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『ハーバード白熱日本史教室』 [読書日記]

ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)

ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)

  • 作者: 北川 智子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/05/17
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
少壮の日本人女性研究者が、ハーバード大学で日本史を大人気講座に変貌させた。歴史の授業に映画作りや「タイムトラベル」などの斬新な手法を導入。著者の熱に感化され、学生たちはいつしか「レディ・サムライ」の世界にのめり込んでいく―。「日本史は書き換えられなければならない」という強い使命感のもと東部の有名大学に乗り込み、「思い出に残る教授」賞にも選ばれた著者が記す「若き歴史学者のアメリカ」。
この本は発売当初から書店の新書コーナーの平積みにされており、美人の著者の写真の入ったタスキがかけられて、大々的に売られていた。それなりに販売部数は上がっていたのだろう。そのうち近所の図書館にも入荷するだろうと思っていたところ、9月も下旬になってようやくコミセン図書室に入荷。新書サイズの軽めの本を物色していた時期でもあったので、さっそく借りて読んでみることにした。

感想を述べると、微妙だな。日本史を海外で教えるだけでも日本人にはアドバンテージがあり、それを著者は上手く活かしたに過ぎないような気がする。「レディ・サムライ」の発想自体、著者の独創性があったわけでは必ずしもない。そんなのは、日本史をちゃんと学んでいる日本人にとっては常識の範疇だろう。ご本人の努力は当然認めるものの、カナダに留学し、そこで日本史を教えている教員のアシスタントにでもなった人なら、同じような展望が開けても何ら不思議はない。

ただ、それだけではなかった筈だ。ご本人はチャンスは誰にでもある、だから皆さんも頑張ってと言いたかったのだろうが、僕はご本人が語っていない何かがあったように思えてならない。例えば、この著者は大学からカナダに渡っているが、それ以前のことをほとんど語っていない。ちょっとうがった見方をすると、「英語はあまりできない」云々と謙遜していても、意外と英語できたんじゃないかという気がする。じゃなかったらUBCの学部で2つも同時に専攻取れないだろう。それに、本書の内容とは全く関連性がないが、この著者は「L」で始まるミドル・ネームを使っている。これは何だろうか。ご結婚はなさっていて今の姓を名乗っておられるのだろうと思われるが、「L」で始まるような日本の苗字が思いつかない。ネイティブではないかもしれないが、意外とハーフだったりするのかもしれない。

そう考えるならば、著者がカナダに留学する以前に日本の学校教育で学んできた日本史に対して、どのようなイメージを持っておられたのか、どのように日本史を勉強されていたのかが知りたい。

その一方で、本書を読んでいて、海外の日本史研究者のお寒い現状が透けて見えて悲しくなった。天下のハーバードでそれまで行なわれていたという「サムライ」という講座って、一体何なのだろうか。結構ショックだ。そういうところから始まって、それにかぶせる形で「レディ・サムライ」という発想が出てきているのだ。日本史といっても16世紀の後半から17世紀初頭にかけてという非常に短い期間だけを扱った授業であるし、そこで米国人の誤った先入観を是正できたとしても、日本の歴史を理解したことには必ずしもならないだろう。

いかに天下のハーバードでも、マイナー研究領域だから講師もここまでの冒険ができたんだろうなぁ。そんな気がする。授業を取る学生にしたって、他に本来の専攻があった上で、先輩学生の間で人気が高いからというだけで、卒業単位確保のために取っているのだろうなと思われる。

YouTubeで、「レディ・サムライ」の受講生が作成した課題映像が掲載されているのでご覧いただきたい。途中、「あれ?」と首を傾げる映像も出てくるが、こういう課題設定の自由度も、マイナー研究領域なればこそかな。


こういう本を世に出す以上、今後も日本史研究者として多くの研究成果を世に出していって欲しいと期待したい。本書を読んでも、本場日本で史料をあたって歴史研究をされたというような活動については書かれていない。ほとんどは北米にて入手可能な文献資料に基づく分析に過ぎないのではないか思われる。講師として非常に優秀だというのはとてもよくわかったが、日本史研究者としてどうかというところでは、著者はまだまだこれから多くの仕事をしていかねばならないと思う。日本でのフィールドワークも含めて。

読んでみてわかると思うが、著者の語る歴史は、基本は政治史の範疇を超えていない。社会史、民衆史のような領域の面白さに最近気付き始めている僕が本書にピンと来なかったのは、仕方ないところだ。



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