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『邪馬台国はどこですか』 [読書日記]

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)

  • 作者: 鯨 統一郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 1998/05
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
カウンター席だけの地下1階の店に客が3人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。初顔合わせとなったその日、「ブッダは悟りなんか開いてない」という宮田の爆弾発言を契機に歴史談義が始まった…。回を追うごとに話は熱を帯び、バーテンダーの松永も教科書を読んで予備知識を蓄えつつ、彼らの論戦を心待ちにする。ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活―を俎上に載せ、歴史の常識にコペルニクス的転回を迫る、大胆不敵かつ奇想天外なデビュー作品集。
少し前に、『努力しないで作家になる方法』で、著者のデビュー作となった『邪馬台国はどこですか』というのが世に出ることになった経緯を知り、どうしても読んでみたくなった。僕のブログにごくたまにコメントを下さるplantさんからもご推薦をいただいた本でもあり、『努力しないで作家になる方法』の次の鯨作品として読むことを考えていた。

今回は書店でちゃんと本を買うことにした。意図したことは1つ。面白ければ、父親から子供達に引き継ぎたいと考えたからだ。「歴史推理」というジャンルは、日本史、世界史を多少勉強している中学生や小学校高学年あたりの子供達に読ませるにはちょうど良いように思う。教科書や塾のテキスト、問題集からだけではわからない、多面的な歴史の解釈を知ることができるし、何よりも読書の幅が広がる。幸い、僕は小学生の頃に偕成社の児童伝記シリーズで『北条時宗』を読んで、そこから歴史上の人物の伝記や戦記ものを読みまくって小学生時代にある程度の日本史の勘所を掴むことができた。僕が今どう贔屓目に見ても我が家の子供達は歴史について興味を持っているようには見えないので、何か打開策がないかなと考えていた矢先でもあった。

脱線ついでにもう1つエピソードを紹介すると、中学1年の時、僕は高木彬光の『邪馬台国の秘密』と出会った。どういう経緯だったのかは覚えていない。父が買って自分の書棚に置いていたのか、それとも僕のクラスメートに触発されて小遣いはたいて自分で買ったのか、どちらなのかは思い出せない。そのクラスメートは同じ高木彬光著の『成吉思汗の秘密』を読んで、面白いと吹聴していたので、ちょうどそんな時期に発刊された『邪馬台国の秘密』の方も読んでみようかという話になり、自分で買ったか友人から借りたか、そんなようなことがあったのかもしれない。出会った経緯も定かでなければ、結局読み切ったのかどうかも、そして結論が何だったのかも定かではない。ただ、「歴史推理」というジャンルの作品といったら、昔も今も高木彬光のアームチェアーディテクティブ・シリーズが代表的な作品だと言われている。

『邪馬台国はどこですか』は、高木彬光以来の歴史推理小説だとの評価がある。しかも、法医学教室の教授が主人公の重厚感ある高木作品とは異なり、鯨作品はバーを舞台にした常連客3人とバーテンダーとのほろ酔い加減での激烈な突っ込みとクールな受け答えで推理が展開される。高飛車な新進女性歴史学者が主張する歴史の通説を、自称ジャーナリストの男が証拠をもとに次々に打ち破っていく。それは彼が主張する新説を支持するものでもある。読んでいても会話のテンポがいいし、この作家はさらさらと流れるような文章を書くので読みやすい。しかも、300頁近い文庫本に「邪馬台国」以外にも幾つかの「疑問」を取り上げた短編が収録されている。「聖徳太子=推古天皇=蘇我馬子」同一人物説や、織田信長自殺説など、取り上げている登場人物は子供達でも知っているため、短編ひとつひとつで区切って読むのであれば子供達でも十分興味を持って読めそうだ。

鯨統一郎という作家がどんな作品を書いているのか、本書はその典型事例だろう。イメージとしては、僕らが高校時代にハマってよく読んでいた星新一のショートショートと近いかもしれない。特に中高生がハマる要素を含んだ作品なのではないかと思う。

そんなわけで、僕自身は楽しく読ませていただいた。子供と共有できる本というのはそうそう多く読む必要はないと思うので、鯨作品を今後も読み続けるかどうかはわからないが、子供達が読んでどんな話だったか語ってくれるようになったら嬉しい。


タグ:鯨統一郎
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うしこ

この本、我が夫も絶賛しておりました。
今も家のどこかにあったはず・・・と思って探してみたところ、娘の本棚にありました。今度読んでみます。
by うしこ (2012-01-28 11:00) 

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