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『国際協力専門員』 [仕事の小ネタ]

国際協力専門員―技術と人々を結ぶファシリテータたちの軌跡

国際協力専門員―技術と人々を結ぶファシリテータたちの軌跡

  • 編者: 林俊行
  • 出版社/メーカー: 新評論
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
国際協力専門員。あまり聞き慣れない名称かもしれない。国際協力機構(JICA)が世界各地で展開している国際協力の技術部門の具体的な活動を専門職とする者たちの呼称である。その数、約90名。それぞれが専門の分野を持ち、JICAという組織の中で国際協力の職人集団を形成している。本書に参加した12名の専門分野は、参加型開発、農業・農村開発、開発行政、地方電化、ジェンダーと開発、環境行政、上水道開発、情報通信技術、感染症対策、人的資源開発、森林開発、そして防災・水資源開発と多彩である。そこで本書では、途上国が抱えるこれらさまざまな課題を、各章ごとに一つひとつ浮かび上がらせながら等身大の途上国の姿を描いてみることにした。これによってそれぞれの分野ならではの課題やアプローチのあり方を浮き彫りにし、「国際協力の仕事」をする上で必要とされる根本的な姿勢・考え方・視点というものの総体を示すことができればと考えたからである。
この週末、体調不良のせいで遠出もできず自宅でくすぶって多くの時間を過ごしていたので、先々週来糞詰まっていてなかなか読み進められなかった本を2、3冊まとめて読み切ることができた。本書もその中の1冊。登場されてる何人かの国際協力専門員の方々を個人的に存じ上げているので、そのうち読もう読もうと思っていたが、買ってから4年あまりも経ってしまっていた。その間にお目にかかった方もいらっしゃるので、本書で予習してから会っていたら話の仕方も変わっていたかもしれないと思うと口惜しい。

紹介文にも述べられているように、本書には12人の国際協力専門員という方々が登場する。あまり聞き慣れない言葉だけれども、要するに日本が行なっている政府開発援助(ODA)のうち、技術協力の柱の1つとなっている技術専門家派遣で、どこかの国の特定の案件に数ヶ月から2年の間派遣されてそれで終わりとなる単発の専門家と違い、JICAとの長期契約に基づき、専門家として複数の国を渡り歩く、いわば専門家をライフワークとしている人々のことだ。複数の国の複数の協力案件を経験してこられているので、経験も豊富で、しかもそこで得られた知見をある程度整理し体系化しておられるので、新しい国に行ってくれと言われてもすぐに対応できるし、協力のシナリオを作ることにも躊躇なく対応できるというプロ中のプロである。

12人登場されるひとりひとりの専門員のここまでの歩み―――生い立ちから大学での専攻、国際協力の世界に入るまでの前歴と入ることになった経緯、そして国際協力専門員になってから、どのような協力案件で現場経験を積んでこられたのか、そこで何に取組み、どのような教訓を得たのかが、かなり克明に描かれている。1人につき約30頁、それぞれが非常に含蓄に富んでおり、これから国際協力を志すような若い人々に対して、良い指針を与えているように思う。

それと、読んでいて気付いたのだが、比較的年齢の若い国際協力専門員の方々のエントリーポイントが青年海外協力隊だということや、専門員になってすぐに特定の技術協力プロジェクトに3~5年の長期にわたって専門家として送り込まれているのも示唆に富んでいる。今読んでいるある小説に、「本当に開発の仕事がしたいなら、(国際開発のような)歴史の浅い学問ではなく、基本原論が成熟して流行に左右されない体系的な学問をやり、専門技術を磨くべきだ」というくだりがあるが、ある特定の専門領域で十分な知識と経験を積んでから、専門員の試験に臨まれている方が多い。また、国際協力をやるなら日本の歴史をもっと勉強しておけという指摘にも、なんだか力づけられるものがあった。

しかし、存じ上げている方が多かったとはいえ、本書で書かれているようなご経歴があったということは、恥ずかしながらあまり知らないでいた。僕らの年代の人間なら多くの人が知っている、1980年代や90年代に行なわれたあの国のあの国際協力プロジェクトに、この方がそんなに長く関わられていたのかとか、知らずにいた自分の不明を恥じること二度三度。

でも、そうした特定の協力プロジェクトにかくも長く関わられた経験を、わずか30頁弱の紙面で語り尽くすのは至難の技でもある。分野の異なる専門員を12人分もまとめて1冊の本にするための編集のご努力は多とするものの、どうせなら各章をばらして、1人1冊で分冊にしてもらった方が良かったのではないかという気もする。特定のプロジェクトのストーリーでまとめるのでもいいし、1人の専門員のライフヒストリーとしてまとめるのでもいい。そういう作業をちゃんとやっておかないと、引退されたり鬼籍に入られたりして、もはやお話をうかがうことすら叶わなくなってしまうこともあり得る。

今の若い人の中には、専門家派遣など属人的な要素が大きくて途上国での協力どころか専門家に振り回されることも多く、手間もかかるからやめてしまえと言ってる人もいるが、本書を読んでも同じことが言えるのか、問うてみたいものである。

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いっぷく

コメントありがとうございます。
門馬氏の本はおおむね選手や関係者を
評価しています。が、安っぽいヨイショではなく
是々非々で全部書いているという感じです。
by いっぷく (2013-02-13 05:16) 

toshi

コメント、ありがとうございました。
ホスペットのホテルからハンピに向かいました。
by toshi (2013-02-14 02:07) 

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