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『奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」』 [読書日記]

奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」 (朝日新書)

奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」 (朝日新書)

  • 作者: 中原一歩
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/10/13
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
災害ボランティア活動は、きれい事だけでは済まない。自治体にとって、ときには志願者が負担になることもある。そんな現実のなかで奇跡的な成功例と評された地域―。それが宮城県・石巻市だ。「石巻モデル」を支えた人たちの「決断」と「行動」を明らかにする!行政、NGO、NPO関係者必読の書。
マニラ出張の帰りの機内で読み切った1冊。確かに、「行政、NGO、NPO関係者必読の書」という触れ込みは間違いではないと思う。こういうヒューマンストーリーは読んでおくべきだろう。行政が大災害で機能低下に追い込まれた時、そこから復旧・復興の足がかりを作っていくためには、マニュアル通りには必ずしもいくものではなく、そこでリーダー役を果たす主要なプレーヤーのそれまでの経験や築いてきたネットワークがものを言うのだろう。石巻のお話はマスコミでも頻繁に取り上げられているので、いずれはこうした記録が残されるのだろうと思っていたが、著者の筆力もあって、非常に読みやすく、わかりやすく書かれている。

ただ、正直なところ、石巻だからこそ成功したというふうにしか読めなかった。石巻専修大学が立地していて、市長がその大学で教鞭を取っていたことがあるとか、主要な登場人物がNGO(ピースボート)やJC(青年会議所)での経験が豊富だったとか。災害ボランティアセンターを設置し、ボランティア活動の拠点となりうる施設が近くになく、ボランティア活動の経験が豊富なプレイヤーがいない状況だったに違いない多くの被災地で、石巻と同じことができたかというとそうとは思えない。そういう要素が揃っていたから、常時石巻に多数のボランティアが集まったのだろうと…。

石巻ほどではないけれど、それに類する小さな取組み事例を紹介していたら、読む側の印象はもっと変わっていただろう。今のままだと、石巻讃美に終っていて、石巻モデルに関わった人たちや市民にとっては心地よい読み物にはなるが、他の被災地の人々や、石巻よりも条件が厳しい中であえてそこを選んで活動を展開した多くのボランティアの方々がどう読まれるのだろうかと、余計なことを考えた。素直に読めばいいのにね。


タグ:中原一歩
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