『ともしびマーケット』 [読書日記]
内容紹介初めて読む作家である。連作短編という手法は好きなので、もうちょっと読んでみたいと思う作家だ。近所のコミセン図書室で見つけ、『田村はまだか』とこちらとどちらを先に読むかで迷った挙句、こちらにした。
“吉川新人賞受賞後第一作の長編小説” 自己破産した男、片思い中の中学生、行き遅れた中年女性──ここ「ともしびマーケット」で、いろいろな人生が重なり合う。それぞれの「いい日」を夢見て
短編の数が9つもあると、その人がどの作品に出てきた誰だったのかを忘れてしまったケースが結構多く、しかも再登場した際に名前ではなくその風貌とか前後関係とかで思い出させようとするところは、記憶力が鈍り始めた40代後半の読者にはつらいなと思う。もう少し収録作品数を減らし、名前を明示的に載せて多少の説明を加えてくれると僕らにはわかりやすい。著者は僕らと同じ世代だし、作品のモチーフも僕らの世代を狙っているように思うので、記憶力が鈍っていることを前提に作品を書いてくれたら嬉しい。
奇しくも、今月中旬にこの作品の文庫版が発売になっている。文庫化に伴いどれくらい修正が施されているのかは興味深いところだ。書評とかを見ているとこの作品の評価はあまり芳しくない。そこは仕方がないような気がするが、『ともしびマーケット』は売れなかった時代に懇意にしていた編集者から習作として描いてみるように言われて書き溜めた短編らしいので、粗いのは仕方がない。文庫化に伴ってどれくらいその粗さを解消できるのだろうか。
また、結果的には先に『ともしびマーケット』を読んだことで、『田村はまだか』に対する期待が多少高まったのは事実。読む順序が正しかったのではないか。『田村はまだか』を読むのを楽しみにしている。
タグ:朝倉かすみ
コメント 0