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『病が語る日本史』 [読書日記]

病が語る日本史 (講談社学術文庫)

病が語る日本史 (講談社学術文庫)

  • 作者: 酒井 シヅ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/08/07
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
古来、日本人はいかに病気と闘ってきたか。人骨や糞石には古代の人々が病んだ痕が遺されている。結核・痘瘡・マラリアなどの蔓延に戦いた平安時代の人々は、それを怨霊や物の怪の祟りと考え、その調伏を祈った。贅沢病といえる糖尿病で苦しんだ道長、胃ガンで悶え死にした信玄や家康。歴史上の人物の死因など盛り沢山の逸話を交え綴る病気の文化史。
昨年のNHK大河ドラマ『平清盛』は、視聴率の低さばかりがネット上で取り沙汰されていたが、久々に見た本格的な歴史大河ドラマだったと僕は高く評価している。残念ながら僕はBSプレミアムの午後6時からの放送を見ていたので、NHK総合の午後8時からの視聴率アップには貢献していなかった。でも、視聴率云々ではなく、こういう骨太の歴史ドラマこそ、NHKが取り組むべきだし、NHKでないとできないと僕は信じている。こうやって平安時代末期の宮中や畿内、坂東、西国の様子をできるだけ史実に忠実に描いてくれると、子供たちの日本史の理解の促進には多少なりとも繋がると思うし、時々挿入される和歌も、百人一首や平安末期の貴族がまとめた和歌集に収録されているものが多く、どういう状況でその歌が詠まれたのか、ドラマを見ていると理解できた気がする。

平清盛の壮絶な死に方についても然り。高熱にうなされて、水に浸した手拭いを額に置いても、すぐに水が沸騰・蒸発してしまったという『平家物語』のくだりはドラマでも再現されていた。清盛の死因はこの熱病によるものだが、一説によるとこれはマラリアだったらしい。また、大河ドラマでは清盛がその前に50歳で一度倒れるシーンがあった。その病名はドラマでは明記されていなかったが、一種の寄生虫病だったらしい。

そうした歴史の蘊蓄ネタを仕入れるのに、本書はなかなかお薦めである。

以前もこのブログで書いた通り、僕らが学校で習った日本史は基本的に政治史である。でも、日本の歴史を振り返るにはいろいろな切り口があり、民衆史・社会史の観点から見る面白さを教えてもらったのは、民俗学者・宮本常一の一連の著作であった。そこからの派生で、一昨年、昨年と、日本の歴史を農業や畑作の視点から考えてみる機会があったし、もっと前には『お産の歴史』なる本を読んだこともある。

とかく僕らが現代を生きる中で自分の目の前にある出来事や事物は、それが以前から存在していたような錯覚におちいることがあるが、実際にはそれぞれについて始まりと言えるものが歴然とあり、日本で古くから行なわれていたようなものは少ない。また、僕らが小学生の頃は日本住血吸虫病といったら結構恐ろしい寄生虫病で僕は戦慄を覚えたものだが、今は寄生虫病対策は相当に進み、そんなに怖い病気とは思われなくなった。

ではそんな病気はいつ頃日本に入ってきて、いつ頃猛威をふるったか、その対策がいつ頃考案され、どのような経緯を経て撲滅に至ったのか―――改めて聞かれると知らないことがまだまだ多い。僕は結構歴史オタクだと思うが、切り口によっては知らないことが沢山あるのである。

そういう意味で、本日ご紹介の1冊なんて、いい読み物だと思う。癌が昔からあった病気だったなんて全然知らなかったし、ハンセン病がいつ頃から症例が日本でも見られたのかというのも知らなかった事実だ。寄生虫病対策について日本はどんな経験をしてきたのかも、本書では教えてくれる。この年末年始、僕はたまたま偶然、日本人が中米数カ国で取り組んで大きな成果をあげた某媒介虫対策の歴史についてまとめられた本の編集出版に関わっていた。「シャーガス病」という。この本は1年前に発刊された僕の著書と同じシリーズの最新刊として、2月初旬には店頭販売が始まる予定だ。日本人の専門家やボランティアが中米諸国で奮戦したストーリーはとても面白くスリリングなものだが、それと同時に、日本国内ではどのようにして感染症や寄生虫病等の対策は取り組まれたのかを改めて勉強しておくのも必要だと思った。

昨年末からノロウイルスへの集団感染が日本で大きな問題となっている。こういう事態が過去いつ起きて、それに対してどのような取り組みが誰によって行なわれたのか、そこで得られた教訓は何かというのを分析し、現在の対策に生かしていく努力が求められている昨今である。こういう本が既に出されている意味は相当に大きいと僕は思っている。

この年末年始、僕は弟の子供たち、すなわち甥たちと少し話す時間があった。国語は苦手だという中1の甥は、どうせ古文や漢文は社会に出ても役に立たない(だから捨ててもいい)というようなことを言っていたが、僕に言わせると実はそうではない。幸いなことに、日本では飛鳥や奈良の時代から歴史を文章情報として記録に残す取り組みが行なわれてきた。平安時代になると、貴族の多くが日記をつけており、これらが当時を語る貴重な文字情報となっている。それらを解読するのに、古文の知識は必要不可欠である。医学が理系だとは言えないものの、我が国がどのように疾病を克服してきたのかを知るためには、古文を解読するための知識が要求されると思う。理系であっても古文の素養は必要となる場面は将来あり得るよ―――伯父さん面した僕が知ったかぶりして甥に蘊蓄をたれた背景に、こんな本を読んでいたということがあった。

甥にとっては迷惑な話だったかもしれないが、100%ハズレだとは思えない。直接古文を解読して情報を検索する必要性にかられることが、将来ゼロだとは言い切れないのである。

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うなぎ

免疫力をつけて身体がウイルスに感染することを何とか避けたい。
同時にパソコンがウイルスに感染することも避けたい。
gooブログにアクセスすると、ウイルスに感染することがあるから、近寄らないことが望ましい。
URLがblog.gooで始まっている。また角の中にgが入った赤いマークが付いている。
ウイルス対策ソフトがパソコンに入っておれば問題ないと思われるが、念のため。
君子危うきに近寄らず。
by うなぎ (2013-01-04 11:43) 

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