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『インド駐在生活!』 [インド]

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インド駐在生活!―不思議の国のマダム体験

  • 作者: 神崎 有里子
  • 出版社/メーカー: 連合出版
  • 発売日: 2003/09
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
辞令1本で任地に赴かされる海外駐在員。その生活を支える妻の涙ぐましい奮闘努力。インドに最も適応しにくいタイプの人間が、どんな風にこの国と相対し、何を見て、何を感じて暮らしていたのか。インド生活ホンネ体験記。
この1ヵ月、今年高校受験を迎える長男の学習スペースを作るために、我が家ではプチ断捨離が行なわれた。その過程で、不要と判断された我が家の蔵書も、かなりの冊数がブックオフ行き、ないしはリサイクルごみ扱いされることになった。

そんな中にこの本が含まれていた。2007年に僕らがインドに赴任する際、藁をもすがる気持ちで妻が購入して読んだ1冊だった。ずっと妻の書棚に眠っていたが、リサイクル行きの本の山の中に埋もれているのを僕が見つけ、読んでない本を捨てるのはもったいないと、取りあえず僕も一度読んでみようと手にとった。

著者は大手商社マンの奥様で、1990年代後半、インド・ムンバイに3年数ヵ月住んでおられた方らしい。この方が住んでおられた1990年代後半のムンバイと、その約10年後に僕らが暮らしていたデリーを比較するのは難しい。ましてや、会社から車や運転手があてがわれて、リフレッシュ休暇も頻繁に取り、インドから「国外脱出」して欧州、タイ、シンガポール等に何度も旅行に行ける商社マンの世帯と、車も運転手も自分達で調達し、公費による支援もなく国外旅行のほぼ全額が自腹だった僕らの世帯とは、そもそもの生活スタイルが違う。うちは子供達にもローカルのお菓子を食べさせていたが、子供達が父親が商社マンである友達の家に遊びに行って、出されるお菓子が日本製ばかりだったので、本人達はそれを喜んで遊びに行っていたらしいが、逆に我が家に遊びに来ないかと誘っても、「〇〇ちゃんちはインドのお菓子しかないから」と言われてなかなか来てもらえなかった。僕は妻から「なんでうちの会社はこうなの?(こんなにショボイの?)」とよく言われていた。商社マン家庭と付き合うのは、マダムのレベルでも、子供達のレベルでも、劣等感を味わされた。

また、同じ1990年代後半時点での比較で見た場合も、当時のデリー駐在経験者の話を聞くと、停電が多くて冷凍庫の食材がダメージを受けたらしい。そうした電力供給の心配が少ないだけムンバイはまだましだったと思うし、デリーに集まってくる北インドのヒンディーベルトの人々と比べ、ムンバイに住むマハラシュトラ人は表情も比較的柔和である。著者はマラティー語を話すマハラシュトラ人をヒンディー語を話すインド人と一般化して描いているが、それはちょっと違うと思う。著者は休暇の度に「国外脱出」はしていたようだが、インド国内でどこに行ったかということに関しては、口絵で使われているタージ・マハル以外には何ら言及がなく、さほどインド国内に目を向けていたとも思われない。

だから、商社駐在員妻が自分のインドでの苦労話を書いても、部分的には共感できるところがあったとしても、他のところでは全く同意できず、読みながら腹が立ったところもかなり多かった。著者が元々執筆活動には興味もあり、実際に文章を書ける人であることは認めるが、インド赴任が嫌で嫌で、駐在期間中に6ヵ月も家を空けて日本の実家で過ごし、インド国内に滞在すること自体が苦痛だとばかりに夫のスリランカ出張にくっついて行って国外脱出を図り、駐在生活も3年を過ぎると夫の帰国辞令が出るのを一日千秋の思いで待ちわびる、そんな人のインドとインド人のイメージを語らせるのがどうなのか…。

本書で登場するインド人といったら、使用人や自宅に出入りしていたスイーパーやマッサージのオバチャンぐらいで、ムンバイの中流以上の世帯のインド人とのお付き合いについては全く出てこない。情報源が限られているから、本書には事実確認を経ていない著者の想像や意見が述べられている箇所がかなり多い。

しかし、出版社名とかから見ると、本書は元々インド紹介を目的とした本ではない。むしろ、インド駐在員生活についてあまりにも情報がない中で、駐在員妻の日常生活を通じて、家を決める時にはどこを見なければいけないか、インド人の仕事にはどこまで期待していいか、何は期待しちゃいけないのか、住み込みのメイドを雇う場合の留意点とか、そういう駐在生活にまつわる様々なトラブルや工夫等を紹介し、これからインドに赴任する人々の生活に関する不安を少しでも解消しようというのが本来の狙いだったのだろう。

そういう目的なら、こういう本はありだと思うが、インドという国とインド人の姿を描く本だという目で本書を眺めると、相当ストレスがたまる読書になるのを覚悟しなければならない。


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