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『貧乏人の経済学』著者、インドを語る [インド]

インドの大衆週刊誌INDIA TODAYの2003年4月1日号に、マサチューセッツ工科大学のアビジット・バナジー教授のインタビューが掲載されていた。「貧困者はゾンビではない(The poor are not zombies)」と題したこのインタビューは特集記事の一環で、それほど長くないので、全文訳して紹介してみようと思う。

Q:インドは現世代のうちに貧困撲滅することができるでしょうか?どのようにしたら貧困撲滅できますか?

A:私たちが貧困撲滅できないという理由などありません。それはリソースの問題などではなく、実際に現場で機能する政策の設計の問題です。私達は何人かの専門家とともに政府のオフィスの中で座って政策設計を行いますが、それを実地で試してみるようなことを決してしません。そして、失敗を絶対認めません。全国農村雇用保証制度(NREGA)の基本に立ち返ってうまくいくことを取り上げ、うまくいかないことを廃止しようというようなことも決してしません。

Q:政府の補助金制度は機能しているのでしょうか?

A:もちろんです。私が思うに、貧困は削減途上にあり、NREGAは貧困削減過程で大きな役割を果たしています。NREGAは賃金を上昇させ、貧困層に福祉をもたらしました。Indira Awaas Yojana(貧困層向け住宅供給制度)やJanani Suraksha Yojana(母性保護制度)は、それが実施が容易な制度であったことからうまく機能しています。水や肥料価格への補助金を通じた農業補助政策は逆に廃止すべきです。それよりも農民に現金給付する方が効果が期待されます。農業補助金のような極端なものを農民に与えるよりずっとましです。CNGガスや軽油、肥料といったものの価格を補助金で引き下げたところで、その最大の受益者は貧困層ではありません。

Q:貧困者に関するもっとも誤った認識は何でしょうか?

A:貧困者が犠牲者であるという認識でしょう。彼らは単に犠牲者ではないし、常に生き生きと暮らす人々なのです。実際彼らに話を聞いてみると、彼らは自分たちが何を必要としているのか、どのような暮らしを送りたいと考えているのか、確固たる考えを持っていることがわかります。私たちが政策を立案する時は、彼らも野心も志も持っていることを忘れがちです。彼らはゾンビではありません。

Q:あなたが求める重要政策改革を1つ挙げるとしたら?

A:私たちのマインドセットを変えることでしょう。政策はその適切な文脈の中で理解されることが必要です。私たちは政策を試行し、失敗し、改めて設計し直し、そして今度は成功を収めるという試行錯誤が許されなければなりません。政策を生きた対象、すべてのステークホルダーが関与する領域として捉えるべきでしょう。

貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える

貧乏人の経済学 - もういちど貧困問題を根っこから考える

  • 作者: アビジット・V・バナジー、エステル・デュフロ
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2012/04/03
  • メディア: 単行本

去年読んだ本の中でも1、2を争う面白かった本の著者です。いいこと言っているなぁと改めて思う。
http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2012-11-23
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