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インドの若者が求めるもの [インド]

What Young India Wants

What Young India Wants

  • 作者: Chetan Bhagat
  • 出版社/メーカー: Rupa & Co
  • 発売日: 2012/08/01
  • メディア: ペーパーバック

内容説明
インドの学生はなぜいつも自殺するのか?インドにはなぜ汚職がこんなに多いのか?インドの政党は協働することができないのか?我々の投票は何も変化を起こさないのか?我々は自分達のインドと言う国を愛している。でも何かが違うのでは? 我々はみなこうした問いを投げかける。インドで最も愛読者が多い作家チェタン・バガットもその1人である。 バガットの初めてのノンフィクションである『What Young India Wants』は、売れっ子作家でありかつ聴衆にやる気を起こさせるスピーカーでもある彼の豊富な経験にもとづいて書かれている。明瞭かつ簡潔にその考えを表し、彼は現代のインドが直面する複雑な問題について分析し、解決策を提示し、その解決策について議論を求めている。そして最後に、彼はこの重要な質問を投げかける。「この国を良くするのに何が必要かについて皆で合意できないのであれば、物事はどうやったら変えられるのか?」今日のインドとそのインドが直面する問題について知り、その解決の一翼を担いたいと思っているならば、『What Young India Wants』はそういうあなたのための本である。
インドから買って帰った本を先ず1冊読み切った。新進気鋭の売れっ子作家チェタン・バガット初のエッセイ集である。チェタン・バガットはこれまでに5本の小説を書いており、そのうち2本がボリウッドで映画化されている(『HELLO』、『3 Idiots』)。これらの映画はちゃんと見たことがあるが、実は原作を読んだことがなかった。

本書は、著者が全国紙Times of Indiaで連載していたコラムをまとめたものである。いつ連載開始したのかは定かではないが、扱われている出来事は意外と古いのもあり、僕が未だインド駐在していた2年以上前の話も当然ある。例えば、インド人民党(BJP)の重鎮ヤシュワント・シン元蔵相が書いたムハンマド・アリ・ジンナーの伝記本でのジンナーの描き方がけしからんとBJPを除名されたという出来事は2009年頃の話だったと思う。そういう、現地に住んでいてその出来事について予備知識を持っていると、本書はとても親しみやすいに違いない。

その点では、昨年来行なわれているアンナ・ハザレの反腐敗運動の扱いは格別だ。アンナ・ハザレが運動を主導していることについてはいろいろ意見はあるが、著者はその原因と動機については深い理解を示している。全般を通じてそうだが、著者は国民会議派を中心とする現与党に対して極めて手厳しく、2年前に起きた英連邦スポーツ大会を巡る汚職事件や、2Gの周波数帯割当を巡る通信スキャンダルに対して、マンモハン・シン首相やソニア・ガンジー党首の対応が手ぬるいことをやり玉に挙げている。資質に疑問なしとしないラフル・ガンジー幹事長を担ぎ出してきて、次期首相とまつりあげている点についても、血統がリーダーとしての能力に優先されている、なんでいつもインドはこうなのかと批判の目を向けている。政治もさることながら、インドの人材育成の仕組みそのものが、能力主義になっていないのだという。

映画『3 Idiots』のネタにもなったインドの大学教育のあり方、進学希望者数の増加に大学の定数増が追い付いていない現状が描かれているところはチェタン・バガットの真骨頂ともいえる。彼自身がインド工科大学(IIT)の出身で、実験よりも詰込みを重視する技術教育のあり方に懐疑的である。また、せっかく大学に入れても、そこから先の展望が開けずに自殺する学生が非常に多いことも指摘している。これらは彼自身のIITでの学生生活をもとにして描かれた『Five Point Someone: What Not to Do at IIT』でも扱われているし、もっと象徴的には映画『3 Idiots』で学生の自殺と自殺未遂が2度も出てくる。

エッセイは1編4頁ほどだし、文章も意外なほど読みやすいので、英語のペーパーバックの入門編としてはお薦め。インドの時事問題に多少の予備知識は必要かもしれないが、テンポよい英語表現とはこういうものかと参考になる。

本書とは直接関係がないが、映画『3 Idiots』の動画を貼り付けておこう。全編見ると3時間近くかかってしまうので、所々とばして見て下さい。IITでの学生生活は前半部分で描かれています。


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