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『2030年超高齢未来 破綻を防ぐ10のプラン』 [少子高齢化]

2030年超高齢未来破綻を防ぐ10のプラン―ジェロントロジーが描く理想の長寿社会

2030年超高齢未来破綻を防ぐ10のプラン―ジェロントロジーが描く理想の長寿社会

  • 作者: 東京大学ジェロントロジーコンソーシアム
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2012/09
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
日本人の4割が高齢者に。5年後、10年後、15年後、具体的に、何をどうすればいいのか?東京大学+トップ企業45社による画期的な処方箋。
2010年に発刊された『2030年超高齢未来』の続編。
企業や大学・研究機関に、向こう20年程度を見越した飯のネタを披露している本というのが第一印象だった。それはそれでいいが、口絵に人があまり登場せず、インフラ整備が中心なのかという印象をどうしても受けてしまう。前編を読んだ際、東大高齢社会総合研究機構の研究チームが千葉・柏の豊四季団地で行なっているという実験でわかってきたことについて言及がないといった批判的コメントをしたことがあるが、続編となる本書の方でも、せっかく豊四季団地に言及していながら、わずか2頁程度しか紙面を割いておらず、いくつかあるインフラ整備の取組みの1つだという印象しか受けなかった。

インフラ整備というのは難しい。誰も住んでいなかったところに新たに街をつくるようなニュータウン建設ならまだしも、元々住民が住んでいた街を再開発するには、住民のコンセンサスを得て一緒に計画を策定していくことが必要で、美しい完成予想図やポンチ絵を見せられても、あまり心には響いて来ない。住民の間での合意形成の部分のあり方、今既に超高齢期を迎えている住民と、20年後に超高齢の仲間入りをする住民、そして、今は被扶養者だが10年、20年経つと超高齢者のケアの負担を中心的に担っていかなければならない子供たちや若者、そうした様々な年齢層の参加のあり方にまで突っ込んだ議論がされているとは思えなかった。

このコンソーシアムに参加しているのは企業や研究機関なので、どうしても、どんなサービスを提供する必要があるかを供給者側の視点から見ているとの印象がぬぐえない。扱っているテーマは心が温まるべきものだが、なんとなく無機質な感じを文章からは受けるのだ。さしづめ、人が歩いていない街路を1人で見まわしているといった感じか。

また、僕のように東京に出てきていて、故郷で後期高齢期を迎えている親を持つ子供の関与のあり方に対する示唆も殆どない。「家族」の存在の希薄さを嫌でも突きつけられる。そんなもの期待するなと暗に言われているようで、読んでいて心が痛くなった。

年末年始の帰省のシーズン、僕も例外ではなく里帰りして両親の様子をみてくることにしている。来年は父は80歳を迎える。今はまだ健康でいてくれるけれど、この安定が今後10年続くとは僕には思えない。企業や研究機関が連携して、距離の壁を打ち破れるコミュニケーションのあり方を考えてくれるのには期待はしたいが、遠く離れた親のケアを自分の手で行なうことはそれでも不可能だ。必ず他人の手が必要となる。ハードではない、ソフトの領域だ。

この本に欠けているのは、住民の目線だと思う。言っていることは正しいかもしれないが、住民の気持ちを十分斟酌していない。コンソーシアムにNGOが入っていたら、印象も変わっていたと思う。


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