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『世界の経営学者は何を考えているのか』 [仕事の小ネタ]

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア

  • 作者: 入山 章栄
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2012/11/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
ドラッカーなんて誰も読まない!?米国ビジネススクールで活躍する日本人の若手経営学者が世界レベルのビジネス研究の最前線をわかりやすく紹介。競争戦略、イノベーション、組織学習、ソーシャル・ネットワーク、M&A、グローバル経営、国際起業、リアル・オプション、ベンチャー投資…ビジネス界の重大な「問い」は、どこまで解明されているのか。知的興奮と実践への示唆に満ちた全17章。
職場のボスが、「論文の書き方を覚えたいなら多くの論文で頻繁に引用されるような優れた論文を先ず読んでみることだ」と言っていた。自分が喫緊に取り組まなければならない課題を考えた場合、そうすると読まなければならないのは経営学系の論文ということになるが、それって何なのだろうか。経営学でよく引用される文献が何なのか、全然イメージができない。書店店頭で見まわしてみたところで、これといってピンと来るような文献には出会うことはない。ドラッカーの非営利組織の経営に関する著作や、コトラーのソーシャルマーケティングに関する著作等は読んだことがあるが、何かを実証するような研究の成果というわけでもなく、経営指南書という印象だった。

そもそも世界の経営学の最先端の研究領域と必読の先行研究にどんなものがあるのか?それを手っ取り早く知る方法はないのだろうか―――。昨年末にこんな悩みを抱いて苦悶の日々を送っていたところ、たまたま新聞書評で知ったのが本日ご紹介の1冊であった。米国で研究活動を送ってきた著者が、その過程で読んだ先行研究をまとめた学習メモを1冊にまとめたような本で、まるで参考書のような感じでわかりやすく書かれている。

経営指南書やハウツー本は、読んでその気にさせてくれるという点では評価される。だから多くの読者を惹きつけるのだろう。でも、それをすべきという提言内容の根拠は多分に感覚的なもので、ちゃんとした分析によって実証されている方法にはなっていないところがある。その裏付けを示すのが研究の目的なのだが、そういうものにあまり注目されないのは残念だ。本書はそうした実証研究の成果に注目し、今研究者の目がどこに向かっているのかを、主に2000年代になって米国で発表された数々の論文を紹介することで示そうとしている。

但し、僕が最も知りたかったボランティア組織の経営に関する先行研究というのには言及もなく、その点においては物足りなさも感じた。ちゃんと努力して自分で調べろということか。

収録されているチャプターだけで組織の学習効果や弱い紐帯について書かれた章が特に印象に残ったが、「弱い紐帯」で先行研究として引用されているグラノヴェッターなどは社会学者なので、何だか、結局のところ経営学という学問領域は、定量分析は経済学、定性分析は社会学の影響が強いのかなという気はした。純粋に経営学の論文が本になっているのがないという印象は、仕方ないのかなという気もする。企業の経済学的分析は経済学の棚にあり、定性分析は経営学の棚にあったのに僕がピンと来なかったというだけのようだ。

まあ、もうちょっと頑張ってみようかなと思う。少なくとも、絶望的な気分だったところから、そういうちょっと前向きな気分にさせてくれたというところに、この本と出会えたことのありがたさがある。

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豊平区

第12章(不確実性の時代に事業計画はどう立てるべきか)は、目から鱗でした。リアル・オプション理論の紹介が、それ。私の勤務先でも、」投資委員会等で案件毎に激論が交わされていますので。「それは、長期の経営戦略に裏打ちされた投資か」「投資規律が緩んでいないか(資金投資後、果実獲得が検証されているか)」・・・等々。本書がベストセラー入りする前に先物買いし、推薦してくれた同僚に感謝!
by 豊平区 (2013-03-02 17:19) 

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