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落合博満 『采配』 [読書日記]

采配

采配

  • 作者: 落合博満
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2011/11/17
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
マスコミにはほとんど口を開かなかった、あの“落合”が10年ぶり全てを語る!
選手として史上初の三冠王を3度達成(いまだ記録は塗り替えられていない)、監督としてチームを53年ぶりに日本一に導き、2004年の就任以来8年間で2回に1回はチームが優勝、2011年は史上初の2年連続リーグ優勝を果たすなど、選手として、そして監督として脅威の数字を残し続ける男、落合博満。
常にトップを走り・育て続ける名将が、監督就任後初めて明かす、自立型人間の育て方、常勝組織の作り方、勝つということ、プロの仕事ついてetc.…。ビジネス書、人材育成、自己啓発書としても読める一冊。
前著『コーチング』は解説者時代に書いた本。野球関係者からは「予言の書(結果を出し続けているという意味では預言の書とも)」と言われている。しかしながら、選手の育成に関してなどは、実際に監督になってから、経験で感じたこともあるため、前著とは少し違う考えもあるようだ。そのあたりも、本書では明らかに!
山井から岩瀬の交代劇など、当時話題となり、いまや伝説となった「落合采配」についても触れ、これまで謎のベールに包まれていた「語らない名将」の采配の秘密を明かす!
年末年始は、普段なかなか読めないような本を読める貴重な日々でもある。今回は、日本シリーズの結果が明らかになる前の11月中旬に発売になっていた落合博満前中日ドラゴンズ監督の近著をご紹介する。店頭に並ぶやいなや、すぐに購入した1冊で、もしドラゴンズが日本一になっていたら、現状よりももっと販売部数が伸びたに違いない。衝動買いしたぐらいだからすぐに読んだのかと思われるかもしれないが、正直この手の本は出張などの帰りの車中か連休の時にしか読めない。

落合体制下のドラゴンズを振り返って、落合監督は何を考えていたのか、改めて知るにはよい1冊だと思う。ただ、読みながら思ったのは、ひょっとしたら落合監督はかなり早い時期から今季いっぱいで退任することを考えていたのではないかと感じた。これは僕自身が本を書いた経験があるから言えることなのだが、1年ぐらい前から出版企画はスタートしている筈だからだ。2010年にドラゴンズがリーグ優勝を果たした時、今中慎二氏(現・投手コーチ)が『中日ドラゴンズ論』という新書版の本を出版したが、この時は書かれている記述の中身から見て脱稿から出版までが相当な突貫工事だったことが想像できたが、9~10月のリーグ終盤戦で優勝争いを繰り広げていた落合氏が現場を離れて執筆に集中することなどできなかった筈であり、相当前から本書の執筆には取り掛かっていたに違いないのだ。

そう考えた場合、本書は後任の高木守道新監督への引継書という位置付けでもあるのかなと思う。本書の中でも述べられているが、「引継は一切しません」という。だから、落合氏から高木氏への直接的な業務引継の話と本書はちょっと違うかもしれないが、少なくとも、落合監督がどのような考えの下で選手を育てたのか、どのような考えに基づいて選手を起用したのかは、本書を読めばわかるわけで、それが浸透している選手たちをこれから起用していく高木監督とコーチ陣には、スターティングポイントとして本書で押えておくべきことは多いように思えた。特に、プロ野球評論家として落合采配やドラゴンズの戦況に対して批判的な解説を繰り広げてきた某OBは、落合氏が育てた選手をコーチする立場になる以上、本書は必ず読んで現場に臨んで欲しいものだ。

勿論、本書に書かれていることが100%正論だとは思わない。僕は来季のドラゴンズには過剰な期待は禁物だと思っている。「試合に勝つのが最大のファンサービス」だと言いつつ、落合監督はベテランを重用してきた。短期的に勝って結果を出すにはそれでもいいかもしれないが、若手はやっぱり育っていないという印象が強い。谷繁や和田、岩瀬が今後もコンスタントに活躍できるとも思えないし、ここまでは目いっぱいやって結果を出せたものの、来季以降はもっと若い戦力の台頭が求められるのは間違いない。

基本はプロ野球のチームマネジメントの本だが、僕は今の僕の仕事とも絡めて非常に惹かれた一節があった。p.240に書かれていた、「歴史を学ばないということは、その世界や組織の衰退につながる」という言葉である。
どんな世界でも、その中で仕事をするのなら、その世界や組織の成り立ちから謙虚に学び、先輩たちが残した財産を継承していく姿勢が大切なのではないか。歴史を学べば、それを築いてきた先輩たちが何を考え、どんな業績を残したのかもわかる。成功例だけではなく、失敗例もいくつもあるはずだから、歴史を学ぶことは、同じような失敗を繰り返さないことにもつながるはずだ。(p.241)
これ、僕が自分の本を書く際に抱いていた問題意識と非常に通じるところがある。落合氏は、プロ野球選手なら、ましてや自分がその先輩の残した記録に迫っているのなら、たとえ同じ時期にプレーしていなくても、すでに鬼籍に入られた方であっても、どんな選手だったのかくらいは知っておくべきだと述べている。それを踏まえたコメントのできる選手を見ると、野球選手としてだけではなく、人間として敬服する。

年末の朝のテレビ番組で、某人気在京球団の主力選手に英単語の発音をさせて、いかに読めないかを笑いの種にしているシーンが出てきた。昔その球団のオーナーが、この球団の選手は「紳士たれ」と言っていたが、それがこの体たらくである。このテレビ局の報道姿勢にも首を傾げるが、野球だけやってればいいという選手にも疑問は感じる。

そういう選手がドラゴンズには存在しないと僕は信じたい。こういう考えを持った著者が8年間も監督を務めたチームの選手たちなのだから。
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コメント 2

liu-gotoo。

この本は、私も読みました。

野球だけではなくて
普段の仕事や経営のことまで
つながることが書かれているように感じました。

大局的な物事の見方はさすが…と思います。
by liu-gotoo。 (2012-01-02 14:22) 

toshi

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
by toshi (2012-01-03 08:22) 

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