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『コラプティオ』 [読書日記]

別にコンゴ民主共和国がどうこうというつもりはないが、アフリカで選挙が行なわれると、必ずこういうもめごとが起きるような印象がある。最近アフリカで起っている暴力を伴う紛争は、国と国の対立というよりも、むしろ1国内でのあるグループと別のあるグループの衝突といった構図のものが多い。ましてやこれに天然資源から得られる外貨収入が絡んでくるとなると、その配分を巡っては大きな争いとなる。それにその天然資源開発の権益を確保したい外国が絡んでくると、1国内で多国間の代理戦争が行なわれているような事態にもなり得る。

本日紹介する小説は、まさにこうした西アフリカの某国の埋蔵ウランを巡る超大作である。」

コラプティオ

コラプティオ

  • 作者: 真山 仁
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
「私には希望がある」―国民の圧倒的支持を受ける総理・宮藤隼人。「政治とは、約束」―宮藤を支える若き内閣調査官・白石望。「言葉とは、力」―巨大権力に食らいつく新聞記者・神林裕太。震災後の原子力政策をめぐって火花を散らす男たちが辿り着いた選択とは?『マグマ』で地熱発電に、『ベイジン』で原発メルトダウンに迫った真山仁が、この国の政治を問い直す。

この著者の本を読むのは本書が初めてである。その昔NHKの連続ドラマ『ハゲタカ』をDVDで見てちょっと感動したことがあるが、その時も原作は読まなかった。群像劇のような形でのストーリーを描くのが得意な作家だという印象があるものの、その結果としてどの作品も1冊400頁から500頁超という大作が多く、読み始めるのにとても勇気が必要だ。今回僕は本書は近所のコミセンの図書室で借りたが、返却期限が本日だという切迫感がなければ、530頁もある本書を読み進める気持ちにはなかなかならなかったと思う。

それでも本書を借りたのは、僕の知っている人が何人か著者の執筆準備段階での取材に協力していたからである。青年海外協力隊(JOCV)も登場する小説ということで、遅かれ早かれ読んでみたいとは思っていた。

本書の中でアフリカ西部のウエステリアという架空の国に赴任していた小学校教師隊員というのが登場し、任地を離れて国内移動中に政府軍と反政府軍の戦闘に巻き込まれて死亡するという事件が起こり、それがカリスマ的首相のスキャンダルにも発展していくというお話になっている。この隊員の活動自体はポジティブに描かれているのだが、ジェノサイド(大量虐殺)が起こったような国だったらこんな事件が発生する前に隊員を全員一時国外退避にするのが通常の措置だと思うので、いかに渡航禁止区域外だったとはいえ、私事目的で隊員を旅行させるなんてことは実際はあり得ないのではないかと思う。その点だけは首をひねった。

ただ、そんな突っ込みどころは別としても、読み始めたら先が知りたくてどんどん読書が加速して、今日だけで300頁を読んでしまった。こういう群像劇はTVドラマにはしやすいだろうなと思う。ドラマ化された時が楽しみである。

冒頭コンゴ民主共和国を取り上げたのは、こういう天然資源確保の国益のために現地の日本人が犠牲になるようなリスクがその国にあるからというのを言いたかったわけではないので念のため。なにしろ現在のコンゴ民主共和国の日本大使は、協力隊出身者なのだから。
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