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『空より高く』 [重松清]

空より高く

空より高く

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/09/24
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
僕らは廃校が決まった東玉川高校最後の生徒。平凡な高校生として、それなりに楽しくやっていたのに、赴任してきた熱血中年非常勤講師・ジン先生のせいで調子がくるった。通学路で出会ったピエロさんの大道芸に魅せられた僕は、ジン先生の持ち込んだ迷惑な「ウイルス」に感染して…。思わぬところから転がり込んだ「セーシュン」、そして明らかになる、ジン先生の―トンタマ一期生の、過去。
久し振りに重松清の新刊本を読んだ。とはいっても半年近く前に発刊され、図書館での8人待ちをようやく乗り越えて手にとったものだが。しかも、自分の順番が来たことを知らせるメール連絡は、僕が海外出張に出発した翌日のことで、取り置きの期限は僕が出張から戻って来るまさにその日。自宅の最寄り駅に着いた僕は、車で迎えに来てくれた妻にわがまま言って、帰宅途中で図書館に立ち寄ってもらった。ぎりぎりセーフだった。

表紙に乗っているアトラクション、『ディアボロ』っていうんだ。初めて知った。僕がこのディアボロを初めて見たのは今から10年前、米国駐在時代の夏休みの家族旅行で、フロリダのウォルトディズニーワールドに出かけた時のことだ。夜のアトラクションでシルク・ドゥ・ソレイユの『ラ・ヌーバ(La Nouba)』という公演に出かけたが、その中で当時まだ3歳だったうちの娘が最もエキサイトしたのが、東洋系の少女4人組が演じたディアボロを使った演技だった(動画参照)。


物欲があまりなくて「あれが欲しい、これが欲しい」とほとんど言ったことがない娘であったが、ディアボロだけは例外で、劇場から外に出るやいなや、「あれ買って!」とせがまれた。珍しいことだったし、旅行中という開放感もあったので、すぐに売店で購入したが、実際に扱ってみるとなかなか上手く回せない。娘には早いと思ったが、大人の我々でもうまくいかず、結局使いこなせないまま今も子供部屋のがらくたの中に埋もれている。

「ディアボロ」にまつわる苦い思い出だが、高く跳ね上げられたディアボロがいかに見る人を惹き付けるか、そして、それを見て自分もやってみようと思っても、なかなかうまく使いこなせるようにはならない、練習が必要だということを、身をもって知っている僕にとっては、小説の主人公ネタロー君への感情移入は楽であった。

本書は重松作品としては久々のニュータウン小説だ。僕にとっての最初の重松作品は『エイジ』だったが、惹き込まれた最大の理由が、衰退が進むニュータウンを舞台にした情景描写に興味があったからである。以来、『ナイフ』、『定年ゴジラ』、『トワイライト』など、ニュータウン小説を次々と読んだ。最近の重松さんは以前ほど多作ではないし、作品のテーマが、「父と子」だったり、「若くして死を選んだクラスメート」だったりするわけで、ニュータウン小説をあまり書かれていない。久々で嬉しいです。

ただですね、重松さん、中高生を描く際の登場人物のネーミングのつけ方が相変わらずあまり上手くない。「ネタロー」、「ヒコザ」、「ドカ」、「ムク」って、高校3年生がクラスメートを呼ぶ際のニックネームとしては相当にあり得ない。今どきどころか、僕らが高校生だった頃でも、クラスメートを苗字で呼び捨てにするのが当たり前で、ニックネームで呼ばれているようなクラスメートは、1割にも満たなかったと思う。読んでいて、これが高3の話なのか中3の話なのか、頭の中が混乱してきた。正直、ここだけはもう少し改善してくれないかなと期待する。

とはいえ、構成は上手い。物語のかなり序盤の部分でクラスメートの女子に「付き合って欲しい」と言わしめて読者を惹き付けると、そのまま最後まで恋の行方を引っ張り、読者を一気に読ませる。クラスメートの女子に告られるような展開自体が重松作品としては珍しく、新鮮さも感じた。

おそらく、本書の想定読者は僕らのような「シゲマツ世代」ではなく、今の中高生なのではないかと思う。シゲマツ世代の僕らから見れば、中高生の6年間なんてあっという間に過ぎてしまうが、されどかけがえのない6年間でもあった。今まさにその中高生生活に突入している我が家の子供たちには、この6年間を無駄に過ごして欲しくないし、そこで何かをはじめて、それ以後も続けられるようにしていって欲しいと期待する。

今週、うちの長男が中学卒業の日を迎えた。卒業式を終えた翌日、3年間所属した吹奏楽部の最後の演奏にも参加した。高校受験を終えて、結果がわかってひと息ついてから、5ヵ月ぶりに練習に参加し、最後の最後までちゃんと部活をやり終えた長男の姿勢は評価する。何しろ中学入学時に吹奏楽部を選ぶなんて予想もしなかったことで、初心者からはじめて最後までやり切ったのだから、よくやったと思う。

高校に進学しても吹奏楽は続けるようだが、それ以後も続けられるようなものに磨き上げていって欲しい。オヤジはとても楽しみにしているぞ。

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