『取材学』 [読書日記]
本書の発刊はなんと1975年!それなのに、アマゾンではちゃんと表紙の画像が今も表示されており、40年近く経った今でも取り扱いがある。それくらいの価値がある歴史的名著ということなのだろう。
以前読んだフィールドワークに関する別の本の中に、加藤秀俊著『取材学』はこんなふうに紹介されていた。
取材という言葉は一般にはマスコミ用語として用いられているが、本書ではより広く、「人間が情報を主体的に選びかつ使う」プロセスを示す言葉として使われている。実際、本書には、情報の洪水に溺れてしまうことなく、能動的かつ主体的に「取材」していく、つまり情報を使いこなし、また自分の手で問題それ自体を発見していくためのコツやヒントがコンパクトな新書という形式の中にふんだんに盛り込まれている。
佐藤郁哉著『組織と経営について知るための実践フィールドワーク入門』、p.241
インターネットが発達して、情報検索が自宅のPCでもできるようになった現在でも、本書で述べられていることはその有効性を失ってはいないような気がする。自分が「知りたい」と思ったことがある時に、いかに効率的に、かつより多くの有用な情報を集めてこれるのか、本書は情報収集の心構えに加えて、具体的な方法論についてもコンパクトに解説している。僕は普段からよく図書館を利用していたつもりでいたが、僕の図書館利用といったら本を借りることでしかなく、百科事典をはじめとしたレファレンスブックの有効活用法についてまで、思いを巡らせることなどなく、本書を読んでいたらまだまだ自分の取組みでは「宝の山」を生かし切っていないということを痛感させられた。
こういう本にもっと早く出会っていれば、高校や大学時代の情報収集の仕方も違っていたのではないかと思う。その点では、僕は高校生ぐらいになったらうちの子供達にも読んでほしいと期待している。40年近くが経っても味が落ちていない名著をあと数年自宅の蔵書に置いておいても、価値が著しく低下することはないであろう。今後子供達が学校や大学から課せられる研究レポートの提出の際に、こうした本を参考にして、情報収集に取り組んでみてほしいものだ。
確かに、インターネットが発達し、電子辞書のような便利な機能を持ったパーソナルな機器が登場した現在は、図書館に足を運ばなくとも相当な情報は自宅でも出先でも簡単に取り出せるだろう。しかし、その情報の後方に広がる世界との繋がりは、僕らにとってはやはり図書館のような施設がとっかかりとなるのだ。その図書館に置いてない文献であっても、図書館間のネットワークを通じて原本や論文コピーを入手したりすることはできる。著者が具体的にどのように情報収集をしているのかという説明は、説得的だと思う。
ちなみに、今僕は自分の著書が発刊されたことにより、群馬県の方のメディアの方から問合せを受けたり、岐阜の実家の方から講演の依頼を受けたりといった新たな展開を迎えている。「群馬県の蚕業史」、「岐阜県の蚕業史」といった、地域の視点から日本国内の養蚕について細かく調べたことは今までなかったので、専門の文献が存在している可能性についても考えてみたこともなかった。この時期に本書に出会ったのはとてもありがたいことで、ここで描かれていることを多少でも実践してみて、僕の持つネタを少しでも地域受けする形で新たな味付けをして、自分の日本に対する知見をもっと増やしたいと思った。
さきほどブログ検索をしていて、この記事を拝見しました。ずいぶん古い本なのに読んでくださってありがとうございます。とりいそぎ著者からごアイサツまで。
by 加藤秀俊 (2012-01-30 18:15)