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Challenging the Aid Paradigm [読書日記]

Challenging the Aid Paradigm: Western Currents and Asian Alternatives (Rethinking International Development)

Challenging the Aid Paradigm: Western Currents and Asian Alternatives (Rethinking International Development)

  • 編者: Jens Stilhoff Sorensen
  • 出版社/メーカー: Palgrave Macmillan
  • 発売日: 2010/05/15
  • メディア: ペーパーバック
内容説明
In recent decades international aid policy has converged around a set of market-liberal ideals. The fall of the Soviet Union helped to reaffirm this trend whilst also enabling a more radical interventionism in the South. The contemporary aid paradigm can be challenged on a number of theoretical and empirical grounds, but is now, for the first time in two decades, also challenged by a Chinese or Asian alternative model. This volume offers critical analysis into contemporary aid policy and identifies major issues in the Western currents as well as the Asian alternative. Chinese aid is explored with special reference to Africa and with regard to its receptions and consequences on the African continent. The contributions of a distinguished and inter-disciplinary team of area specialists will provide a valuable resource for peer researchers, students and teachers as well as practitioners in the field.
内容紹介を英文のまま載せてしまい、申し訳ありません。要するに、本書は西洋型の援助に対するオールタナティブとしてアジア型援助というのに注目し、その事例として中国の対アフリカ援助を重点的に取り上げている。2週間前の職場の自主勉強会の題材となり、この中から次に紹介する2編の論文を読むことになった。

Marie Soderberg
"Challenges or Complements for the West: Is There an 'Asian' Model of Aid Emerging?"
pp.107-135

1本目の論文は、アジアの「オールタナティブ」な援助政策が、西洋的な主流派の開発援助に対して新たな挑戦となるのか、あるいはそれを補完するものとなるのかを、日本、韓国、中国、タイの4ヵ国の対外援助政策の歴史的背景、組織制度設計、特徴、近年の傾向を論じることによって考察している。韓国のように日本の援助実施体制をコピーしたかと思うほど似ている国がある一方で、中国の対アフリカ援助はむしろ異質性の方が強調されることが多く、日本はOECDの開発援助委員会(DAC)の一員として、西洋諸国に近い方の立場から中国のやり方に複雑な眼差しを送っている。だから、一見するとこの4ヵ国をひとからげにして「アジア型援助」と呼ぶのには違和感が相当にある。

しかし、著者が冒頭で述べている4ヵ国の共通性については、確かにそうかもしれないと思う。

 ①開発のハシゴをよじのぼるモデル。援助の受け手から援助国になり、自国の開発経験を
  対外援助政策や実施体制構築に生かそうとしている。

 ②潤沢な貿易関係や民間直接投資、その他の公的資金フロー(OOF)等を組み合わせ、
  単に「開発援助」というよりも、「経済協力」と呼ぶのに相応しい。そこでは強力な政府の
  リーダーシップがある。

 ③支援対象国の開発に必要なインフラの整備に多くの援助が充てられており、巨額の資金を
  動かせるよう、借款のような形態が重要視される。

確かに、これらは他のDAC加盟国にはあまり見られないアジア型の対外協力の特徴ともいえる。著者はさらに結論部分でも次の2点を挙げてまとめとしている。違いの方が強調されがちだが、これらは日本の経験を振り返ってみてもあてはまるところが多い。

 ④強力な国家、NGOの脆弱性、支援実施における緩いコンディショナリティ

 ⑤二国間援助、産業開発重視、自助努力を支える借款、相互利益の強調、経済インフラ重視、
  ショーケース的なプロジェクトの実施、政経分離に基づき政府官僚機構から提出される要請に
  基づき協力実施、対外協力を自国の安全保障の一環と捉える。

ただ、DAC加盟国であろうが、アジアの援助国であろうが、対外協力を自国の国益、安全保障の面から捉えて実施されているという点では変わらないような気もする。著者はアジアの援助国が対外協力と自国の安全保障が繋げて考えられていると述べているが、それは急成長の途上にあって資金が比較的潤沢にあるという状況で対外協力を行なえるという政策制度環境下にあるからで、資金が潤沢ではない欧州の小国なら限られた公的資金のレバレッジの観点から、1国で何かをやるよりも、他の援助国と協力した二国間援助や、世銀IMFなどの国際金融機関を通じた資金協力を重視する傾向が強いのではないかと思う。勿論、カネを出すだけでなく、口も出すし人も出すという国々だ。必然的に、財政援助のような方法が用いられやすい。

そう考えていくと、本稿の論点はけっこう有効なのかもしれないと思える。本書の他の章は読んでいないが、本書全体の基調を成す章がこれだと思うし、アジア4ヵ国の歴史的経緯や実施体制、特徴が描かれている各セクションは参考にもなると思う。

このアジア型対外協力というオールタナティブが、例えばアフリカというフロンティアで欧州諸国がこれまで行なってきた援助との関係でどういう役割が期待されるかという点であるが、明確な結論は示されていない。援助よりも商業目的の資金フローが増え、主に天然資源の確保を目的とした貿易のために公的資金協力が用いられるというところでは、従来の西洋型援助とは補完関係があるのかなとは思えるが、支援対象国への不介入という緩い融資条件はそれらの国々のガバナンス向上には阻害要因として働くので、むしろ西洋のやり方への挑戦ともいえると著者は指摘している。この議論が同じアジアでも日本や韓国、タイにも当てはまるかどうかというと、ちょっと「?」を感じる。

Johan Lagerkvist,
"Chinese and African Views on Chinese Aid and Trade in Africa"
pp.166-183

2本目はこの中国の、特にアフリカにおける「ひもなし」政策が、西洋の援助パラダイムに対する重大な挑戦となるのかを、ザンビア、タンザニアのNGO関係者や政府関係者へのインタビューと、中国人研究者へのインタビューという2つのアプローチから論じている。そこから導き出されるのは、アフリカは増大する中国の役割に対しては楽観的だが、救世主になれるというほどの幻想も抱いていないし、中国人のアフリカ専門家も、中国とアフリカ諸国との二国間関係に、誤った期待は持ち合わせてはおらず、イデオロギー的な動機ではなく、経済的関心に刺激された援助に変化してきているということのようだ。

でも、少なくとも僕自身は中国の対アフリカ援助に「社会主義の普及」のような性格があるとは最初から思っておらず、急速に成長する自国経済とそこに住む国民の雇用や空腹を満たすための資源確保の手段として、要するに経済的動機に裏打ちされた対外協力だと考えていたので、大風呂敷を広げている割には本稿の結論は当たり前のような気がする。

他方で、もう少し細かく見ていくと、面白い論点も含まれているような気がする。

例えば、著者は中国の対アフリカ協力を、①エリートによる外交、②政府による公式な外交、③二国間関係重視と捉え、民間企業や市民間協力も含めた重層的な展開にまでは至っていないと指摘している。「ワシントンコンセンサス」に代わる言葉として、これを「北京コンセンサス」と描いている。協力に政治主導で対外協力が進められている一方で、アフリカ地域研究が中国で拡充されてきたのかというとそうでもない印象を受ける。そこは、日本がアジアや他の地域に経済協力を展開していく中で、それと同時に地域研究者の育成も行なわれ、地域研究が拡充されてきたことを考えると、大きな違いが日本と中国の間にはあると改めて感じる。

第2に、中国は、欧米とは異なり、汚職が独裁政治固有の問題とは見なしておらず、キャッシュ(現金)ではなく現物を供与する援助を行なえば汚職のリスクは少ないと考えているという。財政支援よりもインフラ整備支援、しかも、多数の中国人作業員を本国から動員して、インフラが完成して初めて相手国へ引き渡すというやり方が生まれてくる背景がここにある。しかし、こうした中国人土木作業員がアフリカ各国の作業現場に相当数滞在していることによって相手国民に与える心理的効果については過小評価されている。地域研究と政策が十分繋がっていないという問題がここでも露呈しているような気がする。

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