『くちぶえ番長』 [重松清]
内容(「BOOK」データベースより) 小学四年生のツヨシのクラスに、一輪車とくちぶえの上手な女の子、マコトがやってきた。転校早々「わたし、この学校の番長になる!」と宣言したマコトに、みんなはびっくり。でも、小さい頃にお父さんを亡くしたマコトは、誰よりも強く、優しく、友だち思いで、頼りになるやつだったんだ―。サイコーの相棒になったマコトとツヨシが駆けぬけた1年間の、決して忘れられない友情物語。重松清の作品はたくさん読んできたが、小学生が主人公の作品はさすがに自分の年齢も考えたらなかなか読みづらい。何年か前には発表されているものでも、実はまだ読んでいないというのが何冊かはある筈だ。
『くちぶえ番長』もそんな1冊だった。それを今回読むことになったのは、小学4年生の次男が学校で読みはじめたからだ。しかもそれを次男は自慢げに僕に語った。僕が重松作品を片っぱしから読んで来たというのを、どうして次男が知ったのかはわからない。勘のいい子どもなので、そういうところは気付いていたのだろう。重松作品を読みはじめたことをオヤジに知らせたくて、先生に許可を得て学校から現物を持ち帰ってきた。彼が寝ている間に、僕もコツコツ読んだ。結局僕の方が先に読み終わってしまった。
小学生読者には受ける作品だというのは間違いない。本をあまり読まないうちの次男であっても、きっと夢中になって最後まで読み切れることだろう。うまくいけば、うちの娘が小3で『西の魔女が死んだ』を読み切ったのに続き、次男にとっての最初の文庫本読了となるだろう。
ただ、お父さんお母さんがあまりにもいい人なんで戸惑ったりもした。どう考えてもこの作品の舞台は1970年代前半なので、主人公ツヨシのお父さんお母さんは戦前生まれでしょう?高度成長期に結婚し、子どもが1人の核家族という設定はまあわからないでもないが、子どもにとって大切な日だからというだけの理由で会社を休んで家にいるような、家族想いの父親が、戦前生まれの世代にいるとはあまり思えないのである。子育ては基本的に母親に任して自分は仕事に専念していたような人たちだろう。
ツヨシの家族構成が核家族であることも、ツヨシが1960年代前半の生まれだと考えるとちょっと違和感があるのも事実だ。この作品の舞台はツヨシが親の代から暮らしている地方の都市だと思われるが、それならツヨシの祖父母が登場してもおかしくないのではないか。
今はアラフォーで作家をしているツヨシの、小学生時代のお話である。なのに場面の設定は今の小学校のイメージに近い。従って、今の小学生読者なら入って行きやすい話だと思う。こうやって、うちの次男が重松作品に興味を持ってくれたのが嬉しい。重松作品をエントリーポイントにして、もっとたくさんの本を読んでいってくれたらと思う。
さて、息子はどんな感想を述べるんだろうか。楽しみである。
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