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『成吉思汗の秘密』 [読書日記]

成吉思汗の秘密 新装版 (光文社文庫)

成吉思汗の秘密 新装版 (光文社文庫)

  • 作者: 高木 彬光
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/04/12
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
兄・頼朝に追われ、あっけなく非業の死を遂げた、源義経。一方、成人し、出世するまでの生い立ちは謎に満ちた大陸の英雄・成吉思汗。病床の神津恭介が、義経=成吉思汗という大胆な仮説を証明するべく、一人二役の大トリックに挑む、歴史推理小説の傑作。本編にまつわるエッセイの他、短編「ロンドン塔の判官」を併せて収録。
本編だけで約380頁。付録をいくつか合わせると、500頁にもなるという分厚い文庫本。『邪馬台国の謎』を今年2月に読んだ際、合わせて購入していたのが同じ高木彬光作品『成吉思汗の謎』である。中学校1年生当時のクラスメートでこれを読んだ奴がいて、面白いからというので周りの僕らにも読むよう薦めてくれたのだが、あまのじゃくな僕は、そのクラスメートとの違いを出したいというので、「成吉思汗」ではなく、「邪馬台国」の方を小遣いを使って購入し、結局読了できず「成吉思汗」にたどり着けなかったという苦い思い出がある。当然、今回が初めての挑戦だ。

それでも購入してから半年以上経過してしまったのは、分厚い文庫本を読み始める最初の一歩がなかなか踏み出せなかったことにある。今回は、10日間に及ぶ比較的長めの海外出張ということもあり、行きのフライトは飛行時間だけで10時間もの時間がある。そういう時が読むには好都合なのだ。実際は金曜日から読み始めてはいたので、パッキングその他で慌ただしかった土曜日に少しだけ読んだのも合わせると、日曜朝の時点で50%近くまでは読み進んでいた。残る250頁を機内で片付けた。

面白かった。史料がそろっていないだけに、どうしても決定的証拠があるすっきりとした終わり方にはならないのは仕方ないにせよ、推理だけでも十分面白い内容だ。「源義経=チンギス・ハーン」説が今一度脚光を浴びたら、NHK大河ドラマ『平清盛』の第三部の楽しみ方もちょっと変わってくることだろう。なにせ、26日放送分から牛若丸も登場しているのだから。(ドラマでは、頼朝をいい人に描いているみたいだけど。)

ただ、「成吉思汗」の文字に暗号が秘められているとか、チンギスハーンが「9」という数字をよく用いるとか、シベリアや満州の地名が日本語やアイヌ語に似ているとか、ちょっと無理なこじつけなのではないかと感じたところもあった。そういうこじつけが過ぎると思われる神津恭介の推理に、松下や鎮子が「そのような鋭い推理ができるのは神津先生だけです」などと涙を流さんばかりに感動しているシーンなど、ちょっと鼻白むところであった。僕はこういう、人名や地名に暗号が隠されているというお話が大嫌いで、そんなことをなぜしなければいけなかったのかという必然性について常に疑問視している。そうなったきっかけが五島勉『ノストラダムスの大予言』だ。

個人的には、『邪馬台国の秘密』の方が好きだ。でも、「源義経=チンギス・ハーン」説は、子供を歴史好きにするにはいいエントリーポイントだと思う。僕らが中学生の頃、クラスの意外な生徒が歴史を薀蓄語り始めたので驚いたことがあるが、そのネタ本が『成吉思汗の秘密』だった。今の中学生がどれくらいの深さをもって義経やチンギス・ハーンを知っているのかは甚だ疑問なところではあるが(代わりにポケモンのキャラや遊戯王のカードのことは信じられないぐらいによく知っているが(苦笑))、それでも我が子には読むのを薦めたい。

「歴史は繰り返す」「今を生きるヒントは過去を振り返ることにある」―――正確な言い方ではないけれど、本書の中で、そんなニュアンスのことが書かれていたと思う。僕らが歴史を勉強しなければいけない意義がそこにあると思う。


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コメント 2

nmzk

“トンデモ本”として面白かったです♬
by nmzk (2012-08-29 09:22) 

toshi

面白い仮説ですね。
by toshi (2012-08-30 23:11) 

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