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『暴力団』 [読書日記]

暴力団 (新潮新書)

暴力団 (新潮新書)

  • 作者: 溝口敦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/09/16
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
なぜ暴力団はなくならないのか?学歴、年収、出世の条件とは?覚醒剤や野球賭博でどのように儲けるのか?女はヤクザになれるのか?なぜヒモが多いのか?刺青や指詰めのワケは?警察との癒着は?ヤクザが恐れる集団とは何か?出会った時の対処法とは?その筋をも唸らせた第一人者が、時代ごとに変化し、社会の裏で生き延びる「わるいやつら」を、やさしく解き明かす「現代極道の基礎知識」。
以前、大学で経済学を勉強していた頃、ある飲み会で、「『暴力団の経済学』なんて本を書いたら売れるよね、けど絶対書けないよね」と仲間と話して盛り上がったことがある。彼らの財源は何なのか、どうやって人の採用をやっていて昇進はどのように行なわれるのか―――外から見ていてはとてもわからない世界なので、本当に書くことができたらオリジナリティたっぷりで絶対売れるだろう、そんなことを話して盛り上がったことを思い出す。

それから25年近くが経過して、僕らが当時話していたイメージに近い本が登場した。ノンフィクション作家なので取材力は申し分ない。外からの情報収集に加え、警察、暴力団関係者の双方に相当なコネクションを築いて取材もされている。「である」調の硬派の文体ではなく、「です・ます」調の抑え目のトーンで淡々と描かれている。僕達外野が興味本位で知りたいと考えているような情報は、この1冊でだいたいカバーされているのではないかと思う。まさに週末読書に最適な新書だ。

ちょっと意外だったのは、今の社会が昔に比べて暴力団にとって窮屈になってきており、ヤクザが割に合わない稼業になりつつあるという指摘だった。確かに昔はヤクザ映画といったら結構な本数が毎年製作され、観客動員数も相当な数に上っていた時期があった。しかし、今やそんな映画はあまり聞かない。僕の贔屓の作家である奥田英朗が今年、『純平、考え直せ』を発表し、その主題に意外感が相当にあったものである。僕が本書を読もうと思ったのは、『純平、考え直せ』をもう少し深く味わいたいなと思ったからである。

ついでに言うと、歌舞伎町で飲む際の注意事項としてというのも。28日(水)、僕は職場の同僚の送別会で久し振りに歌舞伎町で飲んだが、結局本書を読んだからといって参考になることはあまりなかった(苦笑)。

暴力団だけではなく、暴走族も今では絶滅危惧種になりつつあるのだという。暴力団予備軍として、暴走族もかつては20歳を境に卒業して、暴力団の門戸を叩く人が多かったらしいが、今では少子化の影響もあって新たに入団してくるメンバーが少なく、リーダー格がいつまでたっても足を洗えないという状況なのだというから意外だ。

また、暴力団以上に怖いのが大阪府警だというのも面白かった。拘束した暴力団関係者の暴力をふるったというので訴えられ、その組に損害賠償金を支払ったのだとか。僕の存じ上げている府警の方といったら1人しか知らないが、やっぱり怖かった。作用と反作用の関係なのだろうか。

一般人がこういう人々と接する機会はそれほど多くはない。こういうことを書いているとブログが炎上することもあるかもしれないが、そういう書き込みをやる人々はあまり暴力団とは関係ない、もっと若いグループなのだそうだ。オレオレ詐欺なんてので「シノギ」をやるのもあまり暴力団系ではないとか。頭を使い、IT技術を駆使して儲けるのももっと若いグループなのだとか。最近僕の携帯メールには1日20件以上の風俗嬢の手配や出会い系、「2億当たった」系のジャンクメールが頻繁に届くようになり、それだけでパケット代を食うので本当に迷惑している。返信するとろくなことがないし、実際返信しても届かないこともあるかと思い、完全無視して全部削除しているが、こういう仕組みを考え出して実際に運用しているのも、暴力団系の方々ではないのだそうだ。

だから、こんな本を読んでもあまり役に立つとは思えないのだが、図らずも出会ってしまった場合の対処法というのはひょっとしたら参考になることもあるかもしれない。

僕らが小学生か中学生ぐらいの頃のドラマで、電車の中でヤクザに絡まれた乗客を見て見ぬフリをした父親をたまたま息子が目撃してしまったのをきっかけにして、家庭が崩壊していく話というのがあった。(ひょっとしたら、ヤクザに絡まれたのは父親本人だったかもしれない、よく覚えていない。)なぜだかこのシーン、うろ覚えだがやたらと記憶に残っていて、そういう状況に置かれた場合に自分はどう対処するのか、もしそこに自分の子供がいた場合はどうするのか、父親としての威厳を保つには何をすべきか時々考えたりしていた。

本書はそういう場合の対処法について、ヒントになりそうなことが書かれている。万が一そういう状況に自分が置かれた場合、本書を読んでいたことが役に立つこともあるだろう。
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nmzk

この本はまだ読んでいませんが、溝口敦さんの本は日本の闇の世界をしっかりした取材で取り上げているので、関心を持っています。
by nmzk (2011-12-30 21:35) 

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