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『田村はまだか』 [読書日記]

田村はまだか

田村はまだか

  • 作者: 朝倉 かすみ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/02/21
  • メディア: ハードカバー
出版社/著者からの内容紹介
2009年吉川英治文学新人賞受賞作。かつて「孤高の小学六年生」と言われた男を待つ、軽妙で感動の物語。 深夜のバー。小学校のクラス会の三次会。40歳になる男女5人が友を待つ。大雪で列車が遅れ、クラス会同窓会に参加できなかった「田村」を待つ。 「田村」は小学校での「有名人」だった。有名人といっても人気者という意味ではない。その年にしてすでに「孤高」の存在であった。貧乏な家庭に育ち、小学生にして、すでに大人のような風格があった。 そんな「田村」を待つ各人の脳裏に浮かぶのは、過去に触れ合った印象深き人物たち。今の自分がこのような人間になったのは、誰の影響なのだろう----。40歳になった彼らは、自問自答する。
 それにつけても田村はまだか? 来いよ、田村。
酔いつぶれるメンバーが出るなか、彼らはひたすら田村を待ち続ける。 そして......。 自分の人生、持て余し気味な世代の冬の一夜を、軽快な文体で描きながらも、ラストには怒濤の感動が待ち受ける傑作の誕生。
少し前に『ともしびマーケット』を読んだ際、次は『田村はまだか』にしようと思っていた。Amazonや読書メーターの読者感想を読んでいると、本作品だけでなく、朝倉かすみの作品は評価が割れていて、平均すると5段階評価で3程度というのが多い。僕も何人かの作家の作品を読んできたが、状況設定を上手く活かしているかどうかという点ではもっとうまい作家は多い。ラストがさほど「怒涛の感動」だとは思えないし。ただ、朝倉かすみの文章は割とこまめに区切られていて読みやすく、個人的には好きな作家だ。

小学校卒業以来会っていない同級生を、こうやって同窓会の三次会でずっと待ち続けられるものなのかなというのは気になる。「孤高の小学六年生」なんて強烈なキャラクターの生徒は僕の同級生にはいなかった。

 「どうせ死ぬから、今、生きてるんじゃないのか」
 「どうせ小便するからって、おまえ、水、のまないか? どうせうんこになるからって、おまえ、もの、くわないか? 喉、渇かないか? 腹、すかないか? 水やくいものは、小便やうんこになるだけか?」

こんな粋なセリフを吐ける同級生は僕にはいなかった。いや、いたかもしれないけど、それを強烈に記憶しているわけでもないだけかもしれない。でも、特定生徒にまつわる小学校時代の出来事を、これだけ鮮明に覚えていられるものなのだろうか。さらに、卒業して28年経っても集まって二次会、三次会と繰り出せる仲の良い男女のグループがいるというのも、それが揃いも揃って同窓会に出てくることも意外。そして、小学校卒業とともに町を離れ、遠くの豆腐屋に修業に出た田村君と、彼らが連絡を取り続けていて、28年振りの再会を待ちわびるという状況、これらはいずれも僕的にはあり得ないことである。僕も高校卒業して東京に出てきてしまっている。故郷を離れた人間がその後故郷に居残った同級生とどのように連絡を取り合っているのかといえば、僕のケースとさほど差はないだろう。

そういう意味では僕にとってはないものばかりが集まっている作品。小説にはそういう、あり得ないものを期待しているので、自分の中の「空腹」を満たしてくれる作品に出会えた気はした。多くの読者が感じるほど、出来の悪い作品だとは思わない。

ところで、13日(金)は大学時代の英会話サークルの同期、1年後輩10人ほどで集まってプチOB会というのがあった。三田の会場まで行くのに職場を出るのが遅くなり、おまけに三田駅から地上に上がって道に迷ってしまい、20分近く徘徊した。宴席開始から1時間以上の遅刻の上、ようやくお店に到着した。「それにつけてもSanchaiはまだか」と話題になるほど深刻な遅刻ではないし、僕がインパクトのある語録を頻発した「孤高」の部員だったわけでもないが、まあ田村君のような事態にならなくて良かった。
タグ:朝倉かすみ
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