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『ルーズヴェルト・ゲーム』 [池井戸潤]

ルーズヴェルト・ゲーム

ルーズヴェルト・ゲーム

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/02/22
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
「一番おもしろい試合は、8対7だ」野球を愛したルーズヴェルト大統領は、そう語った。監督に見捨てられ、主力選手をも失ったかつての名門、青島製作所野球部。創部以来の危機に、野球部長の三上が招いたのは、挫折を経験したひとりの男だった。一方、社長に抜擢されて間もない細川は、折しもの不況に立ち向かうため、聖域なきリストラを命じる。廃部か存続か。繁栄か衰退か。人生を賭した男達の戦いがここに始まる。
先週末、1日だけ、仕事のことも考えない、大学院のことも考えない、完全オフの日を作ったことがある。その時に、1日で読み切れる小説でもこの際読もうかと考え、15時頃から途中中断を挟んでも約4時間で読み切ったのが、池井戸潤の近著である『ルーズヴェルト・ゲーム』だった。

『空飛ぶタイヤ』や『下町ロケット』と同じく、池井戸作品ではお決まりのパターンである。優れた人材とそれを繋ぎ合わせる結束力、そしてそこから生まれてくる技術開発力、そんな強みを持つ反面、銀行からの借入金への依存度が高く、その技術開発ゆえに他社から常に買収の対象と見なされやすい。結束力のある会社とはいえ、中にはいろいろな考えを持った役員や社員、そして株主もいる。その会社を狙っている他社からは様々なチャンネルを利用した買収工作がなされる。会社はとことん窮地に陥る。そして、そのどん底からやがて大逆転劇が始まるというのがお約束の展開だ。読者はそれが楽しみで、頁をめくる手がなかなか止まらない。

結局のところ、組織を救うのはその組織が元々持っている強みの部分なのだというのが、池井戸作品に共通しているテーマであるような気がする。

青島製作所の近所に住んでいるので、実際のモデルがどこか容易に想像がつく(笑)。でも、あそこは「ミツワ」と比べてそんなに会社の規模小さかったっけ?「ミツワ」がどの会社をモデルにしているのかも何となく想像はつくが、いずれも大手企業だと僕は思っていたので、巨人と小人、強者と弱者的な二元論で割り切れるのかなというのは違和感が最後まで残った。社会人野球のチームを持てるぐらいだから、青島製作所がそんなに小さな企業だとは思えない。しかし、あの手この手を画策して攻めてくる巨人・ミツワに対した時の青島は、猫ににらまれた鼠のようでもあった。正直青島製作所の規模感が掴みづらかった。

今回の作品は、野球を1つのレンズとして会社というものを捉えようとしており、野球好きの僕としては興味をそそられるものがあった。その肝腎の野球の方では、監督と主力選手が抜けて窮余の一策として雇われた大道監督がセイバーメトリックス論者らしいというのはわかったし、以前『マネーボール』を読んだ時にイマイチよくわからなかった、セイバーメトリックスを投手に当てはめた場合の評価基準とかが、本書を読んで「なるほど」と納得できたところはあった。元々社会人チームには平均何人ぐらいの選手が所属しているのかはよくわからないが、そんな中で、大抜擢というのができるほど燻っていた人材がいたのかどうかはちょっと疑問だ。それに、この新監督には野心が感じられたが、この監督を探してきた部長の努力の部分は本書ではあまり語られていないし、監督がどのように選手とコミュニケーションを取っていたのか、監督と会社の役員や幹部との関係はどうだったのかといった点はややわかりにくさがあった。個性ありそうな監督なのに、登場シーンと比べてその後の監督の描き方にはあまりパンチもなく、中途半端な描き方で終ってしまっている。監督をもう少し描き込んで欲しかったなという気がしないでもない。

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