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『河内源氏』 [読書日記]

河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流 (中公新書)

河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流 (中公新書)

  • 作者: 元木 泰雄
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/09/22
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
12世紀末、源頼朝は初の本格的武士政権である鎌倉幕府を樹立する。彼を出した河内源氏の名は武士の本流として後世まで崇敬を集めるが、祖・頼信から頼朝に至る一族の歴史は、京の政変、辺境の叛乱、兄弟間の嫡流争いなどで浮沈を繰り返す苛酷なものだった。頼義、義家、義親、為義、義朝と代を重ねた源氏嫡流は、いかにして栄光を手にし、あるいは敗れて雌伏の時を過ごしたのか。7代200年の、彼らの実像に迫る。
僕はあまのじゃくなところがあって、数年前にタッキー(滝沢秀明)が主演したNHK大河ドラマ『義経』の時は平氏について書かれた本を読んでブログで紹介するようなことをしていたし、今年の大河ドラマ『平清盛』の放送が始まると、逆に源氏について書かれた本を読んだ。単なる偶然だとは思うが。歴史の一時期に急に勢力を拡大して、また急に衰退した平家と違い、源氏の方は親子や兄弟での諍いが頻繁に起きる割には息の長い活躍をしているように思う。だからかえって源氏はよくわからないところもある。そもそも「源氏と平氏」という対抗軸で歴史を捉えていると平安時代後期のことがよく理解できないことが多く、この時代が大河ドラマで扱われるというのならいい機会だから一度勉強し直そうかと僕は考えた。

例えばこんな疑問がある―――。

元々坂東は平氏が治めていた筈なのに、いつの間に源氏は坂東で勢力を拡大できたのか。そもそも清和源氏嫡流の「河内源氏」は河内国が本拠地に都の警備に当っていたらしいが、それがなんで東国に進出できたのか。

北条政子が出た北条氏というのは平氏だが、それが源頼朝となぜ結婚できたのか。そもそも源氏の方の棟梁の郎党には「平」の姓の者が多いし、逆に平氏の方の家人にも「源」姓の者や姓は違えど源氏の傍流の者がいる。「源氏と平氏」は僕らが考えるほど明確な対抗軸じゃなかったのかもしれない。

足利氏が源氏嫡流と見なされたのはなぜなのか。足利氏は下野国(栃木県)の足利庄を本拠地に構えた河内源氏の一派だったわけだが、足利尊氏の父・貞氏の時代までしか僕の理解は遡ることができず、それ以前の足利氏の動向については全く知らない。

僕の生まれ育った岐阜県美濃地方というのは、河内源氏の影響下にあった土地であるが、いつ頃から源氏が根を張ったのか、源氏にとって美濃はどれほど重要だったのか。

大河ドラマを見ていて強く感じたのは、当時の貴族はあそこまで武士のことを蔑んでいたのかという疑問だ。源氏や平氏の棟梁が御所に昇殿を許されていて、貴族と武士の境界線はもっと不明確だったのではないかと思っていた。武人的な性向の強い公家も結構いたようだし。

歴史研究者が史料をベースにしてしっかり考察した結果をまとめると、こんな1冊になるというのが『河内源氏』である。源頼信から頼朝に至るまでの7代200年の源氏の歴史、源氏ゆかりの登場人物の生涯をコンパクトに描かれている。登場人物が多過ぎて読みづらさはあるが、これまたレファレンスブックとしては結構有難い本で、今後大河ドラマ『平清盛』の話が進展していって玉木宏演じる源義朝が清盛のライバルとしてクローズアップされていくにつれて、また時々本書を読み返して我が家の家族に講釈をたれる蘊蓄オヤジを演じられると思う。

僕はそれなりには歴史オタクで、源平の抗争については『平家物語』や『源平盛衰記』、『保元物語』、『平治物語』あたりは小学生の頃に既に読んでいたが、今思えば源義朝の前半生――京都で活躍する以前、どこで何をしていたのか、平治の乱で敗れた後、なぜ東国に落ちのびようと試みたのか、東国に何があったのか等をあまりにも知らなかった。だから、本書を読んでみてそのあたりは大変に勉強になった。

さて、大河ドラマ『平清盛』であるが、兵庫県知事が「映像が汚い」などとクレームをつけたのが話題になっているが、僕は見ごたえがあるドラマになっていて毎週楽しみにしている。うちの子供たちもそろそろちゃんと日本史を学んで欲しい年齢にさしかかっていることもあり、日テレの『世界の果てまでイッテQ』を観て爆笑しているより、今年はしっかり大河ドラマを観て、自分たちが学校や塾で勉強している平安時代から鎌倉時代にかけての歴史の流れを、イメージも含めてしっかり記憶にとどめて欲しいと期待している。

いや、子供に対する期待感というよりも、久し振りに子供たちからチャンネル権を奪還できたことがそもそも嬉しい。
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