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「通貨」を知れば世界が読める [読書日記]

「通貨」を知れば世界が読める (PHPビジネス新書)

「通貨」を知れば世界が読める (PHPビジネス新書)

  • 作者: 浜 矩子
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2011/05/26
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
なぜ我々は「円高・円安」に一喜一憂しなくてはならないのか、そもそも「通貨」とは何なのか…そんな壮大なテーマを、人気エコノミストがわかりやすくも刺激的に説いていくのが本書。通貨の発祥から基軸通貨ドルの没落、ユーロの限界、そして「1ドル50円」時代を迎える日本の未来まで、知的好奇心を満たすのはもちろん、明日のビジネスにも必ず役立つ一冊。
アマゾンなどの感想を読むと、評価が極端に割れる本だ。新聞広告ではいつも口をへの字に曲げて、おっかない表情をされている浜先生の著書を読むのは初めてだが、分析プロセスはともかく、結論はまあ想定の範囲かなと思う。グローバル化の時代における地域通貨の可能性は、僕の論文指導教官ですら10年以上前の著書でも言及していたものであるが、地域通貨を言っている割には日本国内の取組みについて具体的な言及もなく、インフレ高進期のイタリアでお釣り代わりに飴玉を渡していたのがイタリアの地域通貨の走りだと言われても、正直あまり説得力がない。(釣銭がないので飴玉を渡す商習慣なら、インドにだってあったよ。)

そんなことを書くとご不満顔の浜先生が夢に出てきそうなので良い点も述べると、1997年のアジア通貨危機の発端が1985年のプラザ合意にあったという先生の説明には、かなり納得感がある。国際通貨制度の変遷を、第二次世界大戦以前にまで遡り、英国から米国、そして米国の後退というヘゲモニーの変遷も絡めて解説している点は、大学で国際金融論で勉強したことを思い出しながら読ませていただいた。ケインズやトリュフォーの主張も、昔は勉強したなあと感慨ひとしきりだ。ただ、僕が大学を卒業したのは1980年代後半だったので、プラザ合意以後の国際通貨に関する議論はあまりフォローしていなかった。だから、休日読書で気軽に復習するのに本書はちょうどよい分量だと思った。

一方で、本書の目次の後に「編集協力◆オフィス1975」という文字があるのに気付いてしまった―――。

ということはですね~、この本、浜先生の書き下ろしじゃないということです。多分、「オフィス1975」という編集プロダクションが、浜先生に数時間にわたってインタビューを行ない(これを「取材」と呼ぶ)、それをテープ起こしして再構成してまとめたのが本書である可能性が高い。

浜先生はメディア露出度も高く、1年に4冊も5冊も本を書けるほど時間を捻出するのは難しいに違いない。でも、浜先生の名前で本を出せば売れるので、出版サイドは本を書いて欲しい。そこで、こんな手法が用いられるのである。オフィス1975のHPも調べてみたが、PHP研究所の刊行物の編集協力は結構頻繁に引き受けているみたいで、浜先生の本は、本書を手始めに、昨年出た『「通貨」はこれからどうなるのか』(PHPビジネス新書)も扱っている。本というのは、そうやってできるものも結構多いのです。

編集協力者があったとはいえ、出版される以上は著者のリスクで本が出来上がるのは間違いない。でも、ちょっとだけ有難みが薄れた気がしたのもまた事実であった。
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