいつ起こるかいつ起こるかと待ちわびること半年以上、ドルのロングポジション(買い持ち)が積み上がりすぎて、それまでの間にどんどん円安ドル高が進んでいたので、実際に期待されていた出来事が本当に起きた時、期待達成感でポジションを手仕舞う動きが一挙に加速した。

この本に書かれていることで、ドル円相場は85円どころかすでに一度は100円台をトライしに行くところまで円安ドル高に進んでしまった。まあ、これも若林氏の影響力だと言えないこともないが、こうなると2015年第1四半期をターゲットにした相場も上方修正されるんだろうか。当面は今年7月の米国経済が要注目ということになる。

こういう、将来予測をしている本については、10年ぐらい後になってみて、結局その予測が当たっていたのかどうかを振り返ってみるために再読するのもいい。


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